東アジア文化圏の形成 (世界史リブレット 7)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634340701

作品紹介・あらすじ

朝鮮半島、日本列島、インドシナ半島のヴェトナム地域は、かつてコミュニケーションの手段としての漢字を共有し、それを媒介にして儒教、漢訳仏教、律令といった中国に起源する文化を受容した。中国を含めたこの地域を東アジア文化圏と規定し、そこに自己完結的な世界を構想する。これが東アジア世界論であり、この世界を秩序づけた固有の政治システムを冊封体制とよぶ。戦後日本の学界に多大な影響をおよぼしつづけてきた、この壮大な仮説の成り立ちにまで遡って、東アジア文化圏の形成を再検討した。

感想・レビュー・書評

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  • テーマ史

  •  今は多少聞き慣れた"東アジア世界"という概念がどのような経緯で作られ、どのように使われたか、という問題意識を解き明かした本。著者は私のお世話になっている大学の恩師。

     "東アジア世界"は中国の他に日本、朝鮮半島、ヴェトナムといった地域を指し、漢字を媒介に儒教、律令、漢訳仏教といった制度や文化を受容し、共有した世界として定義される。そういう意味で、戦時中の日本が提唱した”大東亜共栄圏”とは意を異にする。

     "東アジア世界"という概念を問題としたのは、"冊封体制"という用語を提唱した西嶋定生や、一高校世界史の教科書検定に不合格となった『日本国民の世界史』の著者である上原専禄といった1950~60年代の歴史学者。

     では、なぜ彼らはこうした問題意識を持つようになったのか。それは当時の現実認識、つまり当時の日本が直面していた危機と密接に関係する。それは日本国民が戦前の独善的な史観(一国史観)を克服し、自分自身で世界史像を形成することが要請されたためだった。

     その必要性から、日本一国という枠を超え、その政治、経済、文化の動きの流れを周辺地域まで敷衍させて考えるための"東アジア世界"という概念が提唱されるようになった。

     先生の「現実と向き合い、未来に向かって意欲することなしに過去の解釈、歴史像の構想などありえない」という言葉は肝に銘じておきたい。

  • 中国はかつて、朝貢貿易を強制してたって言うけど・・・
    それって、ほんとかな?という本。

  • 主に日中韓を指して東アジアと言っていたよーな気がします。

    西洋の衝撃にたいし、防御するでもなくその現実を自分達独自の「冊封」観に取り込んでしまうあたりスゲーなーと思いました。

    教科書って感じじゃないのでおもろかったです

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著者プロフィール

1952年、名古屋市生まれ。専攻は東アジア史。現在、早稲田大学文学学術院教授、在日韓人歴史資料館館長。主な著書に『東アジアの王権と交易――正倉院の宝物が来たもうひとつの道』(青木書店、1997年)、『古代東アジアの民族と国家』(岩波書店、1998年)、『東アジア文化圏の形成』(山川出版社、2000年)など。共編著に『植民地近代の視座――朝鮮と日本』(岩波書店、2004年)、『東アジア古代出土文字資料の研究』(雄山閣、2009年)、『いま〈アジア〉をどう語るか』(弦書房、2011年)、『「韓国併合」100年を問う』(岩波書店、2011年)、『岩波講座 日本歴史』(岩波書店、2013‐2016年)、『留学生の早稲田――近代日本の知の接触領域』(早稲田大学出版部、2015年)など。

「2020年 『東アジアのなかの二・八独立宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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