可視化された帝国[増補版]―― 近代日本の行幸啓 (始まりの本)

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622083443

作品紹介・あらすじ

「天皇の身体の交代は支配そのものの重大な転換を伴った」-全国各地をまわり生身の身体をさらした三代の天皇を追う。

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  • 『可視化された帝国――近代日本の行幸啓【増補版】』

    【書誌情報】
    四六変型判 タテ191mm×ヨコ130mm/520頁
    定価 3,888円(本体3,600円)
    ISBN 978-4-622-08344-3 C1321
    2011年11月10日発行

      全国各地をまわり、人々の前に生身の身体をさらした三人の天皇・皇太子。『「民都」大阪対「帝都」東京』も『大正天皇』も、この近代天皇制の〈視覚的支配〉の実態をつぶさに追う、十年に及んだ実証的研究から生まれた。昭和初期に成立をみる「「国体」の視覚化」と、「想像の共同体」確立に至る「戦中期の〈時間支配〉」を補論に収める主著完全版。
    http://www.msz.co.jp/book/detail/08344.html

    【目次】
    目次

    1 序論
    1-1 「想像の共同体」論への疑問
    1-2 時期区分の設定

    2 明治初期の巡幸
    2-1 八回にわたる巡幸
    2-2 身体をさらす天皇
    2-3 並立するカリスマ
    2-4 鉄道に乗る天皇

    3 明治後期の行幸と巡啓
    3-1 巡幸から行幸へ――1890年の行幸
    3-2 嘉仁皇太子の少年時代――1900年巡啓前史
    3-3 皇太子、初めて九州へ――1900年巡啓
    3-4 人民との接近――1902、03年の巡啓
    3-5 天皇の名代として――1907年の巡啓と行啓(上)
    3-6 韓国訪問――1907年の巡啓と行啓(下)
    3-7 全国巡啓の達成――1908-12年の巡啓と行啓

    4 大正期の行幸と巡啓
    4-1 二つの〈視覚的支配〉の再整理
    4-2 大正天皇の悲劇――大正期の行幸
    4-3 裕仁皇太子の東宮御学問所時代――1915-20年の巡啓と行啓
    4-4 新しい政治空間の成立――1921、22年の巡啓と行啓
    4-5 台湾訪問――1923年行啓
    4-6 二度目の全国巡啓の達成――1923-26年の巡啓と行啓

    5 昭和初期の巡幸と行幸
    5-1 〈視覚的支配〉の収斂――満洲事変勃発まで
    5-2 「可視化された帝国」の完成――十五年戦争期

    6 結論

    補論1 「国体」の視覚化――大正。昭和初期における天皇制の再編
    補論2 戦中期の〈時間支配〉


    地図
    あとがき
    増補版あとがき
    索引

  • 鉄道が形成する「可視化された帝国」

    ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』(NTT出版)は、近代史や近代文化史を研究する者にとっては、いわば基本中の基本ともいうべき現代の古典の一冊であろう。本書は、アンダーソンの「想像の共同体」論を、明治以降の近代日本の実状とすり合わせながらがら、国民国家の成立にメディアがどのような役割を果たしたのかを分析する。

    国民国家の制度化に先行する「想像の共同体」は出版メディアによって可能となるという筋書きだが、筆者は日本社会においては、それに相当するものがなかったという。では、日本の近代国家の成立に貢献したメディアは何なのか。筆者は鉄道に注目する。

    メディアといえば、情報を伝達する手段をイメージするから、「鉄道がメディア?」と聞けば違和感があるかも知れないし、鉄道ファンを自認する筆者ならではの牽強付会?と思うかも知れないが、それは早計だ。鉄道も情報を伝達するひとつの手段であるし、情報だけでなく人間そのものを「結びつける技術的な手段」という点においては、具体的なメディアであろう。

    さて鉄道に注目する筆者は、明治期の国民国家形成に果たした最大の役割を、鉄道を用いた天皇の行幸啓であると指摘する。天皇の「お召し列車」が全国各地を通過することで、各地域のひとびとは動員される。決められた時間どおりに走る列車に向かって、いっせいに敬礼する。この振る舞いが拡大することで「帝国」が「可視化」されながら成立していくとみるのである。

    本書は天皇制論、政治学、文化史としての価値が高い一冊であることはいうまでもないが、「鉄道文化史」としても面白い一冊である。

  • <目次>
    1 序論
    1-1 「想像の共同体」論への疑問
    1-2 時代区分の設定

    2 明治初期の巡幸
    2-1 8回にわたる巡幸
    2-2 身体をさらす天皇
    2-3 並立するカリスマ
    2-4 鉄道に乗る天皇

    3 明治後期の巡幸と巡啓
    3-1 巡幸から行幸へ――1890年の行幸
    3-2 嘉仁皇太子の少年時代――1900年の巡啓前史
    3-3 皇太子、初めての九州へ――1900年巡啓
    3-4 人民との接近――1902、03年の行幸
    3-5 天皇の名代として――1907年の巡啓と行啓
    3-6 韓国訪問――1907年の巡啓と行啓
    3-7 全国巡啓の達成――1908-12年の巡啓と行啓

    4 対象機の行幸と巡啓
    4-1 ふたつの<視覚的支配>の再整理
    4-2 大正天皇の悲劇――対象機の行幸
    4-3 裕仁皇太子の東宮御学問所時代――1915-20年の巡啓と行啓
    4-4 新しい政治空間の成立――1921.22年の巡啓と行啓
    4-5 台湾訪問――1923年行啓
    4-6 二度目の全国巡啓の達成――1923-26年の巡啓と行啓

    5 昭和初期の巡啓と行啓
    5-1 <可視的支配>の収斂――満州事変の勃発まで
    5-2 「可視化された帝国」の完成――15年戦争期

    6 結論

    補論1 「国体」の視覚化――大正・昭和期における天皇制の再編
    補論2 戦中期の<時間支配>

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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