ヴァイキングの経済学: 略奪・贈与・交易 (ヒストリア 13)

著者 :
  • 山川出版社
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本棚登録 : 44
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634491304

作品紹介・あらすじ

北欧の海賊ヴァイキングは略奪者であり、また交易者であったが、故国では農民であった。かれらにとって略奪と交易はなぜおなじ価値をもつのか。不作の年、干し草を買い求めに来た農民が売却を断られ、力ずくで奪った。奪われた人物よりも奪った人物に世論は同情的である。宴と贈与を軸として、ヴァイキング農民の社会生活と誇りがあきらかにされる。

感想・レビュー・書評

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    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    「ヴァイキング」という言葉を聞けば舟で海岸に上陸し、略奪を行うというイメージが定着していると思うが、この本はそのイメージが覆される内容だった。
    ヴァイキングという言葉は行為と人間を指す言葉でそれらの人々の実態はいまいち知らなかったけど、この本を読む限りは農民であり、商人であり、王の従士だったようだ。これらの特定の立場だったわけではなく、従士として活動しつつ交易を行ったり、農場経営を行っている場合でも王からの要請で従士として王に従ったりと並列的だったようだ。
    最終的には戦争や交易で得た利益を元手に農場経営者となるのが一般的だったらしい。
    また、ヴァイキング同士の関係性についても書かれていたが興味深い内容だった。北欧という環境的に厳しい場所で生活していたからだろうか、相互扶助の関係がかなり強いようだ。自らの生命に影響しない程度には助け合い、助けられた側も相応の返礼をしなければならない。また、武力行使は最終手段で言葉による交渉で一方が相互扶助に反する行為を行ったと判断したと時でなければ実行に移せなかったようだ。これだけでもイメージはだいぶ変わるな。
    それにしても「サガ」は散文詩のことだったんだね。「○○・サガ」は○○のサガという意味だったんだね。

  • ヴァイキングの度量衡はどうなっているのだろう…という疑問がきっかけで読み始めた。もの凄く読みやすい本で、かつ彼らの経済的な営みの一旦が垣間見れるので面白い。
    彼らの経済観念(の芽生え)についての記述はもちろんだが、ヴァイキングが略奪のみならず交易行為をも示していたことや、そうして過ごすのが彼らにとっての常ではないことなど、ヴァイキングの意外な価値観について知ることができた、良い一冊だった。

  • ヴァイキングとは略奪行為を指し
    元は農民だったり商人だったり。
    農民というよりは農園で地主とう盟主(豪族頭)とその集団。
    なのでその集団で行商交易にも行き、略奪行為もする。
    当時の略奪は収入源のひとつ。
    そしてそれが当たり前だった世界と時代。

    と参考文献は物語で、そこから紐解いてます。
    なんとかかんとかのサガ
    っていう感じの物語。
    中世前期の蛮族的であることは間違いないですよね。

    ヴィンランド・サガは
    ヴィーンランド(カナダの東部)から来てるのかしら
    ヴィンランド・サガは一巻しか見たことないからもう覚えてないけど

    面白く読めたってことはあまりなかったけど、興味深く参考にはなりました。

  • 日本を代表する北欧歴史学者の軽く読める新書となっている。ヴァイキングは一般の方から見れば、「野蛮」「狡猾」なんて言葉が浮かぶのではないだろうか。しかし、彼らは本来は北欧の「農民」であり、決して傭兵のようなものではなかった。大規模農民の指導の元、ヴァイキングとして航海に出た彼らはどのような生活をおくったのか。つまり経済活動である。本書ではそれについて、彼らの「合理」的な経済活動が面白く書かれている。

  • ヴァイキングの姿について、経済という角度から分析していきます。
    非常に読みやすく、わかりやすいです。
    サガの中から具体例をあげ、検証していくスタイルです。
    サガの該当箇所の訳を丸ごと乗せてくれているので、テキストを読んで解説を聞くという、授業を受けているようなわかりやすさがあります。

    よりリアルで魅力的な、人間らしいヴァイキング像をつかめると思います。
    とてもオススメ!

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著者プロフィール

名古屋大学名誉教授

「2022年 『北欧史 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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