十二世紀ルネサンス 新装版

  • みすず書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622049173

感想・レビュー・書評

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  •  『大学の起源』に続いて読了。十二世紀に特化しつつも、中世ラテン世界の入門書になっている。わたしの興味は今のところ後期中世の科学史にあるので、特に第九章「ギリシア語・アラビア語からの翻訳」と第十章「科学の復興」を重点的に読みました。すごくおもしろかった。
     訳者あとがきでも言われているように、ハスキンズは文章がうまいですね。平明で軽妙な、教えるための語り。
     紙幅も結構ある本なので、当時の文章の引用が多くて楽しい。詩の翻訳には訳者の別宮先生も気を遣ったようで、素敵な仕上がりでした。

  • ヨーロッパの中世は暗黒で、14-16世紀のルネサンスが近代の夜明けであったという歴史観に対して、中世から近代への歴史の連続性を強調し、そのなかでの12世紀をヨーロッパの基盤をつくった時代として重視する「12世紀ルネサンス」論の嚆矢となった名著。。。らしい。

    伊藤俊太郎氏の「十二世紀ルネサンス」を読んで、この分野に関心をもって、次に何を読もうかなと思って、手に取ってみた。伊藤氏の著作が、科学知識のギリシャ語やアラビア語からの翻訳を通じた12世紀ルネサンスを中心に分かりやすく論じてあるのに対して、こちらは、ラテン語、法学、自然科学、哲学そして大学組織など、広範な12世紀ルネサンスの全体ビジョンを提示している。

    だが、「12世紀ルネサンス」宣言ともいうべき、華々しいものを期待すると、結構、地味で堅実な書きぶりにはぐらされる。つまりは、ルネサンスといっても、やっぱり連続的な変化のなかでの動きなのだ。

    いろいろ面白いところはあるが、一番印象的だったのは、大学という組織が、それ以前には存在しない12世紀ヨーロッパの発明である、というくだりである。つまり、昔のギリシャやローマにも教育機関はあったのだが、制度としての大学ではなかったという指摘。そして、そうした大学で学ぶ学生の自由の姿と国際的に流動性をもって大学から大学に移っていく姿はなんともすてきだ。アメリカでヨーロッパの中世史を研究するという、実学からは遠く離れた、しかし自由なハスキンズの精神がこの中世の大学に共感しているさまが冷静な文章のあいだからにじみ出ているようで、楽しい。

    あと、思ったのは、ヨーロッパの共通言語としてラテン語の果たした役割の重要性。12世紀においては、ラテン語は、教会や教養人のあいだでの共通言語であるだけでなく、地方性はあるものの、結構、一般的に使用されていたとこと。知識の急速な発展を可能とするベースにはこうした共通言語という基盤が存在するんだな、と思った。

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