信長と石山合戦: 中世の信仰と一揆

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642074742

作品紹介・あらすじ

一向一揆の最大で最後の戦いとなった石山合戦。信長に惨憺たる敗北を喫した本願寺教団が、この合戦によりさらに発展する理由は何か。中世民衆の心をとらえた一向宗の謎と今まで明らかにされなかった石山合戦の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 1995年刊。著者は東洋大学文学部教授。◆織田信長の最大の敵は今川義元や武田信玄でも、まして足利義昭ではない。それは石山本願寺。従来、民衆による階級闘争や信長の宗教弾圧として捉えがちな石山戦争。本書はこの従来の思考法に再考を迫る。その観点は①織田信長のプラグマティストの面と②一向一揆の内実を史料から解読する点。◇前者につき、撫斬が全ての一向一揆になされたわけでなく(現に石山開城は撫斬でない)、むしろ、民衆保護を果たせない領主・支配者だということをアピールし、支配の正当性を叩き潰すためになされたことを重視。
    ◇後者につき、真宗と一向宗の重なり合いと異質な側面を切り取る。一向宗は漂泊の山伏・琵琶法師・巫女らによる民衆の病気平癒の祈祷から入り込み、講を形成する。確かに真宗とこれら山伏らは深く関わっていたが、元来の真宗教義に無い妖術・霊能を操る者という意味付けが付加されている。支配者層が恐れたのはこの漂泊性と霊能者の側面。ただ、真宗の本願寺派だけにこの一向宗の側面が付加されたのかについては著者自身未解決の問題としている。
    ◆網野善彦の漂泊民・山伏や彼らの宗教の持つアジール性を踏まえ、さらに藤木久志の中世・近世間の断絶性ではなく、連続性を重視する考え方に触発された本書の内容は、従来の史観あてはめから脱却し、実証性とリアリズム、関係者の個別事情の重視という意味で説得力を感じさせる。一向一揆の史的意味を考える上で、そして織田権力の形成を考える上でなかなか読みごたえのある書と感じた。

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著者プロフィール

神田千里(かんだ・ちさと)
1949年東京都生まれ。東京大学文学部卒、1983年同大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本中世史専攻。高知大学人文学部教授、東洋大学文学部教授を経て東洋大学名誉教授。主な著書に『織田信長』(ちくま新書)、『島原の乱――キリシタン信仰と武装蜂起』(講談社学術文庫)、『一向一揆と石山合戦』(吉川弘文館)、『宗教で読む戦国時代』(講談社選書メチエ)、『戦国と宗教』(岩波新書)、『顕如』(ミネルヴァ日本評伝選)など多数がある。

「2021年 『戦国乱世を生きる力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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