国民国家とナショナリズム (世界史リブレット 35)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (82ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634343504

作品紹介・あらすじ

私たちは今、国境をたやすく越える時代に生きているように思える瞬間がある。インターネット、ヨーロッパ連合、多国籍化した企業やスポーツ…。だが他方で、血で血を洗う民族紛争や宗教対立がいっこうに跡を絶たない。それに国家エゴをむき出しにした、果てしない軍拡競争。国民国家やナショナリズムは近代の産物であり「想像の共同体」にすぎないという説があるが、はたしてそんな単純なものだろうか。近代国民国家形成のあしどりを、今一度歴史にさかのぼって考え直す。

感想・レビュー・書評

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  • “山川の世界史リプレット”シリーズ、なかなか読み応えあります。薄い(80ページ)ので、軽くサクッと読み終えようと思ったけど、頭につっかえて前に進まない。それどころか、いろいろ調べるために回り道をさせられたし、関連本も読みたくなってしまった。
     歴史をこういった、時代の共通の現象的一面を切り取って論考することが歴史を学ぶ楽しみなのだ。
    本来なら、高校の授業はこういった切り口で授業をやるべきなのだろう。

     一冊820円と情報量としては高いようにも思えるけど、情報の質として価値があるので、テーマを決めてまた購入したい。

  • もともと世界史などに疎い私にとって勉強になった。
    ただ、「想像の共同体論」についての記述が駆け足で、具体性にやや欠ける舌足らずだと感じた。また、同論への批判やナショナリズムの実体に関する論述、特に社会的コミュニティに関する筆者の見方(というか視界)が、SNSの普及やコロナ禍を経たこんにちにおいて極めて狭いことに気づいた。
    この筆者自身は、少数者を受容する多元社会への希望、期待を抱き決して捨てないという意志をくみ取ることはできる。しかし、議論の視界というか、社会を論じていく思考の方向性が、繰返し少数を蹂躙し、紛争を引き起こしてきたナショナリズムを必要悪として受容してきた理屈の壁として厳然と存在していることへの絶望というか諦めが見てとれ、挑戦する心を放棄している感じがあり残念である。
    本書の思考回路は、コロナ禍やSNS普及を代表的な端緒とする物理的距離に依存しないコミュニティの形成や、言語障壁のない文化圏の形成が夢物語であった十数年前のパラダイムに依拠している。このパラダイムは、おそらく、主権国家の概念が生じたころから千年以上続いた、ほんとうの意味でパラダイムなのではないかと思う。つまり、この範型と現在模索されている思考の範型(SDGsになるのだろうか?)は相いれず、落ち着き定着したころには相対化することでしか理解されない。
    そういう社会的思考範型と、思考範型の変容に気づくことができ、非常に有意義な読書だった。

  • 311
    フランス・ドイツ・イギリスの近代史を取り上げながら、それぞれの国で国民国家がどのように形成され、歴史的展開をしたか、そしてその特徴はどのようなものか、を本書でえぐり出している。日本とは、そして日本人という概念はいつごろからどうやって生まれたものなのだろう。これを知るには、日本史を学ぶことはもちろん、他の国々の歴史を学びながら比較し、自分の足場を再確認する作業が必要になる。
    (『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)

    私たちは今、国境をたやすく越える時代に生きているように思える瞬間がある。インターネット、ヨーロッパ連合、多国籍化した企業やスポーツ…。だが他方で、血で血を洗う民族紛争や宗教対立がいっこうに跡を絶たない。それに国家エゴをむき出しにした、果てしない軍拡競争。国民国家やナショナリズムは近代の産物であり「想像の共同体」にすぎないという説があるが、はたしてそんな単純なものだろうか。近代国民国家形成のあしどりを、今一度歴史にさかのぼって考え直す。

    目次
    スポーツのなかの国家と国民意識
    十九世紀ヨーロッパの国民国家形成
    国民統合の苦悩
    国民統合のモデル国民国家論をめぐって

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/779455

  • 『世界史の考え方』の内容を深めるために読んだ。ナショナリズムと国民国家の完成の仕方を主にドイツとフランスの視点から書いている。

    ナショナリズムの高揚理由が分かりやすく、近代国民国家を、理解するにはお勧めできる良書。

    また、リブレットなので短期間にスラスラっと読むことができる。

  •  これを登録するのもどうか、とは思うけど。国民国家概念を再確認するべく読んだ。ドイツが歴史的連続性に依拠できなかったから、エスニック概念に頼ったという表記を見て、歴史協会について勉強している自分は途方に暮れた。まあでも、全ドイツ的な意識を持つ歴史協会も、結局歴史そのものというよりナショナルなものを強調していこうとしていたのかなぁ。まだまだ勉強が足らない。

  • 【由来】
    ・「民族とネイション」のamazon関連本。

    【期待したもの】
    ・ナショナリズムについてのシントピカルによさげ。

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • (後で書きます)

  • (memo)
    (P68)
    アーネスト・ゲルナー
    -国民意識やナショナリズムの虚偽性
    「ナショナリズムは国民の自意識の覚醒ではない。もともと存在していないところに国民を発明すること。」

    (P69)
    ベネディクト・アンダーソン
    -想像の共同体がなぜ歴史的実体をもちえたのか
    「ナショナリティとナショナリズムが文化的人造物であることを正しく理解するためには、それがいかにして歴史的存在となったか、その意味が時とともにどのように変化してきたか、そして今日、なぜそれがかくも深く情念を揺さぶる正統性をもつのか、これらを注意深く検討する必要がある」

    (P70)
    アントニー・D・スミス
    ・エスニー
    1)集団に固有の名前 2)共通の祖先に関する神話 3)歴史的記憶の共有 4)集団的独自の共通文化 5)特定の故国との心理的結びつき 6)集団を構成する人口の主な部分における連帯感
    ・国民
    1)歴史上の領域 2)共通の神話と歴史的記憶 3)大衆的・公的な文化 4)全構成員に共通の経済 5)共通の法的権利・義務

    (P72)
    像・碑、国旗、国家 合理的な根拠はいらない
     記憶の動員、伝統の創造
     歴史的体験の共有、文化的類似性という受け皿が必要
     エスニック的で情緒的一体感を醸成するものが望まれる ~ナショナリズムの生命力の根源

    「ナショナル・アイデンティティの第一の機能は、人びとを個人的忘却から救い出し、集団としての信仰を取り戻すべく、協力な『歴史と運命の共同体』を提供することにある」(スミス)

    ◇ナショナリズムとは
    ・国民を一つの親族、一大誓約集団になぞらえる運動。(オリンピックで涙)
    ・宗教にもっとも近い機能
     →ナチズム、自由主義、社会主義、どのようなイデオロギーとも結びつき可能
    ・融通無碍な世俗的民族宗教

    (P74)
    ・グローバリズム拡大のなか、国民国家への帰属意識が相対的に薄れると、より小規模なエスニーや伝統的な宗教的共同体にアイデンティティのよりどころを求める動きが出てくる。(ネット、SNS普及後はより直情的で過激に)

    (P76)
    ・多文化主義は諸刃の剣。論理的には弱者保護の共生原理だが、現実には敵対原理に転化しやすい。
     エスノ・ナショナリズムの温床になりやすい。

    (P77)
    ・エスノナショナリズムの克服、とりわけ宗教的寛容の実現が不可欠。

  • 【版元の情報】
    ISBN:978-4-634-34350-4
    シリーズ: 世界史リブレット 35
    著者:谷川稔=著 
    刊行:1999年1月
    仕様:A5変型判 ・ 86ページ
    価格:本体729円 + 税
    解説:国民国家の終焉が論じられる今日,ドイツ・フランス・イギリスを例として,「フィクションとしての国家」と「現実として国家」を考える。
    https://www.yamakawa.co.jp/product/34350


    【簡易目次】
    スポーツのなかの国家と国民意識 
    1.十九世紀ヨーロッパの国民国家形成 
    2.国民統合の苦悩 
    3.国民統合のモデルと国民国家論をめぐって 

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著者プロフィール

2019年5月現在
京都大学大学院文学研究科元教授

「2019年 『越境する歴史家たちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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