詩集 愛について

著者 :
  • 亜紀書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516424

感想・レビュー・書評

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  • 初期の頃の言葉の純度は薄れてしまったような気がして
    それが、なんだか残念な気がして
    36なんて言わないで。
    30くらいで凝縮したら、もっともっと、純度が高くなって。眩しくなったのに。少し。残念。

    でも、それくらいの暗がりと眩さなら、私は深い場所で、見てきたよ。たとえ実際に、体験してはいなくとも。

    若松氏はパーソナルな体験が詩に乗ってくるから、きっと、それらに意味はあると思うのだけれど。

    でも、言葉の贈り物で見た、眩い言葉を、私は欲している。


    ―――――――

    彼は綴る
    愛とは生きる中に含まれていると

    真実とは
    強さの中で輝くのではなく
    弱さの中で煌めくと

    その時祈りとは
    光に似ている

    救いとは
    生き抜いた先に光る星のようだ

    試練さえも
    幸福に変える

    永遠とは
    過ぎた時の中にあったのだと

    哀しみが言葉を生む

    時は蘇らない
    それはしまわれている

    忘れ得ぬ時は
    一瞬の 奇跡のようだ

    哀しみは 止められない雨のようだ

    防ぐ手立てがなく
    降り注ぐままに
    打たれるしかない

    写真の中に真実のあなたはいない

    真実の姿は
    照らすものをも
    美しくする

    哀しみは
    いつしか優しさに
    そして捧げられる

    失われたものは
    星のような時間差で
    感じられる それは残像のようだ

    夢の中にしか あなたはいない

    愛が その影に
    哀しみを投げかけていく

    まだ本当の愛に
    私の心は届いていないのかもしれない

    そして影が濃くなるならば
    光は眩くなる

    桜が目にした 雪のような

    独りの時間の 奥に眠る思い出と共に
    私はある時
    決して 独りではない

    その隔たりをも
    愛は超える

    幸福に辿り着くまで
    流れ星のように

    存在する意味を携えて

    魔法の箱を
    愛が開ける

    愛に出会うということは
    真実の私に辿り着くことだった

    しかし愛した人の不在は
    全ての意味をかきけしてしまう

    あなたはこの世界そのものだったのだ

    時の隔たりを
    越えられるように

    私は祈り
    詩を綴る

    言葉は愛によって
    命を吹き返す

    あなたが私に残ったように
    私は誰かに残していけるだろうか

    永遠に消えない
    光のように

    • りまのさん
      大野弘紀さんの言葉は、何度も、読み返したくなります。
      大野弘紀さんの言葉は、何度も、読み返したくなります。
      2020/11/10
    • 大野弘紀さん
      〉りまのさん

      ありがとうございます。もしよかったら
      こちらにいくらでも言葉がありますから
      もしよかったらどうぞ。

      https...
      〉りまのさん

      ありがとうございます。もしよかったら
      こちらにいくらでも言葉がありますから
      もしよかったらどうぞ。

      https://profile.ameba.jp/me

      https://twitter.com/poet_ohno

      2020/11/30
  • とてもとても素適な詩集。
    どの詩も心に静かに染みいります。何度も繰り返し読んで、言葉をゆっくりと味わい、その詩が詠っていることに思い巡らすなら、なんとも贅沢な時間を過ごすことができます。
    装丁もとても素適。
    図書館で借りたけど、購入。友人にもプレゼントをするつもり。

  • 愛することに理由はいらないし、
    信じることに理由はいらないよね。(合唱曲の信じる)

  • 著者の悲しみの秘儀がとても好きでこちらも。
    巧みさやあっと驚くものはない
    詩の技巧は凡庸
    ただ切実さと現実感がある
    血が通っている詩だとおもう
    装丁が美しい

  • 美しい装丁と心に響く言葉
    大好きな一冊で、ブックカフェで見かけた時に惹き込まれ一気に読みそのまま購入した


    最近パートナーと結婚式を挙げた自分には「受苦」がとても刺さった

    「楽しいことはもちろん、悲しいことも共に分かち合いたい そして共に苦しめるようにもなりたい」

    「愛しみ」と書いて、「かなしみ」と読む
    失い愛しを知り、より深く愛することになる

    まさに愛とはなにか、愛する方法を教えてくれる

  • 若松英輔さんの詩集2冊目。タイトル通り、愛がテーマの詩集。とても素敵な詩集でした。愛する人がいるから喜びや幸せを感じ、また悲しみも苦しさをも感じ得る。『愛しみ』と書いて『かなしみ』と読む。これは愛の本質を端的に示していると思う。愛する人との別離はそれこそ半身を捥ぎ取られるように辛く、苦しい。喪失は激痛となって胸を貫く。だけれどもそれはその人を深く愛し抜いた証拠なのだ。見方を変えれば、その激痛は『愛しみ』に染まった幸福な痛みではないだろうか。いつか喪うことがあっても、誰かを心から愛せることはとても幸せなことだと思う。

  • 何気ない言葉の連なりなのに
    想う人への愛おしさ、引き裂かれた苦しみ、その人の得難さが切々と痛いほど伝わってきます。
    だからでしょうか、愛する事の豊かさを教えてくれた気がします。
    装丁も丁寧に美しく作られていて宝物のような本です。

  • 詩集。

    共感が多く、素敵な詩集。
    きっと恋愛や人間関係等がうまくいってないと、ボロ泣きするかも。笑
    今は心穏やかに読めた事に幸せ^_^

    あなた、定義3、奇蹟、花束が特にお気に入り。

  • 『光』が特に良いと感じた。

  • まだ、わからない境地もある。
    でも、染み入る。
    装丁も、美しい。

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著者プロフィール

1968年新潟県生まれ。批評家、随筆家。 慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選、2016年『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会)にて第2回西脇順三郎学術賞受賞、2018年『詩集 見えない涙』(亜紀書房)にて第33回詩歌文学館賞詩部門受賞、『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋)にて第16回角川財団学芸賞、2019年に第16回蓮如賞受賞。
近著に、『ひとりだと感じたときあなたは探していた言葉に出会う』(亜紀書房)、『霧の彼方 須賀敦子』(集英社)、『光であることば』(小学館)、『藍色の福音』(講談社)、『読み終わらない本』(KADOKAWA)など。

「2023年 『詩集 ことばのきせき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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