- Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758410519
感想・レビュー・書評
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広谷鏡子 著「心のかけら」、2005.6発行。タイトルに魅かれて読みましたが、好みではありませんでした。
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行きつけの居酒屋で時おり隣り合う壮年の物静かな男性が、広谷鏡子の京都の住まいを設計した建築士であった縁で手に取った。建築士は著者を「なかなか官能的に書くひと」と称したが、言葉の通り、主人公の比沙子と雨の朝に出会った秋生の性愛の衝動から物語ははじまる。
我が子を食うサトゥヌルスに関連付けられる家族の歪み、日曜学校の牧師によって語られる無償の愛。三十歳になる自身を形作ったかけらを思い出しながら、頁をめくるにつれて精神衰弱に陥ってゆく秋生と道連れでいる方法を比沙子は模索する。 -
温かいぬくもりの中で幸せを感じたかっただけなのに、心に正直に生きているだけなのに、
結果、傷ついて、しかし、明生を愛している気持ちを嘘だと思いたくなく、一生懸命に包み込もうとする。
そんな、主人公・比沙子が哀しく、いじらしい。
もう駄目なんだと、心の中ではわかっているのに、相手に対しても断ち切る宣言までしてしまったのに、それでも、まだ、望みを捨てきれないでいる。
人間って、一人は嫌だし、弱い生き物なんだなぁと考えさせられた。
最後に、明生が比沙子に対して、感謝の気持ちを持っていたことだけが救いであった。 -
自分が傷付きたくないがために相手を傷つけていく秋生。そんな男と知らずに愛してしまい、深く傷つけられて、それでもなお愛し、秋生の幸せを願う主人公。未来はわからない。でも、生きることは喜びであると信じて。
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夜に読み始めたら、心がずんと暗くなって、眠れなくなってしまいました。でも、最後まで読んだら、ちゃんと心も落ち着きました。人の心って、ぐちゃぐちゃし始めたら、どこまでもぐちゃぐちゃしていってしまう。自分にもそういうときがあったなぁ、と思いながら読みました。
[2005.06.12]