つきあい方の科学:バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー 45)

  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623029235

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  • 囚人のジレンマについての解説。
    目の前の相手より高い得点を上げる必要はない(目先の相手を羨まない)。
    相手が裏切らない限り、こちらも裏切らないという互恵主義。
    報復は限定的なものにとどめる。

    第一次世界大戦中の塹壕戦でも囚人のジレンマに基づく協調が生まれていたというのは面白い。
    また、協調関係という点について、血縁選択説ないしドーキンスの遺伝子選択説を側面的に説明できるのも興味深い。

  • 永続するつきあいでは、単純なしっぺ返し戦略が有効。
    最初から有限回とわかっていれば、お互い裏切りあうことになる。
    お互い協調行動が続くことが一番の利益。そのためには最初から協調し、相手が裏切ったら報復する。
    しっぺ返しが有効なのは、相手が理解しやすいから。自分から相手を搾取することは放棄していることがわかりやすい。

    全面裏切りは集団的に安定している。皆が裏切りあうことになる。それ以外はない。

    戦争でも膠着状態になるとお互いに手加減する場面があった=協調関係が敵対同士でも自然に生まれた。

    生物学への応用=微生物は、宿主の死が近くなると共生関係から寄生的関係になる。ガンを生じさせるウイルスも同じ。
    敗血症を生じさせる腸内バクテリアなどもその戦略である可能性がある。ダウン症などの高齢出産に伴う遺伝症も囚人のジレンマによって生じている可能性がある。

    効果的な選択とは
    相手を羨まない、自分から先に裏切らない、しっぺ返しする、策に溺れない。

    将来に重みを増やす=将来の関係のほうが大事だと思わせる=つきあいを頻繁にすることと同じ。
    つきあいの細分化=外交関係で段階的に実現すること。途中で裏切ることの意味がなくなる。

    しっぺ返しの弱点は、ひとたび争いが始まると終わらない点。

  • リチャード・ドーキンスが『利己的な遺伝子』の「一九八九年版へのまえがき」で、「この間の何年かで私をもっとも興奮させた」と言及していたので、読んでみた。利己主義者の間にも協調関係は進化することができる。日常的な人付き合いに役立てることもできそうだ。『歌うネアンデルタール』の参考文献。

  • もう古い本だが、反復囚人のジレンマゲームにおいて協調関係をうまく引き出す「しっぺ返し戦略」について、さまざまな角度から論じた本、とくに第一次世界大戦の西部戦線における塹壕線で「殺しも殺されもしないやりかた」の出現と崩壊をとりあつかっている所は興味深い。囚人のジレンマゲームで、相手とくり返しつきあう確率が低い場合は、つねに裏切り戦略が優位を占めるが、くり返しつきあう確率があがると、5%ほどの「しっぺ返し」戦略どうしの内輪づきあいができる確率でも裏切り戦略のなかに足場がきづけることを論じている。「しっぺ返し」戦略の有効性は1、自分からは裏切らないこと、2、相手に裏切られたらはじめのうらぎりで怒りをしめし自分も裏切ること、つまり、相手のやったことを次ぎにそのままお返しすること、3、すぐに水にながして協調のきっかけをあたえること、4、明確なメッセージで相手がついてきやすいようにすることである。文章じたいはくり返しが多く少し辟易するが、相手をやりこめるのではなく、うまく協調をひきだした方がうまくいくということをコンピュータによるシュミレーション(簡単なものだが)で論じていてわかりやすい。

  • 未読

  • 「しっぺ返し(互恵主義)」最も単純で最も強力な生き残り戦略。
    権謀術数の限りを尽くした戦略もしっぺ返し戦略にはかなわない・・・というのは意外な結論でした。

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