韓国における「権威主義的」体制の成立: 李承晩政権の崩壊まで (MINERVA人文・社会科学叢書 71)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623037575

作品紹介・あらすじ

日本敗戦により解放された韓国。しかし希望に満ちた解放はやがて、失意に満ちた「権威主義的」体制へと帰着する。韓国は何故このような体制へと行き着いたのか。本書はその過程と原因を、日本植民地支配とそこからの特異な脱却過程、そしてそれらが李承晩政権期の与野党に与えた影響を中心に説明する。

感想・レビュー・書評

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  •  「権威主義的」体制、とは何か。著者は、政党はあれど政権交代の可能性は極めて小さい体制、と定義している。韓国の場合は制度的民主主義は導入されていたわけだが、藤原帰一が東南アジア政治で使った「政府党」概念を著者も使う。李承晩政権とこれと一体化した「政府党」自由党によりこのような体制が成立した、というのが本書の論である。
     ただ前半は「東亜日報グループ」を中心とする「正統保守野党」勢力について書かれている。日本統治期に国内にいたとは言え「総督府との関係は微妙なものであった」「(日本の総力戦遂行に駆り出されたが)彼らと総督府との関係が円滑であったことを意味するものではない」との評価。それでも、韓国成立後は親日派と見られがちで、また彼らもそう見られる危険を自覚していた。日本統治期の国内有力者はどこまで「親日派」だったか、評価は現在に至るまで実に難しいものだと思う。
     一方李承晩は、初期こそ前述の勢力と一定の協力を行ったり、これに追い詰められたりもしたが、やがて物理的暴力と金融統制力という剥き出しの権力を使って政治的に勝利する。当時の韓国で、今とは比較にならないほど権力の恣意的な使用が可能だったこと、また李承晩の実際の政治指導はともかく、その存在がいかに大きかったかが分かる。著者は「大韓民国という国家が、その発足の以前から事実上、李承晩を元首とする国家として設計され、また彼の存在を前提として運営されてきた」とまで述べている。

  • 東亜日報グループの挫折と、李承晩が何故韓国が解放後に頂点に登りつめることが出来たか、韓国独立後の政治力学を知るには外せない好著です

  • 2003年

  • 韓国における権威主義的な体制がどのようにして確立していったのか、実際の韓国政治史、事件を具体例として説明を加えている。

    韓国で行われる「政治学」では多く、事件などの具体例よりも理論的なものを重要視するため、この本のように「歴史・事件」を追って説明するという研究は少ないように思われる。
    権威主義体制についても同じである。このテーマについて研究している人は多いが、韓国では実際の事件史から説明を加えるような論文はあまり見つからないし、この本のように50年代を中心にみたものもあまりない。
    その意味で、この本は重要な意味を持っていると考えられる。特に李承晩の個人的な背景、カリスマ性から韓国の権威主義体制を説明しているのも面白い。理論に慣れてない人にも比較的とっつきやすいといえる。

    難解かつ、筆者の文章のリズムがだんだんとイヤになってきたりもする・・・。
    が、特に序章で展開される各国の「権威主義体制」成立への道のりを示す理論は非常に面白い。
    韓国政治を勉強する際には必ず読むべき本。

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著者プロフィール

神戸大学大学院国際協力研究科教授

「2022年 『誤解しないための日韓関係講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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