- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622076810
作品紹介・あらすじ
ハイチの窮乏、メキシコの貧農の大虐殺、ロシアの監獄の結核。生きる権利と正義はなぜ蹂躙されるのか。人類学の分析的アプローチと医療現場発の実践的解決。
感想・レビュー・書評
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タイトルから見ると政治の本であると思われた。しかし、人類学者であり、医師である著者のハイチでの虐殺と貧困とHIVの非援助、ロシアでの刑務所の結核耐性菌の流行であり、政治的問題であり、それをつたない形で補っている医師の体験を語っているものであった。
質的社会学の推薦本であった。例のごとくみすず書房は活字が明朝体で細く読みづらい。 -
ロシアの多剤耐性結核の問題など、費用対効果を理由に、病気で苦しんでいる人たちの治療が行われないことを知った。社会的環境が影響して、同じ病気でも亡くなる人と回復する人の間に大きな差が生じることを事例を元に理解し、更に問題意識を持つことができた。様々な健康格差の事例から、格差について立体的に理解することができる著書だった。
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ハイチでのHIV蔓延, ロシアの刑務所でのMDRTBの蔓延などは, 単に疫学的な問題ではない。共通するのは, 根底に貧困があること。構造的な暴力のもとに, 貧困層が健康という基本的人権を剥奪されている。
医師になったあと, 自分自身がこういった問題にどう関わっていけるのかは分からない。ただ, そういう現実を目の当たりにして平然と無視できるような医師にはなりたくない。 -
購入はずいぶん前でしたが、東京が大雪のこの日にようやく読み終わりました。
途上国の貧困と苦しみの大元にある構造的暴力。やはりこのような貧困が、先進国の豊かさの装置になっているのだろうか。。。
ロシアの刑務所での結核のケースで書かれていた『悪の根元はかつての強制収容所にはない。それをたどろうとすれば、「自由世界」で幅を利かせている価格決定メカニズムと社会政策に行き着く』という一説には、製薬業界に身をおく一人として、厳しく迫られる言葉でした。 -
とにかく内容が濃く重い一冊である。この本は何度も途中下車して読み返しては前に戻り先に進み・・の連続。一度読んだだけでは理解不能な私。読み始めていくと、不条理としか思えない事象に著者が挑んできた歴史と、その内容が遠い昔の話ではなく、現代であることに驚かされてしまう。
日本ではバブルで景気が良く、お金をドブに捨てているようなそのときに、地球の裏側の悲惨な状況と人々の苦悩、多くの子供たちが死んでいき、生きるか死ぬかの生活をしている人たちが多くいたというその現実を知り、「命」の大切さをしきりに口にする日本人の豊かさが薄っぺらくおもえた。人の命が間接的にも政府や他国の人々の不条理な思想の中で奪われるという現状に向き合った人たちの生き様をしっかりと意識することも大切なのではないか。
そう思わせる一冊。 -
重い本である。ページ数も多いが。ハイチやロシアの刑務所、グアンタナモ、チアパス(メキシコ)の事実はひと事だろうか。遠い国で起こっている問題ではあるが、私たちの身近な場所でも起こっていないだろうか。見えない問題であるのか、見ていないだけなのか。著者は事実を「証人」として淡々と述べることで、問題を浮き彫りにする。新自由主義による経済格差は健康問題を大きくする。それは医療を商品とすることによってさらに拡大していく。著者は健康問題は社会的・経済的問題として考えなければ始まらない、そして健康問題は人権問題として考えていかなければ始まらない、と喝破する。某医療団体の主張と非常に重なる部分が多く、共感して読めた。著者はハーバード大で教鞭をとり、ノーベル平和賞の候補でもあるそうだ。学ぶべきことは多い。
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自分たちの現実とあまりにもかけ離れた貧困社会の現実の差異に目の眩むような思いになる。医療の中で出来ることに係わっておられる方々に頭が下がります。私にも出来ることはあるか?せめてそういうスタンスでいたいと思いました。
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貧困のため現代医療の恩恵を受けられない人々.ハイチにおけるエイズやロシヤの多剤耐性結核菌.世界中で若者が死んでいく現実に目を背けてはならない.
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生命倫理までもが、ネオリベに支配されようとしている今日世界の現実。私たちに今できることは。そして、すべきことは。