- Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622073062
作品紹介・あらすじ
林立する超高層ビル群の下、路地は奇想の森と化していく-『闇のなかの石』(伊藤整文学賞)『群衆』(読売文学賞)『日光』の著者が放つ連作「掌篇小説」全41篇。
感想・レビュー・書評
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林立する超高層ビル群の下、都心の日常はなんだかおかしい。路地には乳房そっくりの花を咲かせた「ヒトデナシ」(?)。カレーの匂いが漂うやたちまち姿を現し駆け抜けてゆく「消防団」。平均年齢75・56歳、パジャマ姿の老人ばかりが憩う「ホホエミ食堂」。東京ウォールの汐留シオサイト一帯は、色あざやかな熱帯植物に覆われて、ビルも人もくにゃくにゃ曲がり出す。そのほか背丈20センチ足らずの凶暴ゴジラ、用途不明のロボット、飛べない酒好きのデブ天使も続々と登場。ちょっとウツな「私」の前に春夏秋冬、四季おりおりに開き出される異界の時空間。いや、ついには季節そのものも乱れ始めて「私」は・・・。
月刊「みすず」の好評連載「路地奇譚」を構成一新のうえ大幅加筆、『乱歩と東京』『闇のなかの石』『群衆』『日光』の著者が放つ異色の連作掌篇小説全41篇。ユーモアたっぷりブラック満載、これは内田百閒『冥途』21世紀版ともいうべき「東京奇譚集」です。
不思議な味わいの物語。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
"わたし" がかけている不思議な眼鏡を借りて、世界をながめているようだった。ふだん手元のちいさな機械をみるのに忙しいひとびとの気づくことのない、日々のこまごまとした愛おしいユーモアやペーソス。
そうしてあつめられた不可思議な掌篇は、いまは失われ忘れられてしまってゆくようなことどもが踊り愉しむダンスホールのよう。ミラーボールからは四季が放たれ、ながれているのは昔なつかしい歌謡曲。Shall we dance?わたしも談笑にまぜてほしい 。くだらない日々に、その懐かしさに、眠ってしまいたいから。
脳内映像は今敏。
「落とし穴」「アカンベー」「烏たち」「天使のくせに」「誰もが眠る日」「万物創生」がとてもすきだった。
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今日も私は姿なき世界に欺かれ、形なき声に包囲され、真昼の幻視に翻弄されている。ビルの谷間、路地を曲がった先、なじみの食堂の入口にぽっかり開いた穴は罠、裂け目は境い目、異域と異質と異常が見え隠れ。
“ねこふわふわ”な41の掌編。読み終えた後に猫のない笑いだけがぼんやり残っているような、果たして今目にしたのは毛がふわふわの猫だったのか、ふわふわと空に浮かんでいる猫風船なのか判然としないような奇妙な話いっぱい。
宇宙の始まりを知っていそうなその瞳に「この世はみんな嘘なの?」と尋ねたところで何も答えてくれないのよね。 -
ふむ
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なにこれ、ファンタジー?
不思議な話集。短編よりももっと短い話がいっぱい。
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▶ショートショート。というより掌の小説ってとこですね。川端康成さんのより愉しめましたが毛色が違います。つげ義春さんの文章や内田百閒さんなんかに近いかも。▶この手の夢の記録をすこし整備したような作品(実際に夢が元かどうかはもちろん不明です)は似たようなタイプなのに好みだったりそうでなかったりどうやら微妙なところにボーダーがあるようですがこの本は好みみたいです。あまり極端にならないところで止まってるからというような気もします。▶ずっと読んでるとリアルの世界に戻って来にくくなりますので注意が必要なのであります。
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不思議な不思議な小さな物語たち。例えば都市の裏通りで見る白昼夢、真昼の蜃気楼、逢魔が刻の異界へ入り口‥は妙に開かれていてちょっと戸惑いながらも案外すんなり受け入れてしまう。居心地がよかったりもする。しかしふと気づくと現実が立ち戻り、ぽつんと取り残された元の自分がふりかえり問いかける。なんだったんだろう、夢でも見たのかな。『乱歩と東京』の作者がこんな不思議な綺譚を著していたとはそれこそ不思議、ステキだ。所々しっかりと都市の風景が重要な背景として描かれ、作者真骨頂の都市論が息づいていた。
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異界、幻想といった大袈裟なものではないけれど、同じ著者の「日光」を読んだ時にも思ったことだが、昼間うとうとまどろんでいた時にみる、言うなれば白昼夢のようなショートショートだった。
現実に隣接する少し不思議な空間にとても自然な形で移行してくれ、その空間に身を預けることがとても心地よい。
基本、ショートショートの尻切れ感が嫌いなのだけれども、これは大好き。
あと「幸せ」について少し考えた。