- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623056583
作品紹介・あらすじ
20世紀末に日本に導入され、その根本的な意味を問うことなく行われてきた政策評価。本書では、実務経験のある著者が、誤ったアカウンタビリティの解釈のもとで展開された政策評価に対して警鐘を鳴らす。政策評価本来の姿を問い直し、今後の可能性を提示する。
感想・レビュー・書評
-
過去に読んだ文献ですが、いまいち内容を理解できていなかったので読み直しました。
本書は、「政策評価」とは何か、について再考を促す1冊です。
政策学、評価学の歴史を紐解いた上で、中央省庁や地方自治体で導入されている「政策評価」や「行政評価」に見られるさまざまな誤解が指摘されていきます。
まず、著者によれば、政策体系を構成する政策―施策―事業の連なりは、一般に考えられているような単なる目的手段関係ではなく、質的に区別されるものです。本書では、施策は「プログラム」、事業は「プロジェクト」と読み替えられ、「プログラム」は、「アウトカムを生み出すためにいかなる活動(政策手段)を選択、実施するのかを詳細に定め、その資源とスケジュールを指定する一種の『ソフトウェア』」として定義されます。
この「プログラム」概念の重要性は、組織横断的にプロジェクトの束を評価できる点にあり、これを対象とした「プログラム評価」こそが政策評価の源流にあるというのが本書の主張の核です。一方で、プロジェクト単位で部局が縦割り化されている日本の中央省庁では、この概念は定着しにくいのが現状です。
この「プログラム」概念の不在が、「業績測定」と「政策評価」の混同を招いていることを著者は指摘します。
本来、「業績測定」とは、プロジェクトの事前に設定した目標に向けての進捗状況の管理を指し、アウトプットを対象として定期的に実施されるものであるのに対し、「政策評価」はプログラムを多角的に検証するものであり、アウトカムやインパクトを対象として必要に応じて実施されるものであるという違いがあります。両者では、アカウンタビリティの確保に役立つのが業績測定、政策内容の改善・学習に資するのが政策評価という形で用途が異なります。
しかし、「プログラム」概念が明確ではないために、プロジェクトを対象とした個別の業績測定が、そのまま「政策評価」であるといった誤解が生じやすくなっているようです。また、業績測定がNPMの流れを汲むものであること、日本ではNPM型の改革と同時期に政策評価が導入されたことがこの誤解に拍車をかけていることにも触れられています。
以上が大まかな本書の内容ですが、個人的には理解できたようで理解できなかったような不全感が残ったので、また機会を改めて読んでみたいと思います。
少し難解ではありますが、政策評価に興味のある方にはおすすめです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
期待して読んだが、正直ちょっと物足りなかった。筆者の自治体に対する愚痴が多く、あまり建設的でないように感じた。また、「定義」論が多いが、あまり定義とかこれまでの経緯に縛られる必要もないんじゃないかと思う。