イギリスの歴史: 帝国=コモンウェルスのあゆみ (有斐閣アルマ 世界に出会う各国=地域史)
- 有斐閣 (2000年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784641121058
感想・レビュー・書評
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本書はサブタイトルが「帝国=コモンウェルスのあゆみ」とあるように、通常のイギリス歴史本とは異なりイギリスそのものだけに着目するのではなくイギリス帝国の拡張および衰退に焦点を当てた本です。その意味ではほんの少しですがギボンズの「ローマ帝国衰亡史」に近いイメージを読みながら受けました(ただ後述するようにローマ帝国との共通点はあまり感じなかったですが)。エリザベス1世時代については、国内に関してほとんど記述がなく、むしろ植民地や大陸ヨーロッパでの出来事が中心になっています。イギリス帝国の根っこはイングランドであって、そこからウェールズ、スコットランド、アイルランドと拡張を続け、その延長としてカリブ海諸島やインド、中東、オーストラリアなどの植民地、ドミニオンを増やし続けました。しかしそんなイギリス帝国も、第一次世界大戦あたりを境に影響力を下げ、縮小フェーズへと移行します。
ローマ帝国は地中海を中心に現在のイギリス北部、中東、北アフリカと帝国の領域を面的に拡大しましたが、イギリス帝国は世界貿易が盛んになり始めた時期だけに、インドやオーストラリアなど世界中にとびとびで領土を持ちます。この歴史について改めて本書で読んで、イギリス帝国はローマ帝国と言うよりはベネチア共和国に近い印象を持ちました。つまりベネチア共和国は、本土は小さい一方で、地中海の要衝にとびとびで貿易港を確保しコンスタンチノープル(およびその先のインド)との貿易を確保していたのと同様、イギリス帝国も領土政策が商業と密接に関わっている点で、ベネチア共和国的なところがある気がしました。1回読んだだけだとなかなか頭に入らないので、時間を空けて2回目も読んでみたいと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示