- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622079194
作品紹介・あらすじ
五〇年間精神医療の現場に立ち続け、ピエール・ジャネの力動精神医学を翻訳紹介してきた著者が、病院での体験を軸に、日本の精神医学のあり方を振り返る。有効な抗精神病薬がなく、隔離中心の時代から、粗悪な医療を行う病院の乱立、精神医療改革運動、DSM‐Ⅲの導入、薬物療法の全盛まで。患者とともに生きた足跡を振り返り、変貌する日本の精神医療を見つめる、このうえなく貴重な証言。
感想・レビュー・書評
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1960年代から2014年ごろの精神医学の流れを綴っている。回顧という形を取っているせいか、具体的な記述もあり図なども興味深い。60年代は臨床に勤しんでいた様子がある種懐かしく書かれている印象を受けた。精神医療改革運動を経て、80年代からアメリカ式の症状評価尺度が入ってかなり変貌しているとの事。そして、昔ながらの閉鎖病棟へ隔離はすでに時代遅れになっている様子。「病める一人の人」として患者を見ようとしているのがわかる。一般向けに書かれているせいかとても読みかった。優秀な研究者でもあったのだろうと推察する。
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病気
医学
精神 -
50年間にわたる精神医療・精神医学の歴史を一人の精神科医の臨床経験を通して振り返る。始まりは1960年代。収容中心の医療政策。絶対的に不足している医師数を無視して精神科ベッド数は増え続ける。1980年代からは精神医学が大きく変貌を遂げる。薬物療法全盛時代が始まる。そして現在。統合失調症が減少し、精神病理学が衰退する。診断基準が錯綜し、雨後の筍のごとくクリニックが出現する。精神医学の向かう先を占う意味で非常に意義深い。
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朝日の柄谷行人さん書評から読んでみた。
自らの反省・自己省察によって日本の精神医学の50年が綴られている。そういう意味でフロイト的な帰納であり、信用に足る認識であろうと感じた。
読後この医者に会ってみたいと思ったが、それが叶わないことを知り残念に思った。 -
個人史というか自分史がそのまま日本の精神医学の50年ということになるというのは、やっぱすごいね。精神病理学の50年とも言える内容。この著者もすでに亡くなってしまったのだということをこの本を読んで知った。
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この50年の日本の精神医学の変化が現場サイドから述べられており、興味を持って読めた。ここ10年は大きく変化したのだろうが、その前の40年はあまり変わってないように見えるのも日本の精神医療の後進性か。精神病理学の変遷や精神医学のこの50年の変化など、特に21世紀に精神科医になった人たちには実感がわかないかもしれないが、そのような若い人たちに読んでもらいたい本だと思う。荒れた時代を経験された人の言葉は重い。ただ最後まで読み進み、著者の遺作だということを知った。