「一帯一路」時代のASEAN――中国傾斜のなかで分裂・分断に向かうのか
- 明石書店 (2020年1月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750349626
作品紹介・あらすじ
中国の台頭と強国への戦略を象徴する「一帯一路」構想は、東南アジアのみならず世界規模で大きな影響を及ぼしている。急速かつ新たな展開がみられる2010年代前半から現在までを対象に、中国の台頭と米中対峙の最新の側面を見極めるとともに、東南アジア地域へ及ぼす様々な影響、さらに東南アジア諸国やASEANによる対応を分析する。
感想・レビュー・書評
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本書と『教養の東南アジア現代史』は共に2020年前半の出版。ただ、『教養の』では、ASEANの中心性向上を主に述べつつ、挑戦として内部の亀裂(米中関係や南シナ海問題)を挙げている程度だ。しかし本書では、米中関係の変化とともに、東南アジア諸国の「中国傾斜」、分裂・分断の危機、「ASEANの中心性」喪失の危機、を編著者の1人が冒頭から挙げているのだ。書名及び副題のとおり、本書ではより近年の状況に重点を置いているからなのだろうか。
これらは多国間制度を扱う福田論文で特に論じられているが、中国のシャープ・パワーによるASEANの機能低下を指摘する黒柳論文など、他の複数の論文でも同趣旨が意識されている。この傾向が始まったのが2000年代後半からか2010年代後半からかは論が分かれるが。また平川論文と山田論文では、この危機を認識しつつも、前者では日本も含めた言論中心の多国間外交により、後者では非伝統的安全保障協力により、比較的楽観的なようにも読めた。
各国別に論じる第2部では、米中のどちらとも決定的に傾斜しないベトナム、またナジブ政権とその後のマハティール政権で度合いや自主性に差はあれど「中国傾斜」を無視できないマレーシアに、特に米中との距離感の難しさを感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・6F開架:319.2A/Ka53i//K