哲学する赤ちゃん (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

  • 亜紀書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750510118

感想・レビュー・書評

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  • 赤ちゃんのもつ深遠な世界、大いなる可能性を
    科学的なアプローチで説明していく。
    和訳もとてもわかりやすい。

    ただ、項目は分類されて整理されているものの
    様々な実験、立証の話がどんどん展開されていくので論旨を追っていくのが大変で
    なかなか読み進めるには時間がかかった。

  • 普通の小児科学本と違うのは、「赤ちゃん」の科学だけではなく、赤ちゃんとは何かと哲学的にも考察している点。
    赤ちゃんであるとはどのようなことか。
    赤ちゃんを愛するとはどのようなことか。
    赤ちゃんを巡る人生の意味...。

    科学と哲学が絡み合うような内容になっている。
    科学的考察では、赤ちゃんが考えていることについて、確からしいとされていることを整理する。
    哲学的考察では、赤ちゃんを考える観点から、自分たちの意識について、世界を認識することについて、考えさせる。

    私感チックな記載ぶりがいくらか気になったし、もう少し深い記載を期待していた。
    ただ、個人的な興味ジャンルの哲学と小児科学の邂逅としては、とても面白かった。

  • 20ページに及ぶ「はじめに」と言う序文がとても面白い。
    しかし心の問題を取り上げながら、本文ではモノの世界のとらわれすぎていて矛盾を感じる所が多い。
    机上の統計とか効率で自分の考えを証明しようとするあまりに、本質である実態を見失っていることが多いように思う。

    面白い表現としては
    過去は未来に対する対価であり、責任を伴うものである。

    計画し期待を抱き責任を感じるからこそ未来を夢に見魅了されその過程の今に没頭したり逃げ込むことができる。

    フィクションはこうした近い実現を予定する未来よりも、ずっと遠い反事実である。

    心の世界には設定された自然な世界がない。
    願望・感情・信念・信心・禁欲を
    (民主主義・平等主義・平和主義・流儀・約束事)
    これには「不自然」な願望や信念を理解する必要がある。
    (外とつながりたいための苦労と内とつながりたいための苦労)
    その反動が他害と自虐。
    協調性と個性は在る面で対立しているようで、心の面でつながる個性を発揮できる関係性を追求すれば、相手と自分の両方を認め合える協調性を必要とする。

    重複するけれど、この本は心を語りながら確率や統計を持ち出し本物を現実として空想を無益とし、驚いたことにその無益な体験が宇宙を征服することに役立つはずだと言う。
    愛の道徳を産まれながらに持ち合わせていると言う一方で、人間の心が制服を目的にしていると思い込んでいるらしい。
    それはおびえた不安恐怖におかされた心であることに気付いていないようだ。

    シンプルとは単純明快なことで無駄のない洗練された姿で、臨機応変に振る舞って急がば回れだと言うことだろう。

    幼児のゴッコ遊びは幼稚故なのではないと言いながら、年齢とともに増える知識で修正され、世界をより正確に反映し創造力を発達させ正しく学習できると言う。
    (この正しいと言う意味は何を元にしているのだろうか?)
    このことを別の言い方で表現すれば、幼児のもつ無限性による自在な感覚が利害と既得権の都合によってつくられたこの世の暴力的既成概念に脅されて、依存心に支配されて行くことを発達と言い、正しく学習しているとしているのだと言っているのだろう。

  • 赤ちゃんを題材にガチな科学、哲学な本を期待してたらだいぶ違って肩透かしだったけど、これから育児する人には最高の良書と間違いなく言え、それを読んでみたという意味でそれはそれで良かったです。

  • 赤ちゃんといえども、言葉を発しないだけでわれわれと同じように世界のありようを見ている。幼児期における影響は、ともすればこれから先何十年にもわたって個々の土台となるほど大きいものだといえる。人との触れ合い、物の認識、周囲の環境、どれもこれもが赤ちゃんにとっては想像もできないほど多種多様で、それこそがまさに閉塞的で人工的だが、絶対的世界でさえある。子供は適度に放っておくのがいいとはいえ、大人の理屈を押し通すことなく、視線を落として同じ気持ちになって接していきたいものである。

著者プロフィール

カリフォルニア大学バークレー校心理学教授・哲学客員教授。マギル大学で修士号、オックスフォード大学で博士号を取得。子どもの学習と発達に関する研究の第一人者として国際的に認められており、子どもの心が哲学上の難問を理解する手がかりになることを最初に主張した研究者である。子どもがどのようにして他者の心を理解するかに注目した「心の理論」研究の創始者の一人であり、「理論理論(thoory theory)」、つまり子どもは科学者と同じやり方で学習するという説を提唱した。著作には"Words,Thoughts and Theories"(アンドルー・メルツォフとの共著、MIT Press,1997)"The Scientist in the Crib"(アンドルー・メルツォフ、パトリシア・クールとの共著、William Morrow,1999。邦題『0歳児の「脳力」はここまで伸びる』)がある。うち"The Scientist in the Crib"は「サンフランシスコ・クロニクルス」ベストセラー、20ヶ国語に翻訳され、「サイエンス」「ニューヨーカー」「ワシントン・ポスト」「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」などで紹介された。

「2010年 『哲学する赤ちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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