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- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622072126
感想・レビュー・書評
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三島由紀夫の親友だったというフランシス・キングは、1923年スイス生まれ。幼年時代をインドで過ごし、オックスフォード在学中に文壇デビュー。
1959年から63年まで日本に滞在。
フランシス・キングの代表作の本作は、自らの同性愛の体験をベースに描かれているが、
脇役として登場する人物のモデルの元国会議員の強い出版差し止めの要求に、出版社は発刊を断念し、刊行予定日の十日前に本書はすべての書店から回収される。
大幅改訂後出版されるが、構造上の致命的な欠陥を孕んだものだったという。
時を経て、元国会議員が死去し、オリジナル版が刊行された。
本書は出版差し止めになった当時の底本を翻訳したものであり、訳者の横島さんはキングから預かったテキストを訳しつつ、破綻部分に関してキングと話し合いをしながらすすめていったようである。
内容は、殆ど事実に即しているように感じる。
作家の主人公が、妻子のあるイタリア人の男性に恋をし、その恋焦がれる気持ちを赤裸々に綴っている。
イタリア人の方は、ゲイの傾向はまったくないが、作家に愛されていた方がさまざまな面で得をするというようなこともあり、作家のそばにいる。
主人公の心の情念は、プルーストのそれとよく似ており、粘着性の暗さを持ち、一方通行をどうにかしたいともがいているようである。
彼を思う気持ちは続いており、文字にすれば心が浄化されると期待したとキングは書いているが、悪霊に憑りつかれたまま、その呪詛を背負いつづけているという。詳細をみるコメント0件をすべて表示