仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント

制作 : 篠田 真貴子(解説) 
  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757123625

感想・レビュー・書評

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  • 一番心に残ったのは、金融業界で25年間働いてきたという筆者の弟の言葉。

    「1番大変な時に、仕事を辞めるという決断をするな。家庭でも仕事でも、自分が世界一ダメな人間のように感じてしまう時期がある。そんな時期が必ず来ることを覚悟して、そのタイミングで決して人生の決断をしてはいけないと肝に銘じておいた方がいい。家庭でも仕事でも、支えてくれる人の輪を作り、その人たちに助けてもらって難しい時期を乗り切り、その間の中の人を大切にしよう。その人たちは仕事の邪魔ではなく、長い人生の中であなたの仕事を助け、あなたをより強くしてくれる存在だ。」

  • そういえば、男性への偏見の数々は、表面にも出てきてないことを再確認。女性と表現すると違和感があることも、ケアに従事する者と捉えると、性別は関係ない。早速、部署のみんなとあーだこーだしたい。
    #unfinishedbusiness #競争とケア #ケア経済 #ワーキングファザー #読書記録

  • 女性の働き方を考える上で参考になる本

    仕事をしながら、家庭のことも頑張らなきゃいけない女性と
    それを支える男性に読んでほしいです。

  • 必死に仕事に打ち込んでいれば全てを手に入れることができる。
    協力的な相手と結婚すれば全てを手に入れることができる。
    順番を間違えなければ全てを手に入れることができる。

    これらは、著者が学生時代から持っていた信念であり、実際そのとおりに実行してきて、全てを手に入れてきたように思えていた。
    しかし、ワシントンで政府の中枢で働くようになり、息子達が思春期を迎えた頃に状況が変わる。
    それまで自分でスケジュールを組めていた大学教授のライフスタイルからは生活が一変。
    著者は週末しか自宅に帰れなくなる。
    家族全員で国に奉仕しているのだと息子達には言い聞かせていたが、やがて息子の問題行動が目立ち始め、母親を必要としていることが明るみになってくる。

    著者はもう2年、本当はワシントンで働きたかったが、家族のために大学教授の仕事に戻ることを決断する。
    今までだと、昇進を投げ売って家庭に戻る女性を軽蔑していた著者だったが、自分がした決断に満足していた。

    仕事と家庭の両立について、改めて見直してみようと思い、執筆したのが本書。
    著者の体験が赤裸々に綴られていて、大変参考になった。
    冒頭にあげた、著者の理念は決して間違ってはいない。
    しかし、それは全てが自分の計画通りに進めばの話。
    計画通りにいかないのが人生。
    著者が経験したとおり、思春期の子供が問題行動を起こすこともある。
    子供が病気になることもある。親の介護が必要になることもある。配偶者が何らかの理由で働けなくなる可能性だってある。

    仕事も家庭も、男性も女性も、太いまっすぐな道を突き進むような人生よりも、臨機応変に柔軟に進む道を変更することができる。
    そんな生き方がこれから必要ではないかと著者は指摘する。

    高教育を受けた女性がキャリアを途中で断念して家庭に入ったとしてもその受けた教育は決して無駄にはならない。
    教育とは自分を支えると同時に他者の人生を豊かにするためのもので、その他者とは自分の子供、配偶者など家族も含まれるから。
    子育ては子供を通じての社会貢献であり、それは稼ぐこと、競争に勝つことを求められている仕事と比べて劣るものではない。

    本書は、仕事と家庭の両立について、具体的なハウツーを教示してくれる内容ではないが、競争とケアについて、考え直すことを提示している。
    なにより、これからの若い女性が人生に希望を持てるようにという著者の願いが伝わってくる一冊。

  • 仕事と家庭の問題を競争とケアの問題として捉え直す視点は面白かった。ただ「どちらも大事」とはいいつつ、お金を稼ぐためには競争の世界で頑張る以外、なかなか選択肢がないのが現状かなと思う。ケアがきちんとマネタイズできればよいのだろうが、そうなるとケアが競争の世界に巻き込まれてしまう。ケアが本当に認められるためには、お金以外で回る世界が必要なのかもしれない。

  • ・作者がアメリカの超エリート白人女性なので、日本には必ずしも当てはまらないかもしれないが、女性が育児と仕事を両方する時の障壁や、それらを生み出す社会について改善点を書いている。
    ・読んでいて自分も気付く部分が多かった。夫より家事や育児が得意だと思い込んでしまっているのは確かに良くないと反省した。妻が必ずしも得意とは限らない。
    ・あと、大変でないときにキャリアを計画して、夫とどちらが家庭に比重を置くかは本当に大切。
    ・仕事と家庭は両立する、両立できることではなく、家庭に比重を重く置くタイミングが来たとしても、それによって仕事がなくなってしまうような社会ではよくない。ケアに対して、価値を見出す時代になるべきと感じた。

  • アメリカ国務長官のもとで制作企画本部長を務めたアン・マリー・スローターの本。アメリカでの一般的な女性が結婚、出産と仕事ができるかの話。日本とは違う雇用体系や社会保障の面はあるけど、今の日本が女性活躍とか言っているので、少し女性が社会で働くことに関して進めたとしたらというかんじ。なんで、仕事と家庭の両立?という言葉の定義付も問われているし、大学終了後から仕事のキャリア、途中に結婚、出産、育児があり、何が問題になり仕事が継続できなくなるかの記述は、そのとおり。仕事は気合だけでは乗り切れない、子供のことは計画通りにいかない。どうしたらいいのかを求めて読んだけど、簡単にこれをすればいいという解決策はない。現在進行形で奮闘している身としては、この本に書いてあることを誰もが認識してほしい。自身としては、子供の成長段階で仕事をどうするか、考え続け行動したら次のステップがあればいいと思う。社会に出てお金をいただく仕事をしていることが偉いとかそういうことでもなく、いろいろできることをやってみる。本を読みながら、日本では女性が自身で身を立てるというよりもまだ、誰かに扶養されることを目標としている感もあると思う。いろんな方法があるけど、自分で選んでここにいる、もちろん運もありだけど、この本のような考え方を広く知って変われたら理想。

  • 2101図書館本
    共感するところと、そもそも人間としての意識レベルが違いすぎてすいませんというところもあるが…世界の最先端の考え方を少しでも学ばせていただいたという感じ。

    競争⇄ケアという二軸の捉え方はすごく腑に落ちる。自分自身もケアを低いものとして捉えていることに気付かされた。また職場(競争)では男女不平等を嘆いたり批判したりするのに、家庭ではまるで不平等を自ら実践しているところ…本当に!反省!

    実践情報が少ないのと、仕事ができることが前提になりがち(仕事できる人はごく一部。。)ですが、最先端の意識高い考え方を学べる本。どうしたら両立できるかの細かいハウツー本ではない。

    仕事できない人間はまず責務を果たすところから頑張ろうと思います。。


    以下納得したところや自分なりに咀嚼して取り入れたいなあと思うこと

    ・競争に価値を置き、ケアに価値を置かないという社会構造が問題である=自分もそういう考えを持っている。考え方、話し方を変えていこう。

    ・ケアすることは訓練も経験も専門知識も必要であり、誰でもできる価値の低い仕事では断じてない
    (このことは、自分がすぐに(こんなことできないなんて母親失格だなー)と落ち込むことについて励ましもくれる視点であり、同時にケアする者の責任としてもっと学んで意識を持たねばと思わせる視点でもある)

    ・キャリアを諦めない。ドロップアウトするのではなく、シフトチェンジ、インターバルと捉える。50代、60代から新しいキャリアを構築したっていい時代になること。キャリアプランを立てる。

    ・パートナーと、会社とよく話し合う。キャリアプランについてや、自分が貢献できることや、どういう働き方をしたいか。前提として権利にこだわるのではなく職務を果たす責任を持たねばなあ(トライしているつもりでも、なかなかできていなかったり)

    ・男性差別をやめよう。真のニュートラルな考え方を取り入れる努力をしていきたい(こうやって本を読むこととか)夫の家事育児のやり方をことこまかく指示したり、批判したりしない!笑

  • お金を稼げない仕事は価値が低いのか。経済合理性という物差しだけで物事を判断していると、いずれ自分で自分の首をしめることになる。

  • 仕事における男性と女性の役割に関する神話を徹底的に取り除くだけでなく、家庭における男性と女性の役割に関する神話も徹底的に取り除く必要があることを、まず筆者は強調している。

    そして、個々人(多くの場合女性)が、効率よく仕事や家事をこなしていくことで解決できる問題ではないということも、筆者は強調している。

    このように、仕事と家庭にまつわる議論に伴う様々な固定観念を取り除いたうえで、筆者は、中心的な問題意識として、ケアの重要性が社会の中で十分に認識されていないということを挙げている。

    会社のみならず、現代の社会では競争とケアでは、競争の方に重きが置かれている。成果を上げるとは競争に勝つことであり、それがイコールその人の価値という考え方が深く根付いている。

    人を育てることや人を助けることは、会社においてもその他の場所においても、正当に評価をされているとは言えない。筆者はこのことを、「資産運用は子育てより難しいのか?」という例えを通じながら説明している。

    これらの役割に正当な価値・評価と支援を与えることで、社会のあり方や仕事、家庭のあり方をより良いものにすることができるということが、筆者の確信にある信念であると感じた。

    そして、我々が人生を生きる上でも、ケアに関わることに重きを置くことによって、より豊かな人生を送ることができる。

    会社に柔軟な働き方のシステムを導入することも、個々人がキャリアプランを立てることも、パートナーとの役割分担や接し方を見直すことも、そのような視点を持って考えてみると、新しい方向性が見えてくるのではないかと思った。

    「おわりに」の章に書かれていた、筆者の祖母への想いが、非常に感動的だった。外交政策の研究家であり、アメリカ国務省で外交政策の立案・実行という競争的な仕事の場に身を置いてきた筆者が、強い責任感と高い能力を持って家族を支え続けた祖母の人生を、改めてケアという視点から見つめ直したときに見えてきたものこそ、私たちが、自分の人生に対して見つめ直していかなければいけないことなのではないかと思う。

著者プロフィール

プリンストン大学教授。クリントン国務長官時代の国務省で要職を務めるが,育児のために辞職。その時の思いを綴った「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」が全米中で議論を呼ぶ。

「2017年 『仕事と家庭は両立できない?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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