生まれくる文明と対峙すること:7世紀地中海世界の新たな歴史像 (MINERVA西洋史ライブラリー 114)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623087693

作品紹介・あらすじ

7世紀に勃興したイスラーム文明・アラブ国家にビザンツ帝国はいかに対峙したのか。これまで十分に説明されることのなかった中世の地中海世界の新たな歴史像を本書は提示する。7世紀中盤のコンスタンス2世時代を中心に、ビザンツ帝国や地中海世界の変化に対して、政治的・軍事的な状況だけでなく、イスラームをふくむ総合的な観点からの分析を試みる。

感想・レビュー・書評

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  • アラブ国家の出現とそれに対応しながら新しい体制を構築したビザンツ帝国の歴史を扱う。読みやすいですよ。
    https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2020/01/18/000000

  • 中谷功治「ビザンツ帝国」(中公新書)つながりで。新たな7世紀ビザンツ帝国像、ヘラクレイオス帝晩年630年代から、10年単位で詳細に検討し、コンスタンス2世死後の670年代までが主に扱われる。史料の残存状況が壊滅的で「暗黒時代」などとも言われていたそうだが、その後発掘や現存史料の再評価により、史料状況が改善し、当該時期の再評価が可能になったとのこと。/重箱の隅をつつくように思えても、諸史料、諸研究をつきあわせて、年代をカチッと確定させることで、それまで関連がないと思っていた事柄に関連を見いだせる!となった時の、違った地平が開ける感が痛快、と思った。/ヘラクレイオス帝末期からコンスタンス2世治世までの、政治・軍事・経済・外交・宗教政策面、ササン朝ペルシア、アラブ勢力などの外部要因から、当該期のビザンツ帝国の政策が再評価される。/ビザンツ帝国は、これまでの「ローマ帝国」ではなくなった。信仰、言語面で離心的傾向を示していたシリア、エジプトなどがアラブ支配下に入ったことで、逆説的に中央の権威、権力が高まり、凝集力の高い国家へと変貌した。アラブ勢力のコンスタンティノープル包囲をしのいだことで、神によって守られる国家、神によって守られる皇帝が統治する国家として、続いていくことに、と。一方、お互いの信仰は「他者」として併存・対峙しなければならない存在となった。ビザンツは生まれくるイスラーム文明と対峙・対話を余儀なくされ、イスラーム文明もまた、存続するビザンツとの対峙・対話をするアラブ国家が余儀なくされたからこそ生まれてきた、と。俯瞰で大きな流れを捉えようという視点には大きな魅力を感じた。/ただ、アラブ側の第一次内乱、第二次内覧、ウマル二世の即位、アッバース朝革命、すべてビザンツ帝国へのアラブ側の敗北が要因となった、というのは言い過ぎな気もするがどうなのだろうか、とは思った。

  • 7世紀のアラブの勃興に対するビザンツの動きとそれによるアラブの変化を、コンスタンス2世の時代を軸に論じる。当初ビザンツはアラブにどう対処したか、またその対処はどう変化したのか。その背景にどのような状況や対アラブ認識があったのか。認識の変化やコンスタンティノープル包囲を潜り抜けてビザンツはどのような姿になっていくのか。またアラブがササン朝を併呑しながらビザンツ併呑に失敗したことでどのような影響があったのか――近年の研究の成果により活用が進む印章・文献、また先行研究を駆使し当時の状況に迫る。ビザンツ愛好者必読の一冊。

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著者プロフィール

立命館大学文学部教授

「2021年 『中近世ヨーロッパ史のフロンティア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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