なぜ生態系を守るのか? (やりなおしサイエンス講座07) (やりなおしサイエンス講座 7)
- NTT出版 (2008年11月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757160279
作品紹介・あらすじ
その場しのぎではなく、絶滅危惧種だけを守ればよいのでもない。科学的議論に基づいた生態系への処方箋を、環境保護の現場をふまえてやさしく解説。冷静かつ手遅れにならない対策とは。
感想・レビュー・書評
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良書だと思う。特に第5章は自然科学者としての矜持と熱い想いが静かに語られていて素敵だ。
星を5つにしなかったのは、一般向けの本なんだけど、少しだけ生態学に対する事前知識の敷居があると感じたからかなぁ。
他の一般向け書籍と併せて読むといいかと。 -
とても普通の本。変なことは書いていないが面白くもない。
んなこと知ってるよ、的な。 -
推薦理由:
人間が生態系の及ぼす影響を探り、自然を持続可能に利用できる手段を考える環境生態学の立場から、漁業の乱獲と管理の問題、野生動物の保護管理の問題、化学物質の生態系への影響などについて説明する。また環境倫理の問題も取り上げ、環境問題に取り組むときの社会的側面についても考える。 -
根本的な疑問に真正面から丁寧に答えている。
第1章の国連海洋法条約と漁業では、漁業の乱獲の原因を経済的なモデルを用いて説明したり、共有地の悲劇をゲーム理論から解説したり、日本の漁業について漁業種別の漁獲割当の問題を指摘しており、学ぶ点が多かった。
第2章の絶滅危惧種と保全では、絶滅リスクは悲観的に見て手遅れにならないよう保全措置をとるため、過大評価されていることや、それでも在来種7000種のうち10年間で13種絶滅したことは1000年1000種あたり180種の絶滅であり、過去平均の200倍以上と計算しているところは論理的で説得力がある。
第5章のまとめでは、生物多様性をまもる最大の理由は次世代の人々に我々と同じ自然の豊かさを残しておくためであることや、リオ宣言の第15原則において環境に対して深刻あるいは不可逆的な打撃を与える際の予防原則を合意していること、飼育や移植によって絶滅危惧種をまもることは本末転倒であり、生息する生態系自身の保全に努めるべきといった、力の入った主張が展開されており、痛快な感覚を覚えた。
入門者向けを思わせる本のデザインだが、読みごたえは十分にあった。