そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

  • 亜紀書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515441

作品紹介・あらすじ

バージョンアップせよ、これが左派の最新型だ!

日本のリベラル・左派の躓きの石は、「経済」という下部構造の忘却にあった!
アイデンティティ政治を超えて、「経済にデモクラシーを」求めよう。

左派の最優先課題は「経済」である。

「誰もがきちんと経済について語ることができるようにするということは、善き社会の必須条件であり、真のデモクラシーの前提条件だ」
欧州の左派がいまこの前提条件を確立するために動いているのは、経世済民という政治のベーシックに戻り、豊かだったはずの時代の分け前に預かれなかった人々と共に立つことが、トランプや極右政党台頭の時代に対する左派からのたった一つの有効なアンサーであると確信するからだ。
ならば経済のデモクラシー度が欧州国と比べても非常に低い日本には、こうした左派の「気づき」がより切実に必要なはずだ。(ブレイディみかこ/本書より)

感想・レビュー・書評

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  • 経済学者、全員世の中知った気で話す感じほんと嫌。政治家と同じくらい経済学者は信用ならない

  • p80 労働党の方ではブレクジットを選挙戦の争点にしなかった。むしろブレッド&バターイシュー(どうやって飯を食うか問題)と呼ばれる国内問題を争点にしました。そして、その戦略が見事にあたった

    p85 労働者にとっての離脱は、文化的な動機(移民への不満)よりも経済的な動機(生活への不安)が大きかった

  • 面白かった。
    今の野党に経済政策を仕込むより現政権に社会保障制度を手厚くさせるほうがハードル低いような気がする。保守支持層も読むべき。

    2023年4月現在の物価高が始まっている環境でどこまで緩和政策が続けられるのか、緊縮が始まったタイミングが野党の攻め時。

  • このままの世の中でいいとは思っていない。しかし、共産主義はもちろん、社会主義も決して受け皿にはなり得ないとも感じている。なぜならば、この本の帯にあるように、左派は経済を回すことを考えの範疇に入れていないからだ。結局資本主義経済に寄生することを前提に理想論を叫んでいる。まるで社会的な中二病だ。(ついでに言うと国防においても同じことが言える)
    そんな「左派」が経済のことを考えたそうだ。読んでみたが、やはり堂々巡りから抜けられないようだ。本当に困ったものだ。

  • 「左派」論者3名による経済政策論かつリベラル批判の対談書。日本のリベラル派を、経済成長政策を疎かにしてきたと批判し、文化的・制度的な面での公正性を重んじるだけでなく、「明日どうやって飯を食っていくか」に直結する経済政策もちゃんと考えろと指摘している。この本を読むことで、リベラルを自称し人権を重視し・・・と考えている人が、自分の視野の狭さに気付かされるかもしれない。僕はそうだった。

    対談の著者は三名。①『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で有名なイギリス在住の文筆家、ブレイディみかこ。②マルクス経済学を専門にする立命館大学の経済学教授、松尾匡。③理論社会学でメディア史を専門にする東大大学院教授、北田暁大。戦後史、経済理論史、時事問題(ブレグジット、ギリシャ危機など)を幅広く取り上げつつ丁寧に説明しており、我々はどこからきて、今どこにいるのか、そして今後どこへゆくのかの文脈について、整理することができる。面白い。

    また、この本を読んで感じたのは、経済政策を評価(立案・投票などすべて)するとき、私たちはどんな社会(国)作りがしたいのかをそもそも考える必要があるということ。
    税金の使い道についても、税の累進性の政策の是非についても、結局何がしたいのかの目的に紐づけて、メリデメを評価する必要がある。
    ついては、日本にそういった明確なビジョンがあるだろうかと思うと、色んな政治家がビジョンを出していることにようやく気づく。また様々な政策研究会議においてビジョンらしきものが提示されている。
    「株式会社ニッポン」があるとしたら、世界市場でどんなポジションで、どういうミッション・ビジョン・バリューを持ってやっていこうとしているのか、もっと明確に理解していきたい、、、

    本書が重要だと思えるのは、現実主義的な語り口だからだ。ライツ・トーク(rights talk)と呼ばれる、人権をベースとするリベラリズムの考え方(とくに、rights as a trump *人権の切り札性)の理想主義的な部分を認め、それだけで物事を判断しきれない、また政策として不十分な部分を解消するために、適切な経済成長や、適切な財政出動を推奨しているからだ。

    一方で政策論はそれとして、その政策を実現するためには民意を動かしていく必要があるが、その民意が分断されている(=ソーシャルアパルトヘイトの)現状で、どう人々が交わっていくかについては、この本のスコープではカバーされていない。「リベラル」な自分が本当のところ「左派」になれないのは、この分断を作っている一員だからだと感じるが、これを乗り越えるために何ができるのか、強い課題意識を持った。

  • 当時はよくわかっていなかったのだけど、野田政権の消費税増税、緊縮によって民主党政権に対してかなり悪いイメージがついたのだろう、とわかってきて、どうやって自公政権を倒せるのか考えていてたどり着いた本。
    安倍政権は、改憲のために国民の機嫌取りの経済政策に力を入れた、というのをみて自民は上手いなあと思う。
    難しい部分もあったので、また歴史なども勉強して読み直したい。

  • 「経済成長」という言葉がさしている意味が2種類あるということ、「アベノミクス」の第1と第2の矢という政策が反緊縮財政だったということ、金融緩和と金融市場の規制緩和を勘違いしている人がいるということ、ポピュリズムとポピュラリズムを勘違いしている人がいるということなどなど、これらすべてを知らず、勘違いしていたのが自分だったのか~…っていうことが分かった(ような気がした)。

    また、「国の借金のせいで国民が苦しんでるならその借金を踏み倒せ!」という立場も分からなくはないが正直、「ちょっと過激だな」と思っていた。そこへ「インフレが進んだ時に民間に売ったり、借り換えを停止したりする一部の国債だけ返済が必要だ」という1文が付け加えられているのを初めてみたような気がして、安心したような、自分の中に勝手な落としどころが見つかったような気になった。

    まだまだ分からないことが多いけど、とても興味深く読めました。

  • 岸田内閣が発足し総選挙が行われることになった。岸田内閣に期待すること、あるいは、衆院選の論点として考えるべきこと、という内容で、日本経済新聞が朝刊に連載をしているが、今日の朝刊のテーマは「成長か分配か。まずは成長を優先すべき」という内容のものであった。

    本書は、ブレイディみかこさんと、経済学者の松尾匡氏、社会学者の北田暁大氏の対談で構成されている。発行は2018年5月のことなので、今から3.5年前のことであり、岸田内閣はもとより、菅首相の前の安倍首相、経済政策で言えばアベノミックス時代の発行である。
    本書の大きなテーマの一つは、書名にもなっているが、日本の左翼・左派に対して疑問を呈する、というものである。
    経済だけが大事なことでないことは言うまでもなく、経済以外にも大事なことは山積していることも言うまでもない。ただ、私は、経済問題は現代の日本の大きな問題の一つだと思う。格差問題、あるいは、日本にも貧困層が生まれており、その格差や貧困は世代間で受け継がれる、要するに固定化・階級化しつつある、ということは、かなり以前から指摘されており、解決すべき政治的イッシューであるはずだ。
    この問題へのアプローチには2つある。1つは経済成長が大事だとするもの。日本の1人当たりGDPはバブル崩壊以降、ほとんど増えておらず、今やそれを指標とすれば、日本は既に世界で最も豊かな国の一つとは言えなくなっている。これは事実であり、日本全体が豊かにならない限り、国民に所得として行き渡る原資はないのだから、まずは経済成長を優先させようとするアプローチ。冒頭に記した今朝の日経新聞の論調である。
    もう1つのアプローチは、分配が大事だとするもの。格差があるのであれば、格差を均せば良いではないか、というアプローチである。富裕層への課税を強化したり、あるいは、大企業への課税を強化し、そこで得た原資を、例えば医療費や介護費や貧困世帯への援助に回そうとするものである。
    本書でのブレイディさんをはじめとする3人の方が感じている違和感は、日本の左派が「経済」について語らないということである。日本の左派は、例えば環境問題、原発問題、等についての主張が多く、そのこと自体は何の問題もないのだけれども、日本の大きな問題の一つである「経済問題」、特に、如何に日本の経済を成長させるかについては、ほぼ語るところがない。なかんずく、不況時の重要な経済政策の一つである政府支出について、国の財政均衡(要するに国の借金は良くないことなので、単年度の国の税収と支出をバランスさせましょうという考え方。政府支出を減らすことは、GDPを減らすことに繋がる)を優先させる考えを左派がとる(民主党政権時代の「事業仕分け」は皆さん記憶に新しいと思う)のは、ほとんどあきれるという内容である。

    「成長か分配か」という、ものの考え方では何も解決できない。正しくは、「成長も分配も」であると私は思うし、本書の主張も同じ。日本の左派が「分配」については語るが「成長」について語らないのは、政治家としての一種の責任放棄ではないか、と私も思う。
    本書の主張に同感だ。

  • 「年収1000万円以下所得税免除」「消費税5%」=某野党の公約。本書が出された2018年からは大きな進歩。しかし、「プライマリーバランス」は”凍結”で、「消費減税」は時限的。両方とも廃止でよいではないか?英国でも労働党ブレア政権が緊縮だったが、現党首コービンは反緊縮で票を伸ばした。他の欧州各国も似たような動き。レフト2.0から3.0への進化とされる。米国で労働者の票を逃したクリントンに学んだバイデン政権。安倍一強に学べない野党。理想の啓蒙よりも目の前の暮らし。まだまだ本書に手にして欲しい左派がいる。

  • ちょっと難しかった。拾い読み。

    ブレイディ:左派とは本来、社会構造の下敷きになっている人々の側につくものであり、不公平は不可避だという考え方を否定するものではなかったか。
     ハニス・バルファキス「誰もがきちんと経済について語ることができるようにするということは、善き社会の必須条件であり、真のデモクラシーの前提条件だ」これがトランプや極右政党台頭の時代に対する左派からのたった一つの有効なアンサーであると確信する。この対談は二人の学者から多くの貴重なことを教えていただいた時間の記録だった。
     左派の人がイデオロギーばかり唱え経済にあまり言及しないのに違和感を持っている。育った家庭が経済的に苦しく、高校は遠方で中学を出たら働けという母に対し、定期代は自分で出すから行かせてといった高校。アルバイトをすると、今時定期代も出せない家は無い、と担任に言われる。そういう経緯から、まずは経済だ、という考えを持つブレイデイ氏。
    北田:きっと担任は本当に嘘をつかれていると思ったんでしょう。背景の生活感が大切。
    ブレイデイ:その時に私はUKの音楽を聞いて(15歳だと1980年)「ワーキングクラス」というのが英国にはあるらしい、わたしもワーキングクラスなんだって思った。それでいつか本当にワーキングクラスのいる国に行こうって決めた。

     保育士になる前にはロンドンでフリーの翻訳をやりその時投資・金融関係の翻訳をけっこうやったという。英語の日本語訳も適切な語で訳す必要があるという。

    もはや「右」対「左」の時代ではなく、今は「下」対「上」の時代。「移民や難民を受け入れる多様な社会政策というものは、緊縮とは絶対に両立しない」(ヤフーニュース・2015.9.7 欧州の移民危機:人道主義と緊縮のミスマッチとする文を書いた)

    あとがきにかえて
    松尾匡:経済学者:日本に左派の反緊縮運動を!

    北田暁大:社会学者:ソシャル・リベラリズムの構築に向けて 日本語訳は何?

    2018.5.1第1版第1刷 図書館


    2018.6.3NHKAM著者からの手紙
    2018.6.16当初登録

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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