詳説 世界史B 改訂版

  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634708105

感想・レビュー・書評

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  • ひさびさに再読。もう受験勉強ではないので太字語句をむりやり詰め込まなくてもいいのが気楽。各章冒頭の導入部が簡潔にまとまっているので、目次とあわせてよく読み込むだけでも勉強になる。

    今回あらためて気づいたのは、国(とくに古代国家)が興ったり滅びたりする過程にはわりと共通するパターンが見られること。また、交通の本質はモノの輸送。政教分離は近代の産物。

    それぞれの時代や地域において、歴史上の偉人や政治家ではない無数の普通の人びとがどのような世界観・人生観のもとに暮らしていたのか(民衆史・社会史?)をもっと知りたい。

    【雑記】

    ▶国家の興亡

    ・国が興る典型的なパターン:
    大河川の流域で農耕生活 → 治水や灌漑技術の発達 → 都市国家、宗教的な権威を利用した統治

    ・国が滅びる典型的なパターン(領土拡大≒財政難):
    領土拡大 → 軍隊や官僚組織の維持費が増大 → 財政難 → 重税 → 庶民(農民)の反乱 → 国の衰退・分裂

    ・農村や都市での商業活動は国の活力の源。課税をするばかりで、税収源である自国産業の保護・育成をおろそかにすると国は衰退する(ムガル帝国のアウラングゼーブ帝など)。

    ▶交通

    ・交通の本質は「モノの輸送」であり、それは資源や商品を運ぶための営みとして発展してきた(ローマ帝国の道路網、ユーラシア大陸の東西をむすぶ草原の道・オアシスの道・海の道、地中海貿易・インド洋貿易・大西洋貿易、産業革命と並行して起こった交通革命など)。

    ・それにくらべると、人びとの通勤・通学や余暇活動のための移動など、私たちが日常生活で普通におこなっている「ヒトの移動」としての交通は、都市生活への移行と交通手段の発達・普及(鉄道・バス・船舶・飛行機などの公共交通および自動車・自転車)がもたらした、かなり現代的なあり方。

    ▶宗教

    ・政教分離は近代の産物で、それ以前は為政者が宗教を自国の統治に利用することは一般的だった。

    ・信仰生活と無縁のうちに暮らす現代人の感覚からするといまいち理解がおよびにくいが、歴史をふり返ると、どうやら宗教の社会変革力は思った以上に強いようだ(宗教改革、帝国主義下の民族運動と宗教の結びつきなど)。

    【目次】

    世界史への扉
     ① 世界史のなかの子どもたち
     ② 世界史のなかの時間と空間
     ③ 世界史のなかの日本史

    序章 先史の世界

    [第Ⅰ部]

    第1章 オリエントと地中海世界
     1 古代オリエント世界
     2 ギリシア世界
     3 ローマ世界

    第2章 アジア・アメリカの古代文明
     1 インドの古典文明
     2 東南アジアの諸文明
     3 中国の古典文明
     4 南北アメリカ文明

    第3章 東アジア世界の形成と発展
     1 北方民族の活動と中国の分裂
     2 東アジア文化園の形成
     3 東アジア諸地域の自立化

    第4章 内陸アジア世界の変遷
     1 遊牧民とオアシス民の活動
     2 トルコ化とイスラーム化の進展
     3 モンゴル民族の発展

    第5章 イスラーム世界の形成と発展
     1 イスラーム帝国の成立
     2 イスラーム世界の発展
     3 インド・東南アジア・アフリカのイスラーム化
     4 イスラーム文明の発展

    第6章 ヨーロッパ世界の形成と発展
     1 西ヨーロッパ世界の成立
     2 東ヨーロッパ世界の成立
     3 西ヨーロッパ中世世界の変容
     4 西ヨーロッパの中世文化

    第7章 諸地域世界の交流
     1 陸と海のネットワーク
     2 海の道の発展

    [第Ⅱ部]

    第8章 アジア諸地域の繁栄
     1 東アジア・東南アジア世界の動向
     2 清代の中国と隣接諸地域
     3 トルコ・イラン世界の展開
     4 ムガル帝国の興隆と衰退

    第9章 近代ヨーロッパの成立
     1 ヨーロッパ世界の拡大
     2 ルネサンス
     3 宗教改革
     4 主権国家体制の形成

    第10章 ヨーロッパ主権国家体制の展開
     1 重商主義と啓蒙専制主義
     2 ヨーロッパ諸国の海外進出
     3 17〜18世紀のヨーロッパ文化

    第11章 欧米における近代社会の成長
     1 産業革命
     2 アメリカ独立革命
     3 フランス革命とナポレオン

    第12章 欧米における近代国民国家の発展
     1 ウィーン体制
     2 ヨーロッパの再編
     3 アメリカ合衆国の発展
     4 19世紀欧米の文化

    第13章 アジア諸地域の動揺
     1 オスマン帝国支配の動揺とアラブのめざめ
     2 南アジア・東南アジアの植民地化
     3 東アジアの激動

    第14章 帝国主義とアジアの民族運動
     1 帝国主義と列強の展開
     2 世界分割と列強対立
     3 アジア諸国の改革と民族運動

    [第Ⅲ部]

    第15章 二つの世界大戦
     1 第一次世界大戦とロシア革命
     2 ヴェルサイユ体制下の欧米諸国
     3 アジア・アフリカ民族主義の進展
     4 世界恐慌とファシズム諸国の侵略
     5 第二次世界大戦

    第16章 冷戦と第三世界の自立
     1 東西対立の始まりとアジア諸地域の自立
     2 冷戦構造と日本・ヨーロッパの復興
     3 第三世界の自立と危機
     4 米・ソ両大国の動揺と国際経済の危機

    第17章 現代の世界
     1 冷戦の解消と世界の多極化
     2 社会主義世界の解体と変容
     3 第三世界の多元化と地域紛争
     4 現代文明

    主題
     ① 国際対立と国際協調
     ② 科学技術の発展と現代文明
     ③ これからの世界と日本

    付録
     世界史年表
     ヨーロッパ人名対照表
     索引
     世界の自然・世界の気候区
     現代の世界

  • (仮説)
    外国生活リスクの中にはその国の歴史に起因するものがある。その国の歴史に詳しくなればなるほどそうしたリスクを低減できる。

    (仮説)
    異邦人は自分の母国の歴史に詳しい人に好感を抱きやすい。

  • 世界史をやったことはなかったのだが、授業のために初めて世界史をやってみた。市民革命から産業革命などまでの流れをしっかりとつかむことができたので良かった。

    http://www.lib.miyakyo-u.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=213144

  • ワーズワス・バイロン・ターナーとこの辺りに縁がある近頃。ついでにゴッソリ忘却した分のやり直しを兼ねて購入。書店の方が800円程度と断然安かった。永遠の「今読んでいる本」確定。

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著者プロフィール

東京大学東洋史学科卒業、同大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学、早稲田大学で教授を歴任。東洋文庫研究部長。史学会理事長を務める。文学博士。東京大学名誉教授。専攻は、アラブ・イスラーム史。著書に『中世イスラム国家とアラブ社会』『マムルーク』『イスラーム世界の興隆』『イスラームの国家と王権』ほか多数ある。1942~2011。

「2011年 『イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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