『国家とはなにか』

著者 :
  • 以文社
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本棚登録 : 341
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753102426

作品紹介・あらすじ

いま、「国家とはなにか」と改めて問われても、何を問われているのか分からないほど、私たちは国家というものを身近なものと感じ切ってしまっています。本書は、この身近と思っている国家は、基本的には「暴力に関わる一つの運動態である」という、あまり身近と思いたくない概念規定から論を始めています。
近年、グローバリゼイションと同時にナショナリズムやレイシズムへの関心も高まってきて、その意味では国家にかんする議論は広く行われていますが、本書は先の基本的概念から初めて、昨今の「国民国家論」に至る、現代思想の主要なテーマ系にも十分配慮した、新鋭による書き下ろしです。

感想・レビュー・書評

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  • 『国家とはなにか』
    (和書)2011年12月14日 15:54
    2005 以文社 萱野 稔人


    柄谷行人さんの書評から読んでみましたのです。

    国家について疑問に思うことでも何故かまかり通っているものが国家の存在そのものを問うことによってその答えを提出している。

    確かにそうだねーと思う内容です。

    教科書に採用すべきだろう。

  • 国家を、「物理的暴力行使の独占」として定義するウェーバーの議論を参照することからはじめて、国家の成立と維持がどのようなしかたでなされているのかを明らかにする試みです。


    単なる言説のレヴェルで国家を把握しようとする現代思想の一部の立場を批判し、物理的な暴力が国家をかたちづくっていることに分析のメスを差し入れます。また同様の観点から、ホッブズの「獲得によるコモンウェルス」やスピノザの国家論を見なおし、さらにアルチュセールのイデオロギー批判やフーコーの権力分析の意義を論じています。最後に、国家が資本主義における富と労働の流れをコントロールしていることについて考察をおこなったドゥルーズ=ガタリの議論の意義を、明快に解き明かしています。

    先に読んだ『カネと暴力の系譜学』(河出文庫)と基本的な主張はおなじですが、本書のほうがさまざまな思想家たちへの言及がなされていて、著者の立場から現代思想の国家論の意義が明らかにされており、興味深く読みました。

  • 『国家とはなにか』

  • ネトウヨ勉強シリーズ。宇野常寛ら「ナショナリズムの現在」(朝日新聞出版、2014)に登場されていた萱野先生のナショナリズム論。萱野先生は、リベラルがゆえにナショナリストである。社会保障は国家という枠組みが前提だからだ。なぜ市民国家でなく、国民国家が成立したのかを学びたかった。
    p26「国家だけが合法的に暴力を行使することができる…国家がその地域の中で他を圧倒しうるだけの暴力を持っている」なるほど。
    p169「近代国家による暴力の独占は、ふたつの要因によって可能となった。貨幣経済の発達と、火器の発達である」。
    p187「国家の脱人格化…国家の存在を支えるものが、人間のあいだの主従関係から、非人証的な領土へと転換される」
    p198「(国民国家に統合され平等主義が実現される中で)住民たちに、国家への暴力への実践へと身を投じるよう強要することと引きかえに、政治的なものへの平等なアクセス権を保証したのである」民主化の中で政治参加の拡大で拡大されてきた。納税額、性別などの制限が撤廃されてきた。なぜ、住民でなく国民でその制限がとられたのかは分からない。一つの回答としては、国家という統合の物語の背景になったのが、文化的・民族的・人種的な近さを持つ「国民」だったからか。社会保障の充実、つまり再分配の強化の正当化は萱野先生ともに、国民間だから許される。そして、人々が自由に移住する中で、だれに最終的に守ってもらうか、ということから国籍/国民が意識されるようになったのだろうか。

  • 国家論の本。ウェーバー、バリバール、ドゥルーズ、ベンヤミンなどを解きながら、国家にとって暴力装置の独占は不可欠であり、その国民国家としてのナショリズムもまた不可欠であるとする。主眼は、「グローバリゼーションによって国家はなくなる」「国民国家システムは消滅する」などという人々に対するアンチテーゼ。

  • 283p

  • 知的な刺激が満載!!

    最近目新しいことがなくて。という方にはもってこい。

    普段あまり考えることがない、しかし身近に存在する国家について、国家とは何かを考察する本。

    国家とは誰のためのものなのか?必読

  • 「国家とは人びとの間にうちたてられる関係性である・・」という何となくアカデミックな前提に、正面から「それだけじゃないだろ」と問う。学会の権威に自分を合わせるのではなく、自分の頭で考えるというスタイルに非常な好感を覚えた。
    どこまでも平易な説明のスタイル。愚直なまでの反復、応答、問いの再確認の連続なのに、飽きがこない文章力も見事。
    意識してアカデミックなおごりを避けているのだろう。その点も異色な学者のデビュー作。

  • 国家とは暴力にかかわる運動であるという、著者の国家論。
    暴力の組織化による国家の成立から、近年の資本主義と国家との関係まで、大変興味深く読めました。

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著者プロフィール

萱野 稔人(かやの・としひと):1970年生まれ。津田塾大学総合政策学部教授。哲学者。早稲田大学卒業後に渡仏し、2003年、パリ第10大学大学院哲学研究科博士課程を修了(博士・哲学)。専門は政治哲学、社会理論。著書に『新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』『名著ではじめる哲学入門』(ともに、 NHK出版新書)、『暴力はいけないことだと誰もがいうけれど』(河出書房新社)、『暴力と富と資本主義』(KADOKAWA)、『死刑 その哲学的考察』 (ちくま新書)、『リベラリズムの終わり』(幻冬舎新書)ほか多数。

「2023年 『国家とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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