『国家とはなにか』

著者 :
  • 以文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753102426

感想・レビュー・書評

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  • 121103朝日
    国家と暴力の関係

  • 図書館の社会学の棚にあったのだが哲学書だった。しかも予想外に面白かった。
    著者はマックス・ウェーバーから出発し、国家とは暴力行使という手段によって定義される、と提示する。すなわち国家とは「暴力の組織化」である。
    このテーゼは「死刑」や「戦争」が「国家」によってはじめて可能になることを思えば、半ば賛成できるものである。
    しかしウェーバーはじめ、フーコー、ドゥルーズなどやたらに引用が多く、この引用の多さは日本人による現代思想書の悪しき特徴だ。それでも、オリジナルな思考がないわけではないので、興味深く読み通すことができた。
    「国民国家」という近代の産物と、昔の西欧に見られた王権国家との断絶はどのようにして生じたのか、とか、「富の我有化」は国家誕生に際してそれほど重要なエレメントであったろうか、とか、読んでいて疑問を持ちつつも、それだけ自分の思考が刺激を受けたとも言える。
    時間がたったらまた読み返してみたいと感じるくらい、意外に優れた本だったと思う。

  • 国家を暴力の面から構成していく書。

    思想的には著者は左派に属するのだろうが、おそらく左派言論村では扱いに困るだろうと、読んでいて苦笑した。

  • 「国家とは暴力である」
    これを命題に国家を解説する
    いままでの国家に対する考えが先入観による誤りであったと気付く
    良い一冊

  • ここ数年来密度の濃い議論を展開している萱野稔人の著作。この著作で提示される、国家は暴力にかかわる運動であるという定義は、国家に従うことを自明視している人々の心性を鋭く抉るだろう。

  • だいぶラディカル。フーコーとアーレントの暴力-権力論と後ろの千のプラトーの話が特に面白かった。わかりやすいし。

  • 国家の概念規定から始まり、その生成、主権成立や国民国家の形成、資本主義との関係を論じている。暴力が組織化され集団的に行使されることのひとつの帰結として国家は存在し、暴力に先んじて国家があるのではないとする。また、一般的に理解しやすい”国家を必要悪とみなす考え”や”住民の生命や財産を守るため租税を負担すべき”という考え方を妥当でないとし、国家は自らの利益(富の我有化)を追求することで結果的に治安の管理に向かうとしている(”保護する故に拘束する”のではなく”拘束する故に保護する”)。国家と資本主義の関係やその親和性を説いた部分や、グローバリゼーションが国家が住民の生存について”面倒をみる”役割を低減させる方向に作用するといった指摘は特に興味深い。とてもおもしろい1冊だったが、理解できてない部分もあると思うのでそのうち再読する予定(また、引用がウェーバー、フーコー、スピノザ、ドゥールーズ、ガタリ他広範囲に及ぶため本当はそれらの書籍なども読んでのほうがよいのだろうけど…)。

  • 国家論全体を暴力の哲学として理論的に、および主権から資本主義の関係として系譜論的に、捉えた画期的な1冊。体系だった記述、バランスの良い目配り、引用文献の良さ、さらに論理的展開など政治哲学の啓蒙書として文句ないレベルにあると思われる。すばらしいの一言。

  • 読み進めると、ふむふむ。ほーほー、なるほど、うーんという感じ。辞書引きながらでないと、知らない言葉が多かった。

  • 国家を暴力行為という手段によって定義し、
    組織、個々について論じる一冊。

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著者プロフィール

萱野 稔人(かやの・としひと):1970年生まれ。津田塾大学総合政策学部教授。哲学者。早稲田大学卒業後に渡仏し、2003年、パリ第10大学大学院哲学研究科博士課程を修了(博士・哲学)。専門は政治哲学、社会理論。著書に『新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』『名著ではじめる哲学入門』(ともに、 NHK出版新書)、『暴力はいけないことだと誰もがいうけれど』(河出書房新社)、『暴力と富と資本主義』(KADOKAWA)、『死刑 その哲学的考察』 (ちくま新書)、『リベラリズムの終わり』(幻冬舎新書)ほか多数。

「2023年 『国家とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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