言葉が足りないとサルになる

著者 :
  • 亜紀書房
3.66
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本棚登録 : 236
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750510200

作品紹介・あらすじ

すべてを「ウザい」の一言で済ませてしまう大学生。「いまのお気持ちは?」以外に聞くことができないマスメディア。問題が勃発するたびに口を閉ざす政治家……。日本社会の停滞は、言葉が圧倒的に足りないことが原因なのでは?
こうした閉塞感を打開するべく、「豊かな言葉とたくさんのおしゃべりこそが、これからの日本を救う」と一人のセンセイが立ち上がった。
教育現場、会社、メディア、国会など、さまざまな例をあげながら、日本の現状と未来について語り尽くす。言葉の問題をとおして考えた〈現代日本論〉。

感想・レビュー・書評

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  • 若者同士の会話で登場する「マジで」「ヤバイ」「っていうか」から、インタビューの際によく耳にする「いかがでしたか?」「どんな気持ちですか?」「一言お願いします」といったような画一的な言い回しや言葉のパターン化。こうした現代社会の言語状況に警鐘を鳴らした現代言語論。

    中身の無いなぁなぁな意見でその場を片づけてしまったり、お決まりのフレーズで質問をしお決まりの回答を得て仕事をした気になったり・・・大学生、OL、政治家などたくさんの具体的な例が挙がっているため読めば読むほど耳が痛くなります。そして自分の言葉足らずを思い切り自覚した後は、言葉を幅広く活用することのメリットが綴られています。
    ”現代言語論”と紹介しつつも、本文は終始口語的に書かれているため堅苦しさはなく、まるで岡田氏のぼやきを聞いているかのようにスルスルと内容が頭に入っていきました。

    言わなければ伝わらない。具体的な質問は有益な回答を生む。
    読んだ後は、誰かととことん会話をしたくなります。

  • 日本人にしかできない〜 からのリファレンス。

    話が長くてウゼェと思われたり、周りを巻き込めなくてダサいと思われるの、嫌だから黙って過ごして疲れますよね。でも、抑えるのに疲れるのではなく、正反対に「何でそう思うか」お互い徹底的に知ろうとして疲れようという一冊。多分、上期トップ。

    色んな例が取り上げられますが、一番端的だったのは以下のオシム監督インタビューで、サッカーしてるんだからサッカーの話をしようというもの。

    「今日の試合の感想をお願いします」という、典型的な日本の記者の質問に対して、「なにをお願いするのですか。ここは教会ではないので何かをお願いするのはやめてほしい。私が何かいうのを待つのではなく、まずは記者の皆さんが考えて欲しい。私が逆に聞きたいぐらいだ。私は何が起こったか全部知っている」と答えました。

  • 自分自身も含めて、最近、みんな語彙や言葉数が足りない。
    足りないというか、物事や気持ちを、微細に伝える必要を感じなくなっているのかもしれないと思こともある。
    私自身も、説明したとこでどーってことないから、まあ、だいたいの言葉で濁しとけってことが多々あったりして、反省。
    でもさ、仕事のこととか、親に細かく話したところで、なんの役にも立たないし、むしろ嫌なこと思い出して腹立つし。(これがダメか?)

    非常に共感したのは、スポーツ選手に対する質問のレベルの低さ。
    そして、優秀な選手たちの言葉での表現の豊かさ。

    そういえは、撫子ジャパンの澤選手が、なにかのインタビューで、
    「私たちは、サッカーについて話したいのに、聞かれるのは女の子としての質問ばかり(で、うんざり)」と言っていた。
    もちろん、世界レベルの選手達の、いち女性としての側面も知りたいとは思うが、試合終了直後に投げかけるような質問ではない。
    要は、レポーター達が、まともな質問を出来るほどにはサッカーについて知らないと言うことだ。

    また、言葉や表現の種類を多く知ることにより、感情が豊かになるとも書かれている。これには私も全く同感で、だから、子どもの頃から、良質な表現をたくさん使った絵本や図書に触れることが大切だと信じている。
    大人になった今も、おお!と思うような表現に出会うと嬉しくなってしまう。


    その他、いろいろな角度から、言葉をたくさん使って説明することの効用を述べてくれている。
    なにも、難しい言葉で小難しく話すことを進めているのではない。著者は、昔ながらの商店街の八百屋のおばちゃんの伝える力を絶賛している。

    興味深い一冊に出会えて嬉しい。
    興味のある方は、ぜひ読んでください。

  • 言葉を知ってる事、そしてそれを使う事の重要性!
    とても勉強になりました!

  • ひとつの事実に対して人それぞれの真実が宿る。マスメディアによって踊らされる情報は受け手側の真実へと洗脳する。それほどメディアの力は強く、私たちが峻別するリテラシーの熟練度は学校教育にまで遡る。"真実はいつもひとつ" と豪語するコナン少年はホラ吹きの第一人者であり、初めの関門としてここから現実を見定める鍛練を必要とする。テストに出る言葉だけを鵜呑みにするのではなく、言葉を出来うる限り漫遊することが大切であり、見誤っても良いから発声すると知らなかった世界を体感できる。自らの言葉を己の耳で聞くとわかる瞬間に出会う。そこで知ることがその人の真実なのだ。あらかじめ梱包された真実(もどき)はすぐに飽きる。それが消費社会の真実に気付く。世界はそんな小さな範疇ではないし、言葉は複雑に絡み合っている。"ウケる" "ヤバい" で終えると世界も終わる。

  • 10年も前の本なのか。最近の本かと思った。自分自身の言葉が足らないことを見つめ直したい。もっと豊穣な言葉で子供に語りかけないと、と反省。

  • 3章の「言葉が感情を形成している」とい文章には非常に強い印象を受けました。感情が先で、その中で言葉を選ぶものだと思っていました。

  • サッカー選手のパフォーマンスと言葉の関係を結びつけて論じたあたり、わかりやすくて面白かったな。なるほど、と思う。言葉にするって、実生活をふりかえってもたいへんなことで、ナチュラルなままでそんなに豊富な言葉がでるわけじゃないんだよね。訓練とか知識が必要、というかね。それをただ単にインテリの繰り言とするのではなく、言葉があってこその現実生活、スポーツのパフォーマンス、芸術の達成なのだ、というつながりが、トントントン、と入ってきて面白かった。

     全体的にやや冗長、というか著者の人がノリノリで書いたんだろうなぁというあたりもみられたけど、それはご愛敬だろうね。もっと読まれていい本だと思うけど、そのあたりの削り方かなぁ、なんて、偉そうだね。

    いろいろ参考になった。また読み返したいね。

  • なるほどと思った文章
    「寂しいときは「寂しい」という言葉を使わないで歌を創る、シナリオを書く、そして小説を産み出すというのが人前で何かを見せる者たちの最低限のお約束だった」
    その例として「東京だったョおっ母さん」で説明している。歌詞の中では一言も書いていないが「戦死した兄に逢いに母と二人で靖国神社に来た」ということを、「優しかった兄さん」と「九段」の「桜の下」で逢えるとい表現で示している。「ここが浅草よ。お祭りみたいに賑やかね」という部分は、田舎でひたすら重労働するだけの年老いた母にとって、賑やかな出来事とはお祭りだけであるという、母さんの切なくも慎ましい人生の様相を醸し出している。と言うのだ。
    知らなかった、この歌がここまで豊かな表現で切ない気持ちを表していたとは!

  • 「言葉が足りないとサルになる」かどうかは分からないが、言葉を話そうして使わないと使えなくなってしまう。

    普段からの言葉の使い方しかり、話し方聞き方などを改めるべきかと考えさせる本。

    ゆず(歌手)を好きな人は読まないほうがいいです。笑

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