心を動かす音の心理学 ― 行動を支配する音楽の力

著者 :
  • ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784636855784

作品紹介・あらすじ

思考力が高まる音楽とは?「居心地の良いお店」の共通点は?音楽家がモテる理由は?脳を活性化させ、異性を引き寄せ、潜在意識に働きかけて行動を導く-・そんな音楽に隠された驚くべき力を、音環境コンサルタントが解き明かす。心理学の視点から考える、「音」との新しいつき合い方。

感想・レビュー・書評

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  • 音楽や、環境音、声、などの「音」にたいする人間の心理的反応や、それをもっと具体的に研究した脳内反応についてのあれこれを綴った本です。前向きさを呼び、悲しい時にはまるで自分をわかってくれるかのようで(同質の原理と呼ばれるもの)、思考や言葉を論理的にし、大きな快楽を与え……などの本書に書かれている音楽の効能については実のところあまり興味は無かったのですが、お店で流すBGMの意味合いなど「行動心理学」の観点からのものが興味深かったです。店内で流すBGMの種類で、お客さんの滞在時間が変わる、商品の売れ行きも変わる、店のイメージも変わる。BGMによるマーケティングはまだ確立されていない手法ということですが、実際にいろいろな作用を人間心理にもたらすのは事実のようですから捨ておけません。現在、これといった手法がないぶん、音楽に対する目の付けどころ(フォーカスするポイント)とセンスで差が出る分野です。

  • 脳の最も原始的な部分(大脳辺緑系)で感情が生まれる。
    この部分はおよそ1億5000年前に人間の脳に備わっていた。
    爬虫類にも備わる生命の根幹。
    食事、性行動、睡眠といった快楽を司る部位。

    従来、音楽を聞くことによって生まれる感情は、進化した「よりレベルの高い脳部位」である大脳皮質の反応と考えられていた。

    ・音楽は文字よりも先に生まれたもっとも根幹的な「文化」
    ・文字を持たない文明はあるが、音楽を持たない文明はない。

    <ダーウィンの性淘汰説>
    静物が遺伝子を後世に残す為には子孫を残す必要がある。
    そのためには、「異性を惹きつける能力」が必要。

    つまり、「モテる要素」は優先的にゲノムにコード化され、モテない要素(生殖に関係ないファンクション)はゲノム的に淘汰される。

    <なぜ、「音楽要素」は「異性を惹きつけるファンクション」としてゲノムに残されたのか?>

    ・原始音楽はメロディーがなく、リズム中心。
    ・リズム->踊り->身体能力->脳
    ・つまり「音楽的資質」=「身体能力」=「狩猟能力」=「経済力(性能可能性が高い)」=「イケメン」

    <フェフリー・ミラーとマーティー・ハセルトンの実験>

    ・上記のゲノムコード(音楽的創造性が異性を惹きつける能力になる)は、現代でも有効か?
    ・(現代語訳)「バンドマンは、冴えない金持ちに勝てるか?」
    ■実験内容

    二種類の男性
    A:音楽性溢れる芸術家タイプ。創造性、芸術性に溢れるが貧乏。
    B:これといった創造的知性を持たないが、リッチ。
    (容貌はA,B共に平均、あるいは平均以下)

    月経周期的に妊娠する可能性の高い女声に上記を選択させる。

    (結果)
    <i><span style="color:#ff0000;">A:の圧勝</span></i>



    <恋愛における「理由」>

    ・人が恋愛感情を持つにいたった論理的理由は存在しない。
    ・理由は後付である。
    ・これは異性を魅力的に感じる脳機能が、大脳辺緑系、つまり「古い脳」に支配されているから。
    ・これと同じように、音楽により感情は「喚起」される。理由なく。


    <聴覚により刺激される感性>

    ・昔、人間は聴覚から多くの生存情報を吸収していた。
    ・個々人が現代の潜水艦のソナー員のように、ノイズから必要な情報をより分けて、推論し、情報を獲得していた。
    ・現代では外部音は遮音され、しかし身近な範囲に音が溢れ、音から推論する感性は衰退している。
    ・それは「人の話を聞く」という行為にも弊害を及ぼしている。
    ・相手の言葉を聞かず、早い段階で「即断」し、結論を出し、反射で対応している。
    ・じっくり人の話を聴く、という姿勢がなくなっている。
    ・生活の中で「音に注意を向ける」というのは、人との対話にも役立つ。

  • 副題が刺激的だけど、言いたいことはわかる(笑)

    BGMの効果についてはいちいち納得はするんだけど、こと私に限っては、仕事中に限らず読書中でも小音でも音楽がかかっているといけない。まったく集中できない。むしろ音楽に集中してしまう。
    カフェなどで友達と話してるときは良いんだけど、美容室やネイルサロンで施術してもらってる時もだいたいBGMに耳が行ってしまって美容師さんとの会話が噛み合わなかったり(笑)
    小川のせせらぎ的な自然の音を好んでいます。(それでも聞いてしまうけど)
    要は、音楽の優先順位が高い人は、BGMは逆効果かもしれない。


    聴覚感性を高めるレッスンはとても良いと思うので実践したい。

  • 《つまらない主観だけ》
    心理学の名を冠しているが、その実はなく、ただ筆者の個人的意見が書かれているだけの本。かといって筆者の意見に独自性は見られず、本当に時間の無駄だった。

  • 心理学ではない。一部,心理学者の研究の紹介はあるけれど全般的には音楽や音に関するコラム(エッセイ)集といったところ。基本的に著者の体験やそれに基づく考えが中心。

  • BGMの起源:1911年頃、アメリカで工場の作業環境改善を目的として、1915年にはエジソンが発明した蓄音機を使用して、たばこ工場で再生テストを行なった。→「録音された音楽」を労働の現場で流した最初の例

  • 2020年10月新着図書

  • vol.270 聴覚感性を研ぎ澄ませ!人間の行動に影響を及ぼす秘密に迫る。
    http://www.shirayu.com/letter/magazine.html

  • 【由来】
    ・森さんの「歌うネアンデルタール」のamazon関連本。しかも池谷裕二推薦。

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • ☆☆☆
    「言葉の力」にはよく共感を覚えて、意識が向いているのですが、「音楽の力」に関してはあまりに無頓着だったので、ここらで「音楽の力」を解明する旅に出てみようと思って手にとった1冊目でした。(孫娘のピアノ発表会の感動から)

    芸術に携わる時間に身を投じている人たちのことばは、なにか柔らかいものがあります。世間ズレしていないというか、周囲からの視線に縛られていないというか、だから読んでいるリズム感も少し違うものがあります。この本の著者齋藤 寛さんは、音環境コンサルなので若干その匂いがしました。

    ・「絵画は空間芸術、音楽は時間芸術」という表現がありました。「視覚」か「聴覚」の違いではなく、芸術が活躍するステージに視点を移した捉え方。なるほど。

    ・音楽は社会的集団を統合したり、維持したりすることに活用されてきて現在に至る。ーー人との結びつきをつくり、単独行動→集団協調行動を促進し、人類を様々な危機から救って現在に連れてきてくれている。(危機にも向かわせてきたが…)

    ・言葉は‘言語野’という脳の一部で処理されるのに対して、音楽は脳全体で処理される。
    ○大脳辺縁系→側坐核ではドーパミンの分泌を促進して「報酬行動」に駆り立てる。
    ○小脳を刺激→リズム感を活性化→良いアイデアを生む身体環境をつくる
    など、知らなかったこと、いい感覚のことばを得た。

    次は『音のなんでも小辞典』(日本音響学会)を読んでみる。
    2017/05/02

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著者プロフィール

フルーティスト。東京藝術大学卒業。第4回日本クラシック音楽コンクール、特別賞受賞。第51回日本学生音楽コンクール東京大会、奨励賞受賞。
2011-2014年ザルツブルグモーツァルテウム音楽院にてマスタークラス受講。これまでにフルートを斎藤幸恵、植村泰一、中川昌三、P.L. グラーフの各氏に師事。京都フランスアカデミーおよびパリにて室内楽をクリスチャン・イヴァルディ氏に師事。主な著作『フルートデュオ名曲集25』『ディズニーソング・デュエットコレクション』『ジブリメロディー集』等。

「2021年 『フルートの響きを豊かにする52の質問~ペーター=ルーカス・グラーフ 舞台裏の哲学~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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