絵本・名人伝

著者 :
制作 : 中島 敦 
  • あすなろ書房
4.00
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本棚登録 : 48
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (36ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751528433

作品紹介・あらすじ

むかし中国に、天下一の弓の名人になろうと決意した若者がいた。若者は弓の名人に弟子入りするが、言い渡された修業は、「まばたきをするな」。ただそれだけの奇妙なものだった。以来、男はまばたきをせずに2年を過ごした。眠っているときでさえ、その眼は大きく見開いたままだった。
やがて、若者は師をしのぐほどに成長し、さらなる奥義をもとめて西へと旅立つが……。

名人とは、道をきわめるとは、いったいどういうことなのか?
「山月記」で知られる中島敦の傑作短編を、画家の小林豊が絵本化!

感想・レビュー・書評

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  • 「山月記」のついでに読んだという私のおぼろな記憶が、この絵本でありありと蘇ることになった。挿絵は「せかいいちうつくしいぼくの村」で有名な小林豊さん。
    いつもの画風とはまるで違い、原作の緊張感や古代の雰囲気をとても良く表わしている。

    お話の舞台は紀元前。日本で言うなら弥生時代。
    中国の春秋時代の邯鄲(かんたん)の都での話だ。
    弓の名人を目指す若者・紀昌は、達人の元で5年間学ぶことになる。しかし野心に燃えた彼は、師匠に向かって弓を射ることに。

    前半は、さすが中国!と失笑する場面が続く。
    一事が万事大げさで「2年間まばたきをしなかった」とか、「3年の間1匹のノミを見続けた」とか。ところが中盤から展開は変わり、終盤はもはや哲学の様相を帯びる。
    山の上で9年間修業をした紀昌のその後は、驚きとも拍子抜けとも言える。
    弓の名人を目指したはずが、これは一体?

    弓の名人とは、弓を持たず戦わず、ということなのだろうか。
    一切の武具を持たず、その使い方も知らない。
    それが平安ということなのだろうか。辛い修行に耐えたのだから、さぞかし凄腕に成長したのだろうという読者の予想が、こんな形で裏切られるとは想像だにしなかった。
    道を極めるとは、その奥義とは、考えずにいられない。

    中島敦がこの作品を世に出したのは1942年。戦争中の緊迫した時節だった。
    そしてその同じ年に、持病の喘息を悪化させて亡くなっている。
    漢文調の格調高い文章と、無駄のない整然としたつくり。
    この傑作を、どう読み解くか。
    出来るなら高学年以上の子たちに読んで、その後の話し合いを楽しみにしたい。
    約15分。もちろん大人の皆さんにもおすすめ。

  • 名人は何を得たのだろう。
    物に頼っているうちは名人とは呼べないということだろうか。

  • うむ…名人とは…
    作者中島敦がパラオ

  • 子どもの読み聞かせに。
    絵本に出来るほど短い話だったんですね。
    5歳児は、絵も話もカワイイ要素がないから早々脱落。
    8歳は、どんな展開になるのか興味を持って、結末には、えーー?!と。
    多分いつか授業などでまた触れるんじゃないかな。なんか前読んだことある、と思い出せたら良いな。

  • 「むかし中国に、天下一の弓の名人になろうと決意した若者がいた。若者は弓の名人に弟子入りするが、言い渡された修業は、「まばたきをするな」。ただそれだけの奇妙なものだった。以来、男はまばたきをせずに2年を過ごした。眠っているときでさえ、その眼は大きく見開いたままだった。
    やがて、若者は師をしのぐほどに成長し、さらなる奥義をもとめて西へと旅立つが……。

    名人とは、道をきわめるとは、いったいどういうことなのか?
    「山月記」で知られる中島敦の傑作短編を、画家の小林豊が絵本化!」

  • ふむ

  • 原作の中島敦にひかれて読んだ
    この著者 アフガニスタンの村などを描いている人だ
    ずいぶん画風が違っている
    新しい境地でしょうか?
    それにしても名人の神技とは?
    これは子供に向けたメッセージでしょうか?
    凡人の私にはわかりません

    ≪ 行く先は 修行の歳月 何射抜く ≫

  • 中島敦の短編の絵本化だということ。どうりで子供っぽくない内容なわけだ。

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著者プロフィール

1946年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業後、イギリス留学中に画家を目指す。1970年代初めから80年代初めにかけて中東やアジア諸国をたびたび訪れ、その折の体験が作品制作の大きなテーマとなっている。 主な作品に、『せかいいちうつくしいぼくの村』、『ぼくの村にサーカスがきた』、『えほん北緯36度線』、『えほん 東京』などがある。

「2021年 『海峡のまちのハリル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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