ペルーを知るための62章 (エリア・スタディーズ)

著者 :
制作 : 細谷 広美 
  • 明石書店
3.60
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本棚登録 : 29
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750318400

感想・レビュー・書評

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  •  高校入試指導のため,読書の時間がとれなかったが,久しぶりに一冊を読み終えた。ペルーのことを知るには最適な本だと思う。このシリーズでメキシコも読んだが,このシリーズはいい。

     p95〜96
    トゥパック・アマルはキリスト教に改宗させられ、そのうえでクスコの広場で斬首された。この日、クスコの先住民は広場を埋めつくし、屋根という屋根に鈴なりになって処刑を見守った。エクアドルのカニャル系先住民の死刑執行人が刀を引き抜くと、群衆はー斉に悲鳴とも怒号ともつかない叫びをあげ、その響きは大地を揺るがした。これを見たインカば、やにわに右手を頭上にかざし、振り下ろした。そのー挙動だけで群衆は沈黙し、一瞬にして何千人が傾聴の姿勢をとった。想像以上のインカの権威を目の当たりにしたスペイン人は、最悪の事態を予期して肝を冷やした。ところが、そのあとトゥパック・アマルが群衆に語りかけた内容は、誰もの予想を裏切った。自分がこのように斬首きれるのは、子どものころ自分がいたずらをしたとき、母親が、おまえのような者は首をはねられて死ぬがいい、と自分を呪ったためである。おまえたち、くれぐれも自分の子どもにこのような呪いをかけてはならないぞ。そのあとトゥバック・アマルはいとも従順に断頭台にうずくまり首を落とされた。

    (何とも情けない。その程度の考えしか持っていないのだから,征服されてしまうのだろう)

    p263
     現在のペリーワルツの基礎を築いたとされるフェリー・ビィングロ・アルバでさえ,亡くなった時にはニュースにすらならなかった。
    (その人はまったく知らないが,差別というのはこの国にもあるんだと感じた)

    p316
     奴隷は所有主の財産と考えられており,契約労働者であるクーリーよりも大事にされた側面がある。
     ( 奴隷は最低な扱いを受けたと思っていたが,なるほど自分の財産なら大切にするな。現在の派遣労働者も同じか)

    p320
     頼母子講は資金を持ち逃げしないと信用できる仲間の間でしか成立しない。
     ( 日本以外では難しいかも。沖縄で「もあい」が盛んに行われているのは,お互いを信用できるからなのだな)

    p321
     移民国においては,それぞれの民族集団の特徴をうまく表現する言い回しがあるものだ。たとえば次のようなフレーズである。「移民先でその設立・建設を最優先させるものは何か。イタリア人は協会,イギリス人はクラブ,中国人は同郷者会館,日本人は学校」
    (何か理解できますね。さすが日本人)

     p329
     日本語の使用という点に関しては,一世の出身地がどこかという問題が微妙な影響を与える。 (中略) ?沖縄(58%)?熊本(8%) (中略) 圧倒的に沖縄出身者が多く,その家庭内で沖縄方言が使われた場合,家庭は日本語を伝承するための場にはならなかったといえる。

     (沖縄出身は方言を使っただろうね。こんなに沖縄が多いのも初知り)

著者プロフィール

総合研究大学院大学文化科学研究科修了、博士(文学)。
神戸大学大学院教授を経て、成蹊大学文学部教授。
文化人類学。ラテンアメリカ地域研究。アンデスの先住民宗教、文化・社会について研究してきている。近年はグローバル化が進展するなかでの人権概念やシティズンシップ、また紛争後の平和構築や移行期正義について研究している。
【主要著書】
『アンデスの宗教的世界――ペルーにおける山の神信仰の現在性』(明石書店、1997年)、『ラテンアメリカからの問いかけ――ラス・カサス、植民地支配からグローバリゼーションまで』(共著、人文書院、2000年)、『植民地主義と人類学』(共著、関西学院大学出版会、2002年)、『他者の帝国――インカはいかにして「帝国」となったか』(共著、世界思想社、2008年)、その他多数。

「2012年 『ペルーを知るための66章【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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