関係発達論の構築:間主観的アプローチによる

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623030378

作品紹介・あらすじ

一人の子どもの誕生とその後の心的成長は、一組のカップルの親としての誕生とその後の心的成長と重なり合って進行してゆくほかはない。それは、かつて育てられるものであった人がいま育てる者になるという、人間がその生命と文化を世代から世代へと無限にリサイクルする過程。その過程に位置づけて捉える新しい発達理論構築の試み。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の学位論文の前編にあたる本で、主として著者の提唱する関係発達論の理論的な側面があつかわれています。後編は『関係発達論の展開』(ミネルヴァ書房)で、こちらではエピソード記述に基づく具体的な議論が展開されています。

    理論編ということで、先行研究のサーヴェイや、メルロ=ポンティに依拠した著者の「現象学的」な立場についてくわしく論じられています。ただしあくまでも哲学ではなく心理学であり、それも臨床的な立場を標榜している著者だけあって、具体的な場面にそくした理論構築がめざされています。こうした著者の姿勢は、子どもと養育者とのかかわりに参加しつつ観察をおこなっている際にしばしば訪れる、「はっと気づかされる」体験を「生きられる還元」と呼び、そこから具体的な場面にそくした関係論的な考察を引き出そうとしていることにもうかがうことができます。

    しかし、やはり理論的な方面に偏っている印象は否めず、たとえば子ども、養育者、そして養育者自身の母親と3代にわたってつづく「育て-育てられる」関係を、一つのモデルによって示そうとしているところに、生命論的な全体論の雰囲気を感じてしまいます。もちろんじっさいの著者の参加観察は具体的な場面にそくしておこなわれたものだということは承知しているのですが、それを理論的なモデルに昇華する段階には、まだ考えるべき事柄が残されているのではないかという気がします。

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著者プロフィール

中京大学心理学部教授。京都大学博士(文学)。専門は発達心理学、発達臨床心理学。関係発達論の提唱者。
1943年生まれ。京都大学文学部哲学科卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。島根大学教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、2007年より現職。
近著『〈育てられる者〉から〈育てる者〉へ』(NHKブックス、2002年)、『エピソード記述入門』(東京大学出版会、2005年)、『ひとがひとをわかるということ』(ミネルヴァ書房、2006年)『障害児保育』(ミネルヴァ書房、2009年)、『エピソード記述で保育を描く』(共著、ミネルヴァ書房、 2009年)、『保育・主体として育てる営み』(ミネルヴァ書房、2010年)など多数。

「2011年 『子どもは育てられて育つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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