サンパウロへのサウダージ

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622073512

作品紹介・あらすじ

レヴィ=ストロースが撮影したブラジル新興都市の街路に立ちこめる喪失と憧憬の感情。このサウダージの感触に導かれて、写真の謎を巡る思索は、人類学者の営みの根源へと至る輝かしき旅となる。

感想・レビュー・書評

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  • 65年の時を経て。レヴィ=ストロースが、サンパウロで写した写真を、自らの手で写し直す今福龍太。その先に見たものは...。レヴィ=ストロースが、ブラジル時代のみ写真を撮り、その後一切写真を撮らなかったのを”写真が白人による「コダクロームの妖術」だとしても、インディオの妖術よりもはるかにみすぼらしいこの西欧人の妖術に自ら加担するものにはなるまい。(p.145)”ことに理由を求め。また、「悲しき熱帯」に付された写真、同行したカストロ・ファリアの撮った写真、何十年か後にフランスで出版された「悲しき熱帯」をも含む全集版で、微妙に写真の構図、トリミングが違ってそこに込められた意図を推し量る手つきに心惹かれた。インディオの妖術ともいうべき時と光の作用による試みがあったのではないか、と。/「狂乱のサンパウロ」「サンパウロ!わが生命の騒音....」(マリオ・ジ・アンドラージ)/私は、たえず「いま」という時の瞬間的な充満と喪失に配慮するこの特異なブラジル的悲嘆のあり方を、「サウダージ」という翻訳不可能な深い感情複合体の核心に感じとった。(p.134)

  • サンパウロの定点観測の面白さ。写真論。南北。歴史。旅。面白い本!

  • クロード・レヴィ=ストロース・・・・その名前を口にするだけで世界中が凍ってしまう、じゃなかった、いつも胸キュンと神聖な気持ちになります。

    今から思うと、単なる調査に基づいた文化人類学のレポートにすぎないはずの『悲しき熱帯』や『野生の思考』に、これほど私がメチャメチャ入れ込んじゃうなんて、自分自身でも思いもよりませんでした。

    そのレヴィ=ストロースがまだ存命だったなんて全然知りませんでした。なんと昨年11月28日で100歳!おそらく世界最高齢の最高の知性ですね。

    この本は1935年彼が27歳の頃、新設されたサンパウロ大学に招かれた時に、折しも先住民族が存続の危機に瀕しているのを目の当たりにして、ライカでその日常をスナップ写真に撮ったものを集めた1996年に出た写真集です。
    <サウダージ>とは、あわれ、に似たようなポルトガル語だそうで、もうけっして見ることのできない、遠くはかない寂寥感を表すようです。

    61年目にして刊行されたのは何故か?
    ブラジル訪問から半世紀以上、彼は研究のために写真を撮ることを禁じているそうで、それは学者然として原住民を物のように採ることを良しとしなかったからだといいます。
    もしかすると、この本も本当は出したくなかったのかも知れません。


    ★レヴィ=ストロースは、残念ながらこの年の10月30日に永眠されました。

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著者プロフィール

1908年11月28日ベルギーに生まれる。パリ大学卒業。1931年、哲学教授資格を得る。1935年、新設のサン・パウロ大学に社会学教授として赴任、人類学の研究を始める。1941年からニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで文化人類学の研究に従事。1947年末パリに戻る。1959年コレージュ・ド・フランスの正教授となり、社会人類学の講座を創設。1973年アカデミー・フランセーズ会員に選出される。1982年コレージュ・ド・フランス退官。2008年プレイヤード叢書(ガリマール社、フランス)全1冊の著作集Œuvres刊。2009年10月30日、100歳で逝去。著書『悲しき熱帯』(1955)〔全2巻、中央公論社、1977、中公クラシックス、2001〕、『野生の思考』(1962)〔みすず書房、1976〕、『神話論理』四部作『生のものと火を通したもの』(1964)〔みすず書房、2006〕『蜜から灰へ』(1966)〔みすず書房、2007〕『食卓作法の起源』(1968)〔みすず書房、2007〕『裸の人』(1971)〔二分冊、みすず書房、2008/10)他。

「2023年 『構造人類学 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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