- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634152298
作品紹介・あらすじ
アジアでは、「民主主義」という政治体制が現代もなかなか定着し切れない状況が続いている。どの国も表向きは「民主主義」を唱えつつも、実態としては軍による専制や一党独裁、制限された民主主義など、国民の自由や尊厳を重視しない政治体制となっている国が多い。
アジアでそのような状況が続くのはなぜなのか。その問いに対して、王朝国家の時代からの影響も踏まえて検討した意欲的な一冊。
西洋の政治思想史をひとつの比較対象としつつ、王朝国家の時代、植民地国家の時代、現代国家の時代と、3つの便宜的時代区分を設定して、アジア全体としてどのような大きな変化が起こってきたのか、各時代の特徴的な思想言説を参照しながら検討する。
欧米とは違う、アジア独自のファクターを描き出し、今私たちがどのような問題と向き合う必要があるのかを明らかにする。
感想・レビュー・書評
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東・東南・南アジアにおける王朝、植民地、現代の各時代の政治思想を見る。
王朝時代は支配者の正統性に宗教が使われた。ただ、中国での「天」は仏教等と同じ「宗教」なのかは、自分にはやや引っかかった。また著者は、王朝国家につき、専制だった、人民はある程度の自由を持っていた、と対照的な2つの見方を紹介。
近代には西欧政治思想か流入。植民地国家でも宗主国は現地の中下級官僚育成のため大学を創設。また宗主国に留学する知識人も。伝統思想との関係では、一定の調和を見た孫文や康有為、朴泳孝と、否定した陳独秀、政治からの宗教排除を唱えたガンディーやジンナーなど様々だ。
WWII直後の政治体制については、独立指導層が王族か非王族か、民主主義と社会主義か、により異なった。しかし、多民族型社会、民族集団の利益優先により多くの国では政治社会が混乱。現在でも、「反自由主義型」民主主義、軍政、王政、共産党独裁といった政治体制が存在。
最後に著者は、中国共産党やスカルノの例を挙げ、王朝国家と伝統国家の断続性と連続性の2つの側面を指摘し、特に現在では反欧米型民主主義が主張を強めているとする。 -
東2法経図・6F開架:311.2A/I96g//K