きのこのなぐさめ

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622088097

作品紹介・あらすじ

ある日突然、不慮の事故で最愛の夫エイオルフを失った「私」。悲しみの淵にいた彼女を連れ出してくれたのは、きのこだった。偶然参加したきのこ狩りコースから始まった、「私」ときのこの物語。きのこ社会の不可思議な魅力と、「きのこがなければ、人生もない」きのこ愛好家たちとの交流を通し、「私」は人生を歩む力を再び取り戻してゆく。毒、見分け方、味、調理法…などの知識やきのこの生態、きのこオタクたちの友情や不文律など、人を虜にするきのこをめぐるノンフィクション。約120種類のきのこが登場。「きのこレシピ」ときのこ写真も収録。

感想・レビュー・書評

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  • NORLA今月の翻訳者、日本語版 #国際女性デー | Reiko Hidani HP
    http://reikohidani.net/5165/

    みすず書房のPR(版元ドットコム)
    ある日突然、不慮の事故で最愛の夫エイオルフを失った「私」。悲しみの淵にいた彼女を連れ出してくれたのは、きのこだった。偶然参加したきのこ狩りコースから始まった、「私」ときのこの物語。きのこ社会の不可思議な魅力と、「きのこがなければ、人生もない」きのこ愛好家たちとの交流を通し、「私」は人生を歩む力を再び取り戻してゆく。毒、見分け方、味、調理法…などの知識やきのこの生態、きのこオタクたちの友情や不文律など、人を虜にするきのこをめぐるノンフィクション。約120種類のきのこが登場。「きのこレシピ」ときのこ写真も収録。
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622088097

  • もっと私の好奇心をくすぐるような内容かな?と、思っていた。
    マレーシアから留学生としてノルウェーに来て、夫と知り合い、突然先立たれた著者。
    そのかわりのない深く絶望的な悲しみを救ってくれたのが、森の中で、土の匂いや自然の神秘と向き合いながら、初めて知るキノコの世界。

    知識を詰め込んで、検定試験を受ける、合格。
    危険なキノコと安全なキノコを仕分けられるように。

    知っていくと、時々納得のいかないことに出くわす。
    それらと向き合い打開策を考えながらも進む。

    確かに、ワクワクする様子には共感できるが、
    私としてはキノコの様々ではあるだろうが、自然の中での生きる戦略を知りたかった。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50172105

  • 最愛の夫を失った著者が、キノコと出会い、一つみつけ一つ喜びを噛み締めていく姿にじんとなりました。
    出てくるキノコの料理が食べたくなります。

  • 「きのこが時折、顔を出す原野を進む私の旅は同時に、心象風景を彷徨う旅と化した。」

    きのこには、その見た目にも惹かれるし、食べるのもすきで興味はもちつつも、詳しくをよく知らないししろうともしていなかったことに気がついた。スマホを片手に画像をぽちぽちと、照らし合わせてみながら愉しんだ。
    彼女の悦びと興奮が頁から迸る。先を話したくてたまらない友人の、断続的な記憶と体験を一晩聴かせてもらっていたようなここち。その無窮の哀しみのなかで出逢ったきのこの宇宙を、わたしもたゆたう。
    きのこハンターたちの暗黙のルール。きのこ狂たちのにんげんカンケイ。どの国でだって、オタクたちはしりまわる!ちょっぴり面倒くさそうだけれど、きのこの複雑な妖しさと相通ずるようでおかしい。リバティキャップで感じる一体感は、きのこの放つユニマインドみたいで不思議だし。
    ノルウェーには世界に誇るきのこ協会なるもの(きのこ専門家養成コースと試験制度)があるにもかかわらず、このくにのひとびとが「きのこは食べるもんじゃあねぇ!」なんておもうひとが多くいたようで、きのこの悦びは、インテリジェンスと洗練された美食習慣の象徴だったなんて、おどろいた。
    国よって、毒きのこの分類が異なることもとても興味深かった。そんなきのこを調理しておいしくいただいちゃうきのこ専門家たち。匂いの好みも国ごとにはちがうようだ。あーあ。おなかすいた。
    No Mushroom, No Life。
    きのこの識別のために感覚を研ぎ澄ますべくじしんの悲しみと向き合うときめた彼女の 旅 をとおして、わたしのきのこ愛にも灯がともった。

    「きのこへの興味により、備わっていることすら自明でなかった、古来の採取の欲求を呼び覚まされることもある。それは私たちに「内なる狩猟採取民族」と触れ合うきっかけを与えてくれる。」

    「私たちはあきらめて何もやらずにいるには、年をとりすぎたのさ」

  • きのこと喪失と。

    メイ・サートンを思い出した。あちらは詩と庭の花々。


    きのこが特に好きだ!という訳でもないけれども楽しんで読んだ。きのこ狩りは難しいけど料理したりして、生きることへの意力と食の喜びとの繋がりを実感したなあ。

  • 長年連れ添った夫を亡くし失意のどん底にいた著者は、生前の夫と「いつか一緒に参加しよう」と話していたきのこについての講座に申し込む。初めて出会うきのこの深淵な世界は、彼女をノルウェーの森へ、山へと連れだした。喪失感に寄り添う趣味の世界を語り、いつしか優しい光が心に差し込んでくるようなエッセイ。きのこの写真も多数収録。


    不思議な読後感だった。夫の急死に対するとまどいと深い悲しみを湛えた段落と、きのこ探しという新しい趣味に出会ったワクワク感を伝える段落がごく自然に並べられている。人は悲しみの淵にいても笑うことができるし、楽しんでいる最中にふと亡くなった愛する人のことを思いだすこともある。喪失を受け入れることができるまでの寄せては返す感情を肯定してくれるような語り口だ。
    著者のウーンさんはマレーシア人。留学先のノルウェーで知り合ったエイオルフさんと結婚し、以来30年以上北欧に住んできたという。ウーンさんは食文化や死生観などが全く異なる世界からノルウェーを眺めるマレーシア人としての視点と、ノルウェーで暮らしノルウェーを愛する人の視点を併せ持つ。
    きのこパーティーのメニューにトナカイ料理が並ぶなど、さすが北欧と思うところもあれば、官公庁が認めるきのこ鑑定士の試験があるなど知らなかったノルウェーの姿にも出会う。ではノルウェーはきのこ先進国なのかといえば、保守的な人はいまだにきのこ食をかたくなに避ける傾向があり、エイオルフさんの実家でもきのこはでなかったのだそうだ(ウーンさんのきのこ嫌いへの目線は厳しい)。エイオルフさん本人はマレーシア料理やアジアと北欧の折衷料理を楽しんでいた。建築家だったエイオルフさんの人となりが少しずつ明かされていくにつれ、彼を失ったウーンさんの悲しみがこちらにも染み込むように伝わってくる。
    前半はきのことの出会い、森できのこを探し、種類を同定する難しさなどがユーモラスに語られる。後半は文化人類学者であるウーンさん独自の視点で国ごと・食文化ごとに異なる「毒のグレーゾーン」の判定や、図鑑に書かれたきのこの匂いに関する表現は本当に正しいのか、先入観に拠らない表現を突き詰めていく。
    匂いの快と不快が食文化で大きく変わる例として松茸がでてくる。ノルウェーというかヨーロッパでは完全に悪臭と見なされていて、マレーシアでも食べないらしい。ただ、ほかの文化圏でメジャーなバターソテーではなく、出汁を味わうものだということはしっかり伝えてくれている。西洋でも国によって匂いの好き嫌いはまちまちで、普段食べているものでも先入観なくブラインドで嗅ぐと不快に感じられるのは発酵食品にも近いと思う。
    新しい趣味、新しい世界が劇的に悲しみから著者を救いだした、という本ではない。けれど、森や山を散策し、草陰からきのこを見つけだすという作業に集中するなかで、失った大切な人の思い出がその空気のなかに溶けて一体化していくような、そういう寄り添い方もあるのだと提示してくれる一冊だった。

  • ノルウェー で文化人類学者をやっているマレーシア人のエッセイ。ノルウェー 人の夫を失った悲しみのケアときのこの喜びへの目覚め。

    きのこの匂いセミナー
    教科書的に語られるきのこの匂いは実情とことなる。

    香水の研究をしている知人にきのこのアロマの嗅ぎ分けについて相談。きのこの匂いもハーモニーのように説明できるか?

    ノルウェー ではマツタケは靴下の匂いがする食べられないきのことして扱われている。名前も悪臭きのこ。日本ではマツタケは高級品。

    ノルウェー で発見されたのが先だったので、臭いきのこで学名登録されそうになった。これに日本のロビイストが抗議したため、学名もマツタケで登録された、というエピソード。

    マツタケの旨みは水溶性で、油溶性ではない。マツタケの真骨頂は炊き込みご飯。ノルウェー でやるようなバター焼きでは旨みはでない。

    ノルウェー で非食用とされてるきのこが日本では高級品なように、ノルウェー の高級きのこはフランスでは非食用のことも。トガリアミガサタケ。

    野生のきのこの方が養殖きのこより美味しい。土が良いから。

    マレーシアの森はジャングルなので森に入るのは一般的でないが、ノルウェー では森はレクリエーションの場。

    その他、きのこのレシピも。

    きのこの学名を覚えると、世界中のキノコ愛好者とやりとりできるし情報を集められる。

    キノコをたべるのはノルウェー の伝統ではない。森に親しみ、きのこを取ってたべるのは、一昔前のモダンな知識人の習慣だった。

    保守的な人ほどキノコフォビアで、お腹を壊さないか。毒にあたらないか心配して怖がる。

    マレーシアで習った詩、オジマンディアス
    パーシービッシュシェリーが書いた

    「我が名はオジマンディアス。王の中の王だ。全能の神よ、わが業を見よ。そして絶望せよ」

    砂のなかに半分沈められた、壊れた王の像に刻まれていたのは、これらのわずかな言葉だけだった。

    栄誉と名声ははかないもので、最も硬い素材でつくられた石造も、時が経つに連れ、崩れ去る。

  • 突然伴侶を失ったノルウェー在住のマレーシア女性の喪失と再生の物語。
    思われているほど猛毒のキノコは多くなく、食べる習慣のないキノコが毒キノコと分類されやすいというは面白い。

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著者プロフィール

1958‐。社会人類学者、作家。マレーシア生まれの中華系マレーシア人(漢字表記は龍麗雲)。ノルウェーの公認きのこ鑑定士。18歳の時、交換留学生としてノルウェーに留学。そこで出会ったエイオルフ・オルセンと結婚し、ノルウェーに住み続ける。地方自治体の部長職や、男女平等センターの理事などを経て、夫と共にワークショップの企画運営を行うコンサルタント会社を興す。https://www.instagram.com/littwoonlong/

「2019年 『きのこのなぐさめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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