秘密の大作戦! フードバンクどろぼうをつかまえろ!

  • あすなろ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751530771

作品紹介・あらすじ

おなかをすかせた人たちを救ってきたフードバンク(食べ物銀行)。そんな世界でいちばんすばらしい銀行が、悪いやつらにねらわれているらしい。ネルソンたちは、子ども探偵となってひそかに調査をはじめるが…。

感想・レビュー・書評

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  • 読書感想文コンクール課題図書 中学年の部
    https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html

    食事を取ることができない家庭のためにある「食べ物銀行(フードバンク)」を利用するネルソンの家庭を通して、食の貧困問題や、自分たちができることを考えるようになるお話。

    カラッとした語りの裏に、ネルソンの一家の深刻な状況が読み取れる。
    ネルソンの家庭は、父親が家庭を捨てて出ていったために経済貧困になった。ママは定職があるようでまだ良かったが、一日中働いても家賃や公共費などでいっぱいいっぱい、どうしても食事が足りない。ネルソンとアシュリーの兄妹で一枚のトーストを半分ずつの夕食という生活になってしまう。

    ネルソンたちが利用しているのは、食事が足りない家庭への「フードバンク」と、学校の「朝食クラブ」。
    フードバンクは、スーパーマーケットのお客さんが寄付するつもりで買った食べ物を所定の場所に置かれているカートに入れていく、というもの。フードバンクの担当者がスーパーを回ってカートを回収する。「引換券」を持っている人が、フードバンクに行き、寄付された食料を持ち帰る。
    学校の「朝食クラブ」は、食に困っている家庭の子供が、シリアル、フルーツ、飲み物を食べることができるという場所。

    小説でのネルソンたちは、明るく楽しく、ご飯が足りないこともゲームにしているため、深刻な状況でも湿っぽい感じはしない。
    フードバンクでもらってきた食べ物でごちそうが作れるか?目の前の粗末な食べ物を豪華なごちそうだって思うには?
    ママは優しいし、ネルソンは「ぼくが働いて必ず家族を楽にする」と決意している。でもやっぱり友達にいつもお腹をすかせていることを知られるのは恥ずかしい気持ちがある。

    友達はネルソンの状況をなんとなく察している。イギリスではフードバンクのカートなどが当たり前に置かれているということで、「そんな人がいる」ということが分かっているのだろう。しかしネルソンが恥ずかしいという気持ちもわかるので、はっきり「あげる」とは言わないのだ。「ぼくこれ嫌いなのに(本当は大好物)、ママがいっぱい買ってきちゃって、困ってるんだ」「朝ご飯食べすぎてお腹いっぱいなの。これ食べてくれない?」などと食べ物を分けようとする。
    この友情もとても良い。一度ネルソンが「憐れむのはやめてくれよ!」と爆発しちゃうんだけど、それを聞いて「ぼくたち、悪いことしちゃったかな?」と余計に気を使ってくれる友達だ。
    そんな友達だから、ネルソンも自分の困窮を相談することができるようになる。

    話のクライマックスは、ネルソンと友達でフードバンクどろぼうを捕まえるところだ。
    「最近スーパーのフードバンクカートの食べ物が少ない、盗まれているのではないか」ということ。ネルソンの家庭の状況を読んきた読者も怒る、許せん!!

    …まあネルソンたちの活躍で、スーパーを回ってフードバンクカートを盗んでいる窃盗集団は一網打尽、一家は表彰され、そして食に困る子供たちの現状を社会に訴える機会も得ることができたのでした。

    物語には、地元のサッカースーパースターが出てくるのですが、このサッカー選手のモデルがマンチェスターユナイテッドのマーカス・ラシュフォード選手(サッカーに詳しくないので存じませんでした(^_^;))だそうです。
    ラシュフォード選手は、自分も子供の頃に無料給食に助けられたという経験から、イギリスの無料給食制度の継続を取り付けたということ。

    爽やかな語りのなかに、かなり深刻な問題を書き、しかも子供たちの行動で社会も変わりそうという、なかなかすごい話だった。
    あとがきには、イギリスと日本のフードバンク情報も載っています。
    日本の「全国フードバンク推進協議会」 https://www.fb-kyougikai.net/

  • イギリスの児童書です。フードバンクの切実さやシステムに多少の違いはありますが、日本での状況が最後に分かりやすく説明されており、フードバンクや貧困について、正しく理解できる本だなと思いました。
    フードバンク泥棒を登場させ、それを捕まえることで、かわいそうな話で終わらず、ストーリーとしても、楽しく読めました。
    貧困を知られたくない子どもたちの気持ち。
    友達の貧困を知り、同情ではなく友情をもって接する子どもたちの気持ち。
    子どもたちの気持ちを尊重する大人たちの気持ち。
    それぞれの気持ちがきちんと描かれているのも良かったです。

  • ネルソンは妹とおかあさんの三人家族。
    お母さんは朝から晩まで働いているけど、月末には冷蔵庫は空っぽ、ぼくたちはいつもお腹をすかせている

    でもぼくたちには、チケットがある
    フードバンクから食べ物をもらえるんだ
    あと、学校では皆の登校前に秘密の朝食クラブで朝食を食べることができる

    ある日、朝食クラブのともだちから、フードバンクで配布される食糧が少なくなっている、どろぼうにやられたのかもと噂を聞く

    ネルソンは貧しいことを秘密にしていた、幼なじみに打ち明け、みんなでどろぼうを見つけることに。


    〇フードバンクという活動がよくわかる
    読書感想文というより、自由研究や活動によい題材かも
    日本でも、スーパーなどで志のある人が気軽に参加出来る仕組みがあるとよいなと思った
    〇最後に大人の有名人がかっさらってしまった感じだけど、登場する子どもたちの世界でしめてもよかったかも?
    〇このまじめなお母さんが朝から晩まできちんとした職場で働いて、このように困窮までするかな?でも、三人家族だからかな?それとも、もうそういう世の中なのかな…

  • イギリスのフードバンクってすごい。自治体のフードバンクは家にある賞味期限内だけど食べないもの、だけど、イギリスはスーパーで買ってすぐフードバンク用のカゴに寄付をする。この方法なら協力しやすいと思う。ただ、知らないだけなのかもしれないけれど、フードバンクにお世話になる人が身近にいないので、日本も7人に1人は貧困と言われても実感がわかないのも事実。

  • ごはんが題材に出てくるお話しは最近流行り?のように思えるけど、どちらかというと、おいしい・映えるごはんの話よりかは、フードバンクとか、こども食堂のような話の方が私は興味あるかも。

  • 父さんが出ていってから、ぼくのうちでは食べ物に困ることがよくある。でも、そんなぼくらの助けになるのがフードバンクだ。お金がなくても食べ物がもらえるし、みんな親切だ。ところが、そんなフードバンクの食べ物がどんどんへっていった。どうやら、だれかが食べ物をぬすんでいるみたいなんだ……。

    子どもの食の貧困にスポットを当てた作品。小学校中学年くらいから。
    主人公のネルソンは、いつもお腹をすかせているけれど、母親がろくにたべもせず頑張って働いていることがわかっていて、そんな母親のために食べ物をとっておこうと考える優しい子。親友の2人にははずかしさから自分の境遇を隠している。それでも親友は、なにか気づくところがあるのだろう、食べ物を分けてあげようとする。そのさりげないやさしさがいい。
    日本でも貧困家庭が増えていると言われているし、そのための活動も増えつつはあるが、まだまだだ。そういう現実に関する解説もあり、ネルソンたちの活躍が痛快なこともあり、興味深く読んでもらえそうだ。
    この著者の邦訳作品はすごくわかりやすくダイレクトに伝わってくる。自分もなにかしないといけない、という気にさせられる。

  • 母子家庭で学校の「朝食クラブ」や週に一度のフードバンクに頼って生活しているネルソンと妹のアシュリーと母さん。ところが頼みのフードバンクに最近食料が満足に届かない。どうやら善意の寄付を盗んでいる者がいるらしい。ネルソンは友人のハリエットやクリシュとともに立ち上がる。

    フードバンク推進協議会の理事さんによるあとがきによれば、日本のフードバンクが取り扱う食品の量はイギリスの6分の1以下だそう。まだまだなじみがないし、心理的なハードルもあるのでは。
    この物語で特にいいなと思ったのは「朝食クラブ」やフードバンクの人たちが親切で、当然のこととして運営しているのだというふうに描かれていること。

    それでもネルソンにはやはり負い目もあって、親友のハリエットたちには、ほどこしなんかいらないとつい強がってしまう。そんな垣根を乗り越えて一緒にどろぼう退治に立ち上がる というあたりがさらりと、でもきちんと描かれていて好きだった。

    クライマックスのネルソンの行動……そりゃあんたさすがにキケン……と思ったけど、アメリカじゃなくイギリスが舞台だと気づいて納得。銃社会立ったら無理だわー。

  • R5年度読書感想文課題図書・中学年
    ぼくの家はちょっとお金がない。だから給料日前になると食料が不安になってくるんだ。ぼくと妹はいつもはらぺこさ。
    そんなうちの家族の力強い味方がフードバンク。そこでもらってくる食料品が我が家の命綱なんだけど、あれ?フードバンクの食料がすごく少ない。えっ?どろぼうが盗んでるんだって?これは「うえじに」の危機だ。絶対にぼくたちでどろぼうをつかまえてやるんだ。
    日本ではまだなじみの薄いフードバンクのシステムが理解できるのと、お金がなくて食料にも困るという生活を共感を持って読める良い本でした。多分イギリスのお話なのですが、お母さんがきちんと病院で働いているのに生活費に困るというのは日本と感覚が違いますね。日本だと、ギリギリ食事はできそう。洋服など買い物や旅行などはできないかもしれませんが・・・。

  • 2023年中学年課題図書
    ネルソンが主人公。
    妹のアシュリーのこんな言葉から物語は始まります
    「ネルソン、おなかすいたよ!もうごまんできない。ほら、おなかがペチャンコだよ!」
    ネルソンは、妹のアシュリーとお母さんとの三人暮らし。1年前にお父さんは、ネルソン達よりも大切な人が出来て出て行ってしまった。

    お母さんは、看護師として働いているけど、「ぎりぎりの月」がある。ぎりぎりの月とは食べ物や必要なものを買うお金が足りなくなる月のことだ。だから家に食べるものがほとんどなくなってしまう。
    お母さんが帰って来て、「あと1日我慢すれば、銀行で必要ないものが手に入るから」と言って、ささやかな夕飯を用意する。
    その銀行って言うのは、あのお金を預けたり引き出したりする銀行ではなくて、フードバンクのこと。ここをネルソンの家族は1年前から利用している。この銀行はお金を払わなくても食べ物をもらえる。

    ネルソンは学校の朝食クラブも利用している。授業前にただで朝ごはんがここで食べられる。
    ネルソンはそこで、フードバンクが大変な事になっている、誰かが食べ物を盗んでいるようだと言うことを聞く。
    実際、フードバンクに行ってみると、いつもより引き出せた(貰えた)食べ物が少なかった。

    ネルソンはお腹を空かせている。いつもね。辛いわけです。どんなかって言うと、一日中食べ物を考えている状態。夜眠ることができないくらいお腹が空いている状態。

    ところで、ネルソンには、二人の親友がいる。クリッシユとハリエット。この二人のうちはお金があるので、食べ物がある。朝食クラブは利用していない。
    ネルソンはいつもお腹を空かせている状況でだから、二人は食べ物「分けてくれようとするが、
    憐れむのはやめてとネルソンが言ってケンカのようになる。でも、結局、ネルソンは朝食クラブのことやフードバンクから食べ物が盗まれていることを明かす。
    で、犯人を捕まえる計画を立て3人はスーパーの張り込みを始める。
    なぜスーパーを見張るかと言うと、
    フードバンクは寄付でら賄われているのだけど、仕組みは、スーパーに来た人が買ったらものの一部をスーパーに置いてある専用の寄付のカートに入れて、それをフードバンクが並べて、必要な人がもらう。

    この本は、フクションだけど、本当の事を元に書かれた物語で、今の社会の問題を描いています。
    だから、この物語ができた過程を含め巻末には、イギリスと日本のフードバンクや朝食クラブ(日本では朝給食)の事が説明してある。

    物語として純粋に読んでも良いけど、お腹を、空かせた子どもがいる今の現実を物語を通じて考えるのも良いと思います。

  • 子どもがどろぼうを捕まえたのが面白かった。

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