生命、エネルギー、進化

  • みすず書房
3.87
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622085348

作品紹介・あらすじ

高い評価を得た『ミトコンドリアが進化を決めた』の著者が、当時の理論を直近十年余の研究に基づいてバージョンアップし、進化史の新たな切り口を問う一冊。
絶え間なく流動する生体エネルギーが、40億年の進化の成り行きにさまざまな「制約」を課してきたと著者は言う。その制約こそが、原初の生命からあなたに至るまでのすべての生物を彫琢してきたのだ、と。
「化学浸透共役」というエネルギー形態のシンプルかつ変幻自在な特性に注目し、生命の起源のシナリオを説得的に描きだす第3章、「1遺伝子あたりの利用可能なエネルギー」を手がかりに真核生物と原核生物の間の大きなギャップを説明する第5章など、目の覚めるようなアイデアを次々に提示。起源/複雑化/性/死といった難題を統一的に解釈する。
本文より──『生命とは何か(What is Life?)』でシュレーディンガーは……完全に間違った疑問を発していた。エネルギーを加えると、疑問ははるかに明白なものとなる。「生とは何か(What is Living?)」だ。──

最前線の研究者の感じているスリルと興奮を体感できる、圧倒的な読み応えの科学書。

感想・レビュー・書評

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  • 研究者が脳で感じているスリルをこの本を読んで感じることができたのと、自分は生物学の専門知識が多少あったので、なんとなく理解したけど、ない人は少し厳しいかも

  • 人をマイクロに突き詰めてくとここに到達する最先端にいると思われる本。内容は難解だが、何度も読みたい本。

  • はじめに——なぜ生命は今こうなっているのか?

    第 I 部 問題
    1 生命とはなにか?
    生命最初の20億年小史
    遺伝子と環境に関わる問題
    生物学の中心にあるブラックホール
    複雑さへの失われたステップ
    間違った疑問
    2 生とはなにか?
    エネルギー、エントロピー、構造
    生命のエネルギーのメカニズムは不思議と狭い可能性に絞られている
    生物学の中心的な謎
    生命は結局のところ電子
    生命は結局のところプロトン

    第 II 部 生命の起源
    3 生命の起源におけるエネルギー
    細胞の作り方
    熱水孔は流通反応装置
    アルカリ性であることの重要性
    プロトン・パワー
    4 細胞の出現
    LUCAへ向かう岩だらけの険路
    膜の透過率の問題
    なぜ細菌と古細菌は根本的に違うのか

    第 III 部 複雑さ
    5 複雑な細胞の起源
    キメラという複雑さの起源
    なぜ細菌はいまだに細菌なのか
    1遺伝子あたりのエネルギー
    真核生物はどうやって制約から抜け出したのか
    ミトコンドリア—— 複雑さへ導く鍵
    6 有性生殖と、死の起源
    遺伝子の構造の秘密
    イントロンと、核の起源
    有性生殖の起源
    ふたつの性
    不死の生殖細胞、死を免れぬ体

    第 IV 部 予言
    7 力と栄光
    種の起源
    性決定とホールデーンの規則
    死の閾値
    フリーラジカル老化説
    エピローグ──深海より

  • 【総合評価 ⒋3】
    ・革新性⒋5
    進化や生命の起源のプロセスにエネルギーの観点を持ってくるという発想に驚かされた。

    ・明瞭性⒊5
    内容が非常に高度、高校レベルの生物学(一部大学レベル)を要求されるため理解するのにかなり時間がかかった。

    ・応用性⒋0
    生物学の根幹を学べるため、生物系の分野全てに生かすことができそう。

    ・個人的相性⒌0
    生物好きの私にとっては大好物であった。内容の難解さを上回る興味を持って読み進めることができた。

  • ●真核細胞は一般的な自然選択によって生まれたのではなく、多くの細菌が緊密に協力するあまり、一部の細胞がほかの細胞の中に入ってしまうと言う、1連の内部共生によって生まれた⁈
    ●今では、すべての真核生物には1つの共通の先祖があり、それ故、地球上の生命40億年間に1度だけ生じたことがわかっている。あらゆる植物や動物が1つの共通先祖がある…真核生物は「単系統」なのだ。
    ●生命は結局のところ電子。炭素がベース。プロトン。

  • おもしろかったので2回読んだ。しかし、難しかった。全ての生物(細菌、古細菌、真核生物)は、化学浸透共役という共通の仕組みで、必要なエネルギーを得ている。つまり、呼吸によって得られたエネルギーを使い、膜の内側から外側へプロトンを汲み出してプロトン勾配(膜の内外でのプロトンの濃度差)を作り出し、その勾配に従って膜の外側から内側へと戻るプロトンの流れを利用して、膜内にあるタンパク質のタービン(ATP合成酵素)を(文字通り)回転させて、全ての生物に共通するエネルギー『通貨』であるATP(アデノシン三リン酸)を合成している。この事実から出発して、最初の生命はアルカリ熱水噴出孔で誕生したという仮説が説明されている。それが本当かどうかは、もちろん門外漢には確かめようもないが、生命の起源について、もっともらしい仮説が提示できるようになっていることに感心した。もっとも、この仮説は、前著「生命の跳躍」にも書いてあったのだった。すっかり忘れていた。そういえば、「生命の跳躍」を読んだとき、ミトコンドリアの獲得が有性生殖や死の起源となったという説明がよく理解できなかったのだが、残念ながら、この本を読んでもその点は相変わらず釈然としなかった。

  • 後半はやや構成が甘く散漫な印象になってしまっているが、
    前半の生命誕生を解き明かす件は素晴らしく、どきどきする
    ような読書体験であった。もちろん今のところ仮説の域を
    出ないし、これから様々な検証や訂正を繰り返していくの
    だろうが、少なくとも「生命スープ」仮説を聞かされた時の
    何とも言えないモヤモヤ感は吹き飛ばしてくれる内容で
    あった。「周回遅れ」になる前に読むべし。

  • LUCAに関する説にかなり興奮した。

  • ビル・ゲイツが絶賛するので読んだが、今の自分には絶望的な難しさ。この本での学びは自分がいかに無知であること。非常にありがたい経験。

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著者プロフィール

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)遺伝・進化・環境部門、UCL Origins of Lifeプログラムリーダー。2015年、Biochemical Society Award(英国生化学会賞)を受賞。著書に、斉藤隆央訳『生命、エネルギー、進化』みすず書房2016、斉藤隆央訳『生命の跳躍』みすず書房2010、斉藤隆央訳『ミトコンドリアが進化を決めた』みすず書房2007、西田睦監訳、遠藤圭子訳『生と死の自然史――進化を統べる酸素』東海大学出版会2006、共著書にLife in the Frozen State, CRC Press, 2004がある。科学書作家としても高い評価を得ており、『生命の跳躍』は王立協会による2010年の科学書賞を受賞。

「2016年 『生命、エネルギー、進化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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