復興するハイチ ―― 震災から、そして貧困から 医師たちの闘いの記録2010―11
- みすず書房 (2014年3月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622078203
作品紹介・あらすじ
2010年1月12日のハイチ大地震から4年。著者はそこで30年近く無償医療活動を行い、絶望的状況で常に方策を見出してきた。そして20万以上の死者を出した未曽有の災害後、以前より良い状態への復興を目指す。しかし、世界の近代化のしわ寄せを一手に引き受けたこの国の問題は根深く、患者の苦しみを癒すには、国の、そして世界の病理を診る必要がある。世界で最も尊敬される医師による、壮絶な闘いの記録。
感想・レビュー・書評
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世界で最初の黒人による共和国。だがそのせいで世界から孤立し、重圧を受け、世界でも有数の貧困国となってしまった。
地震は慢性疾患が急性増悪した出来事
NGO共和国(無計画な善意が膨らみ、医療も教育もほとんどが個別で無計画に行われている(約80%)。彼らは公共セクターではないので、すべての住民をフォローする義務を背負っていない。その一方で公共部門は脆弱になり、制度が整備されないままになっている。)
震災が生じても、政治的混乱が長期間続いて事もあり、公共セクターにほとんど入らなかった
外からの介入が有害となる様々な出来事(コレラの持ち込み、食料自給の妨げ、職業の奪取、自立性の低下)
医学生はよそ者を結びつける接着剤 -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:498.0259||F
資料ID:51400586 -
30年間に渡り、途上国、紛争地などで医療の提供を行ってきたポール・ファーマー氏が、その活動の一つの大きな拠点としていたハイチで遭遇した大震災とその後のコレラの大流行からの復興に向けた取り組みを書いた本。
概ね2010年1月に発生した大震災から1年後までの期間を描いているが、そこに至るまでのハイチの歴史も含めて描かれており、大震災によってもたらされた被害が、自然災害だけではなく、脆弱な人間の安全保障の状態をつくり出した社会背景による人災としての側面を持つことも書かれている。
大規模災害は、社会の矛盾や歪みを明るみに出す。ハイチにおいては、政府を中心とする公共セクターの機能劣化とそれによってもたらされた基礎的な公共サービスや雇用の確保といった社会保障の欠如がそれである。それを各国のNGOが補完していたとしても、本質的には「NGO共和国」では国家の代わりを果たすことは出来ない。
そのような社会の歪みを冷静に見つめたうえで、「震災は復興を正しく行うチャンスである」と言い切る筆者の言葉には、非常に重たいものを感じた。
復旧ではなく復興を、とは東日本大震災後にも多く語られた言葉ではあるが、本質的に復興の必要なものは何か、そのことを見つめ直すための視座を身につけたいと感じた。