- Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758412223
感想・レビュー・書評
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ふふふ、共感共感。
あっ、私、は、働いてない…訳ではないですがね。共感ポイントありありです。
主人公のキョウコは45歳まで大手広告代理店でバリバリ働いていたのだが、仕事生活に疲れ、実家の毒親に疲れ、サッと退職して、その後一切働かず、倒壊寸前のようなボロアパートで一人暮らしを始め、貯金を切り崩して月10万円生活を送っているのだ。このあたりのなりそめの話はこのシリーズの1巻目『れんげ荘』に書かれているそうなのだが、BOOKOFFのウルトラセールで2巻目のこの本だけあったので(kuma0504さんのレビューで見つけた本です)、『働かないの』から読み始めた。
キョウコは本当に偉いと思う。何が偉いって、“自分を信じてあげられる力”だ。
この本では48歳になっているキョウコは45歳からずっと働かない生活を通していて、ある時役所の人に呼ばれる。「失礼ですが、何年も働かれないのには何か訳がおありなのですか?」と。働ける体なのに、働かず、所得税も住民税も収めない人間は国としてはほっておけないらしい。
キョウコはきっぱり言う。「私はもう一生分、働いたのです。朝から深夜まで、嫌なことも理不尽なことも我慢して。その分高給だったので、我慢できるだけ我慢して、お金を貯めてやめたのです。なので働く気はもうらありません。」。
そして、震災後であったが、ボランティアにも一切行かない。
筋が通っていて気持ちがいい!
普通、48歳くらいだとまだ、働かずボランティアにも行かない自分を世間がどう見ているか気にするだろう。だけど、「人に迷惑をかけず、自分の貯金で生きていく」決心を通すところが清々しい。「働かないならせめてボランティアでもすれば」という世間の目を意識してのボランティアならむしろしないほうがいい。キョウコ大丈夫だよ。それだけ自分を愛せる人は人のことも大事に出来るから。
だけど、ゴーイング・マイ・ウェイに見えるキョウコもしょっちゅう、「私ってダメダメ」と思っているのだ。例えば、となりに引っ越してきた若いモデルさんみたいな女の子“チユキ”のことを気がつけば詮索したくなっているのだ。“自分が暇だから他人のことに首を突っ込みたくなる”“嫌なオバサン”に自分がなりつつあるのに気がついてハッとする。
そして、自分の部屋を少しおしゃれにしてみたらどうかとか、何かやってみようかとか考えているときに、偶然、カフェで見たマダムたちが刺繍教室で作ったらしい作品をチラッと見て「あんなのがやってみたい」と思う。刺繍教室にいくお金もないので、友達に相談したら刺繍の得意な友達を紹介してくれて、その方から頂いた刺繍道具一式と図案で、刺繍を一人始めた。家庭科は苦手ではなかったはずなのに、久々に針と糸を持つと指先がブルブル震え、老眼で縫い目も見えにくく、肩もパンパンに凝る。こんなに体も根性も保たないくらい老いているとは…!
仕事ではない。誰のためでもない。だけど、自分のために友達が相談にのってくれて、用具ももらって始めた刺繍なのだから完成させなくては、と頑張るのだが、そうやって必死にやっている自分の顔が鏡に映るとあまりにも酷い形相で更に落ち込む。ハハハハハ!共感共感!
「キョウコは真面目すぎるんだよ」とキョウコと価値観の合う、数少ない隣人達は言う。「時間はいっぱいあるんだからボチボチやればいいんだよ」と。だけど、キョウコには同じように働かないと決めてれんげ荘に住んでいるクマガイさんは自分よりずっと地に足がついていると感じるし、友達で学校の先生をしているマユも大人だなあと感じる。それに比べて自分は何なのだ、と。人と比べる生活に疲れて今の生活を選んだくせに、気がつくとまた人と比べている。キョウコの毒母のように“一流”という判断基準をもってそこにもたれかかって生きるほうが、自分で何も考えなくてよいからある意味楽かもしれない。
「自分にはめられる枠のようなものが欲しかったら、蟄居していると思えば?一日をつつがなく暮らせたというだけで自分を褒めてあげてもいいんじゃないの?」というマユちゃんの勧めにしたがい、とりあえず、図書館から借りられるだけの本を借りて片っ端から読み、それに飽きると刺繍をしたり散歩したりという生活をしてみた。刺繍も頑張りすぎず、ほどほどのところでやめるようにした。
そうすると不思議なことに自分の不甲斐なさについて考えなくなった。まだ出来るのにその手前でやめておくと、「頑張ったのにこれだけ?」と自己嫌悪に陥らなくなった。せっかく無職になって時間と精神的な余裕を得たのに、わざわざ自分で枠を作って余裕をなくしたり、嫌なことなどないのに勝手に母親との関係を思い出したり他人と比較したりしてややこしい問題を作りだしでいたのだと気付いた。自分はとても恵まれていたのだった。と気づくまで、ある意味修行みたいだった。
気が付けば刺繍もある程度進み、そこでやめても良かったのだけれど、若い隣人のチユキさんに「絶対完成させて下さいよ。」と言われて前向きな気持ちになれた。
「他人と比べなくていい」これだね。
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れんげ荘に住み始めて3年がたったキョウコさんのお話。
私も仕事辞めて、ずっと本読んだり映画観たりして自由に暮らしたいなって思うことあるから、少し共感できる。でも実際にはそうもいかないから、それを実現したキョウコさんはすごい。
だけど折角そんな暮らしをしているのだから、もっと楽しんだらいいのにって思うことがたくさんあった。実際にしてみたら、先のことが不安になるのかな。
2階の探検は読んでいて一緒にワクワクした。でも案外何もなかった。笑
物語の中で、刺繍に挑戦するのですが、本の表紙も刺繍になってた!素敵! -
働かないと決めて働かない、毎月決まった金額だけ貯金を取り崩して使い、日々を静かに淡々と暮らしてゆく。
読書に散歩を友として過ごす日々にも、隣人が越してきたり刺繍を始めたり小さな変化は訪れる。そんな中で自分についてつらつらと考えてみたりする様子がなんだかリアルで、似ているところも違うところもひっくるめて、今の自分にするりと馴染む作品。
面白い作品も感動できる作品も沢山あるけれど、自分に馴染む、という感覚の作品には滅多に出会えるものではないので、そのことがまず嬉しい。 -
激務から解放されて、月10万円で過ごして行くってなんだかうらやましいと思うけど、実際にしてみるとキョウコ以上に悩みそう。
また新たな仲間が増えて、悩みながら楽しくやっているのがよかった。
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相変わらず気ままな暮らしのキョウコ。地震があっても心配しない母との確執もなかなかのもの。今回は刺繍にチャレンジ。
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再読です。
仕事を辞め、月10万円で生活することに決めたキョウコさんの話。
とうとうTVまで処分してしまった………。
到底真似できないキョウコさんの暮らし。だけど、ちょっと憧れる………。
次作も楽しみ。 -
れんげ荘の二冊目。二冊目になっても、主人公キョウコのなんとなくモヤモヤした気持ちは解消されていないが、その人間ぽいところが「パンとスープ」のアキコよりも現実味があって面白かった。読んでいると刺繍がしてみたくなる。
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れんげ荘に住んで3年目のキョウコさんのお話。
働かないで何年も過ごすってどんな感じなんだろう。羨ましいと思うけど、空っぽでつまらなくなってしまうかもなぁ。同じではなくとも、キョウコさんみたいに「私って幸せ」って思える生活ができたらいいな。 -
激務に疲れ果て、最低限の支出で細く長く穏やかに生きることにした女性のお話。お母さんとの関係がうまくいってない様子だったが、そのあたりもう少し描いて欲しかったな。仕事から解放され自由であるはずなのに、興味が湧いて始めた刺繍で悩むという…人って悩みが尽きないものだなぁと少しシニカルなクスっをくれた一冊。
どうしても少しだけモヤモヤしていたのは、
別にやりたいことやって(ボランティア)
少しだけアルバイトして(働いて)も
いいじゃ...
どうしても少しだけモヤモヤしていたのは、
別にやりたいことやって(ボランティア)
少しだけアルバイトして(働いて)も
いいじゃない、という疑問はあったのだけど、
「世間の目を意識してのボランティアならばしない方がいい」という事だったんだね。
ということは、
刺繍しながらそういうことさえも自由になった暁には、またやりたいことが出てくるのかな、
やっぱりなんか気になる。
続きを読みたくなる。
最近10数年ぶりのBOOKOFFデビューしました。かなり変わっている。楽しいけど、かなりの時間を食うということもわかりました。ホントに暇な時に行こうと思います。
コメントありがとうございます。
あれを“人生の夏休み”ではなく、“晩年”と捉えて覚悟を決めて生活していくの凄いですね。...
コメントありがとうございます。
あれを“人生の夏休み”ではなく、“晩年”と捉えて覚悟を決めて生活していくの凄いですね。このまま変わらないのか、お金が無くなって音を上げるのか、成長?するのか、もっと大人になっていくのか気になるところですね。群ようこさんも似たような生活を実践されているのかな?と気になります。
BOOKOFF楽しいですが、本探しにくいんですよね。値段別になっていたりするから。文庫本や漫画なんて、出版社別ではなく、全部まとめて著者別にしてくれないかなって思います。