[新訳・評注]歴史の概念について

  • 未来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784624011932

作品紹介・あらすじ

ベンヤミン個人の人生とヨーロッパの情勢と、ふたつの危機の度合いが深まっていくなかで構想された未完の遺稿「歴史の概念について(歴史哲学テーゼ)」。6つのバージョンの原稿が現存しているが、既訳では特定の校訂版のみが主として参照されてきた。本書は、これまであまり顧みられてこなかった、1981年にジョルジョ・アガンベンが入手したタイプ原稿を底本にすえ、他の原稿を参照しつつ新訳を作成する。底本のみに見られるテーゼ1篇と自筆の書き込みも訳出。訳者による各テーゼへの充実した評注も独立させて附し、テクストの新たな相貌を浮かび上がらせる。

感想・レビュー・書評

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  • 今や現在進行中の事態についての真実さえ、語ることのできない時代。いや、いつの世も、人は真実を語ることをできなかったのではないか。まして、歴史の真実を語ることは。

    ”歴史”に向かい合う姿勢に必要なことは、その時代の主流―大勢順応主義から手を切ること。そうして、辛うじて過去を現在へ救い出すことができる。そのための”メシア的”能力が、かすかに、私たち一人一人に与えられている。ならば、今を生きる者の責務はここにある。

    最新の研究成果の翻訳。

  • 〇以下引用

    過去においていかに残虐と歴史を支配したかを知っている者にとって、現に繰り広げられているナチズムの暴威は、歴史の通例常態にほかならない。このようなとき、現状を進歩に対する例外常態と驚き途方に暮れる人々には、歴史は進歩するという根本前提そのものを疑うよう促そう。現状を進歩に対する例外常態と位置付けてファシズムと妥協する人々にも、同じく過去の抑圧の歴史に学んで、進歩概念を放棄するよう促し、歴史の概念を構築するよう呼びかけよう

    真の意味での例外常態の招来とは、抑圧なき状態を現出させることにほかならない

    名も知れず永遠に沈黙する死者。遺棄されあとかたもなく崩れ去って現状に復されることのない文物。そうしたものにこそ、じつは現在のわたしたちに不意に語りかけ、その現在をまったく別用のものへと変容させる可能性を秘めている
    →この「文物」というのは、「永遠」の時間を生きた人間の痕跡と捉えて良いのか。言い換えれば世界と照応的に関わり生きた者のみた世界、作って来た世界の表象として捉えていいだろうか。


    歴史とは、構成の対象である、というのはまず遠く離れた過去の事物と現在との意想想の結びつきが成立すること

    過去の事象との出会いにおいて生じるもののことだ。けっして現在の側からの一方的な過去象の組み立てでもなければ、逆に過去が無意識的に想起されて現在に到来することでもない。

    →過去において継続されてきた「生命」が、ある形象の元で刻印されながら、しかし遺棄されてきている。過去に出会うというのは、その「生命」と「今の時」において出会い、引き継ぐということで起こる現象だろうか。

    過去と現在との出会いは、過去の出来事が連続体としての因果連鎖から解き放たれて、今に甦り、その今の自己変容をうながすという事態を意味している

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著者プロフィール

1892-1940 ドイツの思想家・文学者。「ドイツ悲劇の根源」「パサージュ論」など

「2011年 『ベンヤミン・アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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