種をまく人

  • あすなろ書房
3.79
  • (46)
  • (57)
  • (69)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 581
感想 : 76
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751518052

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1997年 原題”Seedfolks”
    アメリカ・オハイオ州クリーブランドが舞台。
    移民としてアメリカにやって来た様々な人種が混在する様子がいかにもアメリカらしい。

    種をまく、その小さな行動から本人に、また周辺の人々に少しずつだが変化が起こる。その過程を淡々と描いていて、それがかえって愛おしさを感じる。

  • アメリカ北東部オハイオ州の工業都市クリーヴランドにあるごみ溜めの空き地を舞台に、貧民や移民や黒人の厳しい生活と輝かしい希望が描かれたフィクションの小説です。
    アパートの間にゴミの不法投棄場所と化した空き地があり、アジア人の少女が豆を密かに植えることから物語は始まります。
    コンクリートジャングルのど真ん中、人知れず野菜を育てる少女の周りには年齢や人種と問わず様々な人々が集まります。
    生まれや育ちは関係なく、先ほどまで他人だった者がちょっとしたことで会話をするようになり、そして何事にも協力し合える仲間となっていきます。
    小さな区画でのお話ですが、スケールを地球規模に変えたら不可能なことでしょうか。
    本来あるべき人間の姿が、ここにあるように感じました。

  • 空き地の土を掘り返して耕し、種をまく。
    水やりしたり雑草を抜いたり肥料をやったり。

    初めは9歳の女の子が亡くなった父親を思い始めたこと。
    きっと大きくなる。
    ぜったい大きくしてみせる。
    そんな少女のささやかな願いはやがて様々な人達に繋がっていく。

    生まれた国も違う、肌の色も言語も年齢も。
    けれどみんなの願いは一つ。
    芽が出て葉が伸び、花が咲き種ができる。
    その種をまた土にまく。
    次の年も、また次の年も。
    そうした自然の繰り返しにより、みんなの畑は集いの場となる。

    忘れてしまっていた大事なことを、じわりじわりと思い出させてくれるような、清々しい気持ちになれた。
    2020年初読み本。
    年の始めに相応しい心温まるお話だった。

    「どうにもならないことを一日じゅう考えているより、畑をつくるほうがよっぽどましだ。髪の黒いあの女の子に、それを教わったんですよ」

  • 温かい気持ちが根付いた。

    年齢、人種が違うのはもちろん、様々な境遇の種を心に持つ人たちの語りで紡ぎ出される物語。

    それぞれの心の畑が耕され種が希望へと芽吹いていくような語りは読めば読むほど心地よさ、温かさで満たされていく。
    誰かの些細な行動が誰かの心を動かすこと。
    見ず知らずの人同士が一つの場で出会い自然に挨拶、会話が生まれ、絆も生まれ、また次へのステップへと繋がること。
    畑に限らずそういう拡がりはそこかしこにあって欲しい。

    読後は確実に心に温かい気持ちが根付いた。読んで良かったなと素直に思える作品。

  • この本もフォローしてるお二人の方の本棚を拝見して、あ!この表紙学校図書館にある!となり、そして、レビューを読ませて頂いて早速読まねば‼︎と手に取った。
    皆さまのレビューに、読書の幅を広げて頂いております、感謝しかありません。

    この本は第45回(1999年度)青少年読書感想文全国コンクールの中学校の部の課題図書だったようだ(使われていない応募用紙が挟まったままだったので…一体何年眠っていたのか…)。

    95ページと短い話だが、ギュッと濃縮されたいくつもの人生の断片を読むことができる。

    アメリカの東北部オハイオ州、大統領選の際によく耳にしたラストベルトと言われる地域が舞台となっている。
    移民の国アメリカ。皆アメリカ人という大きな枠組みの中にいるけれど、それぞれの人種や民族に自らカテゴライズされて生活している様子がよくわかる。
    時代とともに、移り住む人々(人種や民族)も変わる、それは政治的な背景を色濃く写しているのだろう。

    そんな地域でゴミ捨て場になり、悪臭を放っていた一角に、ベトナムから移住してきた少女が、自分が生まれる前に亡くなった父に思いを馳せて、豆のタネを撒く。
    それをアパートの窓から毎日のように見ていた老女(かつてルーマニアから移住してきた?)が、ある日行動を起こす。
    その善意の行動の輪が広がり、ゴミ捨て場は緑あふれる畑へと姿を変えていく。
    場所だけでなく、人々の心も徐々に変わっていき、地域の緩やかな連帯が生まれていく…。

    一人一人が、その人生を自分に語ってくれているようだった。短いのに、アメリカという国のあり様が伝わってくる。一人の少女の小さな行動からもたらさられた変化に心が暖かくなった。2020.1.10

  • 小中学生の頃に何度か読んだことがある本書。
    今回は原著を読んでから読みました。

    舞台はアメリカ、クリーヴランドのスラム街。
    ゴミ捨て場となっている空き地の一画に、1人のベトナム人の女の子が豆の種を植えました。
    それをきっかけに、この空き地にさまざまな人が関わるようになります。
    自分も野菜を育て始める人、ゴミの撤去のため役所に働きかける人、ここに集う多様な国籍・バックグラウンドを持つ人々の架け橋となろうとする人…
    いろいろな人の視点から、空き地がみんなの畑に変わり、人々のあいだに連帯感が生まれていく様子が描かれていて、読後に明るい気持ちになりました。

    多様であるがゆえ、善意だけで動いている人ばかりが集うわけではないこともリアルに描かれています。
    作物を売って商売をしようと、親類に頼まれたと嘘をついて1人で広い面積を占有しようとする父の姿を見た少年の気持ちを思うと胸がぎゅっとなります。
    でも、そんなずるをもゆるやかに抱きとめる共有地の在り方に心地よさも感じたのでした。

    個人的には、16歳で望まない妊娠をした少女が、畑での交流の中で"自分も自然の一部"だと気付く場面がとても好きです。
    「あたしの赤ちゃんなんて死んじゃえばいい」と思っていた彼女ですが、この気付きを経て、きっと赤ちゃんと違う気持ちで向き合えるようになったと思います。
    どうか彼女と彼女の赤ちゃんの人生が幸福でありますように…と祈らずにはいられません。

  • John Lennonの“Imagine”を聞いたときのような感覚に包まれた。

    この本の物語は、ヴェトナム人の9才の少女が、近所のごみだらけの汚い空き地に、本国でお百姓だった亡き父の姿を追いたいと考えてライマメを蒔いたことから始まった。
    少女は裕福でなく、母や姉たちと違い、自分が生まれる前に亡くなった父の面影すら持たない。
    でも精神的な成長が芽吹いてきた少女にとって、ただひとつ自分の中にたしかに持っていたものがあった。
    -想像力-

    でも想像力だけではマメは芽を出さないし育たないって?確かにそう。だけどそう言い切ってしまうのは想像力が足りないな。
    この本では、1人の想像力が別の人をひきつけて繋がっていく過程が本当にうまく書かれている。
    この本を読んだ多くのアメリカ人は、自分たちの国が多くの国の人たちの想像力の結びつきによって形成されてきたという歴史的事実を思い出したんじゃないかな。

    そんなことを考えながら“Imagine”の最後の節を聞く。やはりこの物語にぴったりだ。

  • 意図しない行動が誰かの心に種をつけ、芽吹いた花は、また誰かの心へ種をつける。
    例えそれが良い行いでも悪い行いでも
    きっと種の形は変わらない
    綺麗な花にするための土と水を心に広く持ち合わせたい

  • 言葉が通じない多民族の街で、小さな切っ掛けから荒地が一日一日と菜園に様変わりしてゆく、皆に連帯感が生まれ仲間になってゆく様子に、言葉なくともコミニュケーションは成立することを改めて感じた。
    登場人物各々の想いを理解することは出来ないこともあったが、温かい気持ちになり読了。

  • 心が温かくなりました。自然界のものは、お日様と雨と季節でうごいてる。人も同じ❗️地球上の人たち皆んな同じはず

全76件中 1 - 10件を表示

ポール・フライシュマンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×