そこにはいない男たちについて

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.44
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本棚登録 : 774
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413534

作品紹介・あらすじ

愛する夫を喪った女と、夫が大嫌いになった女。
「夫を亡くした女だと、彼には言わないで」
「私が忘れないかぎり、あなたはいるのよ」(実日子)
「私はこの男にほんの少し欲情している」
「夫が死んでほしいと思っているの」(まり)
おいしい料理教室を舞台にしたふたりの“妻”の孤独と冒険の物語

感想・レビュー・書評

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  • 夫はいるが愛し合ってはいない夫婦の妻であるまりの章(奇数)、
    愛し合っていた夫を突然失くした未亡人である実日子の章(偶数)が、交互に続いてゆく。
    時折混ざり合いながら、とても忠実に、進んでゆく。
    そんな2人の、虚無と再生の物語。
    2人の日常が、ゆらゆらと綴られている。大きな出来事が描かれている訳では無いけれど、読み終えてみると、1冊の作品の中で、2人の日常はゆったりとした荒波に揉まれていたような印象を受ける。

    そこにいるのにいないと思おうとすること。
    そこにいないのにいると思おうとすること。
    どちらが不幸でどちらが幸せか。
    読者に委ねられるのかなと思いきや、最後はちゃんと答えが出ています。
    2人の決断と、決断とまでは言えない成り行きのようなもの。

    誰かを「嫌い」という感情と、誰かを「愛している」という感情と。
    どちらも、強すぎるとしんどいのだろう。
    「嫌い」が強い方が日常はしんどいし、「愛している」が強すぎると、奪われた時の絶望は計り知れない。この2人の女性を見ていて、どっちの方が楽そうとか、どっちの方が辛そうとか、そういうことではなくて、2人ともがそれぞれにしんどそうだ。

    同世代、というか同い年くらいの女性が主人公の、大人の恋愛小説。
    1人は結婚して数年経ち、夫との関係性に悩み、1人は夫を亡くして悲しみに暮れている。
    同世代の経験の豊かさに圧倒される。
    わたしはいつまで高校生みたいな恋愛を続けるのだ。
    コロナ禍でありつつも少しずつ活気が出てきた飲食店で、わたしは時々、男性とお酒を飲む。
    以前よりかっこつけずに男性と接せられるようになったものの、やはりわたしにはトキメキが必要のようで。
    友人が紹介してくれた安心で安全な男性よりも、深夜に電話をかけてくる元カレに気持ちが傾いてしまったり。
    結婚には安心安全がベストなのだろうけれど、恋愛の初めには、やっぱりトキメキたいじゃない。

    わたしがトキメく男性を、わたしの友達は大概「やめときな」って言う。
    んなことわかってる。

    でも最近、気が付いたんだよね。
    なんか、この人と一緒にいる時無理してるよなー、とか。実は会うたびにちょっとずつ傷ついてるよなーって。
    こないだ、それがちょっと限界になったかな。
    だからもう、自分の意思で、やめとく。
    ここにはいない男について、そんな風に思う。

    • naonaonao16gさん
      bmakiさん

      コメントありがとうございます!

      そうなんですよ、ちょっと危険な香りがする人って魅力的ですよね!
      ドキドキやトキメキを、俳...
      bmakiさん

      コメントありがとうございます!

      そうなんですよ、ちょっと危険な香りがする人って魅力的ですよね!
      ドキドキやトキメキを、俳優さんや2次元に求められれば、現実はもう少し落ち着く気がするんですが...
      以前はそういう「推し」のような存在があったんですが最近はなくて、現実に刺激を求めちゃうんですよね~
      危ない笑

      恋愛映画でも見てみたら少し違うかもしれないですね。
      今は少し、現実の重たい感情から距離を置きたいです笑
      2022/09/25
    • bmakiさん
      この本、Amazonでポチっちゃいました(^_^*)
      いつもありがとうございます。
      次に読む本、naonaoさんの本棚からってこと増えて...
      この本、Amazonでポチっちゃいました(^_^*)
      いつもありがとうございます。
      次に読む本、naonaoさんの本棚からってこと増えてきましたヽ(^o^)

      推しが居る生活って良さそうですよね!
      うちの娘はジャニーズにハマり、九州でも北海道でも飛んでいってしまいます。
      そこまでハマれるのって、羨ましくもあります。

      実生活での重たい感情は、、、、
      確かに時々疲れてしまうことがありますよね。。。
      クールダウンさせたくても、なかなか感情が言うこときかなかったり。。。

      本でも映画でも、お酒でも、何か違うこで楽しんで、気を紛らわせながら時間をかけることで、またきっと回復してくるのでしょうね(*^^*)
      時々は、ご自身を甘やかせてあげてくださいね!
      2022/09/25
    • naonaonao16gさん
      bmakiさん

      おお!ご購入されましたか!
      bmakiさんのその行動力、いつも尊敬します!

      日常生活送る間に落ち着いてくといいんですけど...
      bmakiさん

      おお!ご購入されましたか!
      bmakiさんのその行動力、いつも尊敬します!

      日常生活送る間に落ち着いてくといいんですけどね。
      まだ少し時間はかかりそうです。
      2022/09/25
  • naonaonao16gさんの、小説のようなエッセイのような感想を読んで、思わずAmazonでポチった一冊。

    自分で購入した本は、やっぱり読みたくて購入した本で、取り憑かれたように読み入ってしまった。

    この本に描かれている主人公は、40歳手前の2人の女性。

    愛する夫を失って、悲しみから抜き出せずにもがき苦しむ実日子。

    夫を大嫌いになってしまったまり。

    2人は、実日子の料理教室で出会う。

    大嫌いな夫と結婚生活を続ける自分と、大好きな夫を失った実日子先生と、どちらがかわいそうかと問うまり。


    どちらがかわいそうなんだろう?

    正直私にはどちらの女性の心情にも感情移入することが出来なかった(笑)

    ドラマを観るような気持ちで、2人のその先を読み進めていた。

    naonaoさんが、誰かを「嫌い」という感情と、誰かを「愛している」という感情と。
    どちらも、強すぎるとしんどいのだろう。


    とお書きになっていたが、確かに、、、
    恋愛が上手くいかなくなる時は、大抵この愛のバランスが傾く時かなぁ?と。

    私は何となく、男性からの愛が強い方が結婚生活は上手くいくだろうと感じる(^^)

    女性の強すぎる愛は、歯止めがきかなくなるパターンが多いような。。。

    って、全然本編とは関係ない話になってしまった。


    この本の最後は、ほんの少しだけ広角が上がった(^-^)
    少しだけほっとした。

    • naonaonao16gさん
      bmakiさん

      夢って抑圧された部分が出てくるみたいですからね…
      もしくは、上司との関係が関係しているのかも…?

      娘さん、素敵ですね!
      ...
      bmakiさん

      夢って抑圧された部分が出てくるみたいですからね…
      もしくは、上司との関係が関係しているのかも…?

      娘さん、素敵ですね!
      職場でそんな対応ができるのも、bmakiがとてもおおらかな方だからこそだと思います!!羨ましいな~

      美容関係で働いてた同僚に聴いたら、最近のウィッグすごいと聞いたので、ウィッグつけて仕事するのも検討中です爆

      テレワークしたいって言えたのすごいです!!
      やってみると意外と大丈夫だったことってありますよね!なんでも自分がが「こうしたいなぁ」と思うことをやってみると気分いいですし!

      ちなみに、4回目嫌なんですよー
      誰か面倒見てくれない限り副反応乗り越えられませんー笑
      2022/10/26
    • bmakiさん
      naonaonao16gさん

      大変遅くなりました。
      このところ良い本に巡りあえず、ブクログから遠のいておりました。

      自分が結構...
      naonaonao16gさん

      大変遅くなりました。
      このところ良い本に巡りあえず、ブクログから遠のいておりました。

      自分が結構抑圧されて育てられてきたので、子供たちにはある程度の自由をあげたいなあとずーっと思ってました。
      一度きりの人生だし、若いうちはすぐに過ぎ去れますから、好きなことをやってくれればって思っています。

      ウィッグですか!確かに最近は良さそうなのあるのかも!
      いいですね!ちょっとイメージが変わりそうですね(*^^*)

      四回目ワクチン、ほとんど全くといって良いほど副反応無かったです。
      会社の受けた人みんな、今回は楽だなぁって言ってました。

      私はオミクロン対応のファイザーでしたが、会社の人も同じ種類のワクチンのようでしたよ(^-^)
      2022/11/06
    • naonaonao16gさん
      bmakiさん

      おはようございます!

      最近お見かけしないな~と思ったんですが、なるほどそういうことでしたか!

      素敵なお母さんです^^
      ...
      bmakiさん

      おはようございます!

      最近お見かけしないな~と思ったんですが、なるほどそういうことでしたか!

      素敵なお母さんです^^
      やっぱり羨ましいなぁ…!
      わたしはというと、以前より金髪にしたい欲が高まっています笑

      え、4回目ってしんどくないんですか…?
      でもファイザーだと確かにそうかもしれません…
      モデルナがエグいんですよ( ´・ω・`)
      2022/11/06
  • 表題『そこにはいない男たちについて』の妙。
    読み終えて頁を閉じた後、幾重にも広がり、言葉をあてがうことが難しい思いと表題が示すものが重なり、奥行きの深い感覚にしばし浸る。

    「この人と一緒に居たい。時を過ごしたい」という感覚は人間が社会的な生き物であるが故の本能的なもの。

    話すこと、話さないこと。
    共有すること、しないこと。
    共感すること、できないこと。
    時を重ねれば重ねるほどに、互いの境界線が溶け出し合う一方で、齟齬も浮き立つ。

    手放したことと、指先から零れ落ちて失ったこと。
    意識できることと、操作不能な感情。
    相反する事柄が混じり合い、表裏一体となる。

    物語は二人の女性まりと実日子の対比により展開する。
    全く立場の異なる二人の女性の短編が折り重なり、出来事と感情の輪郭を浮き立たせる。

    日常の夫婦生活の微細な悦びや怒り、哀しみも寂しさも、豊かさも喪失も過剰な説明なく、抑えた筆致で物語が進む。

    そこには読者に価値観や経験の共有を求める書き手の思惑が排され、登場人物たちが静々と動き物語が展開する。作者も登場人物たちも語り過ぎず、説明せずに、人が感じ、動く。

    荒野さんの作品らしく、食べ物の描写も好み。好きな人と美味しいものを一緒に食べる感覚はたまらない。そしてその場を共有したいという思いも私も同じ。

    時を忘れ、心を開放してくれる読後感。言葉をあてがうことのできないアンビバレントな感情の絡まり。「好き」と「嫌い」は同義語だったりするもの。
    ごちそうさまでした。

  • 夫を大嫌いなまりと、大好きな夫を亡くした実日子の話。ふたりの対比が面白い。

    二人の女性の微妙で複雑な気持ち伝わってくる。荒野さんの女性の心理表現は毎回痛いところをついてくるようなひりひりとした気持ちになる。そして少し泣ける。

    好きだった人を嫌いになると嫌い以上の憎しみみたいなものに変わってくる。でも相手も自分を嫌いであることは認めたくはない。
    まりの気持ちがとてもよくわかる。とても自分勝手だけど。

    ひとつ確実に言えることは食べ物の趣味が一致していない男とは上手くはいかない。ということかな。食べる事は生きるということ。同じものを食べない人とは一緒に生きられない。

  • ひぇー。。。もうなんとも言えない感じが、形容しがたい夫への気持ちが詰まりすぎてて、大嫌いなのに別れられないまりの気持ちがすごくわかった(私は夫のことが大好きなはずなのに、だ)
    ずっと大嫌いで痛かったから別れなかった、一緒に暮らしてる間は居なかったのに、離婚した途端常にいる感じ、心のダメージの強さは後者だとか、なんかもう、うわぁーーーーーって感じ。
    結婚はしたことないけど恋愛したことはある人、多分楽しんで読めると思います。まりと対比して夫に先立たれた再生の道を歩く実日子がまたね、いいよね。どっちのが可哀想かしらと言い放つまりにゾッとしたり。
    まどろっこしい感情がぞわぞわする、すき。

  • 意味深なタイトルである。著者名だけで選んだので内容はまったく知らず、読み始めるまでは「エッセイかも……」と思っていた。同じ家に暮らしながら夫が大嫌いなまりと、最愛の夫を突然失った実日子の2人が主人公である。マリはどんどん引き返せない方へと進み、実日子は時間薬が効き始め少しずつ落ち着いた気持ちを取り戻していく。夫婦関係になんの問題もなければ「楽しい読書でした」で終わるのだろうが、とてもざわざわした気持ちになってしまった(-_-;)。

  • 文章のちから、作家さんのえがくちから、を受け取るために読んだという気分になった。

  • 夫に死別された実日子と夫が大嫌いのマリ そんな2人の日常が交互に描かれている 実日子は自身の料理教室を通してなんとか前を向き、心を寄せられる勇介を好きになる マリは夫のことが大嫌いであるのに離婚せずずっと嫌いあって最終的に夫から別れを告げられる

    進歩しているのかしら?進歩っていうか進化でしょう
      この文の意図はなんなんだろう。進歩はその人自身が成長することで進化は別のものに変化することらしい。実日子の心が前向きになったことの変化を表しているのかな

    大丈夫になったから勇介を好きになることができた
    夫はいなくなったけど私はまだ生きてる
      この順番は確かに重要だと思う。勇介がいたから大丈夫になったということと全く違う。実日子は料理教室や古本屋の整理、受賞者のスピーチを通して自分で自分を立ち直すことができた。他人の力ではなく自分の力で前を向けたことは今後生きていく上で強みになるよね。

    どうしてあんなにきらいな夫と別れなかったのか。私は夫のことをずっときらいでいたかった。だから別れなかったんです。
      この文は深すぎて重すぎて理解に苦しむ。ずっとなんで別れないんだろうって疑問に思ってたけど結局まりは自分が、嫌っていたかったから別れなかった。寂しかったのかな別れたくなかった、てことは好きだったのかな?いざ離れたいと言われると別れたくなくなるのが人間の真理?女の真理?とにかくこの文の解釈をいろんな人に聞いてみたい。

    途中10代の女の子に実日子が合うシーンあれはいらない気がするんだけど、何のために描かれているの。
    一つ一つのおいしそうな料理の描写が、このわりとどろどろした状況を整理してくれている感じがした。光一が食べなかったカムジャタン食べてみたいから今度作ってみよう。やっぱりご飯の趣味が合わない人とは結婚はできないんだな。一緒にこのご飯おいしいねって言い合える人がほしい。勇介みたいな人としてわきまえていて、それでいてユーモアがある人に憧れる。ウナギ一切れくれるような優しい人に出会いたい。そしてまりと光一みたいな寂しい夫婦関係には絶対なりたくない。

  • あぁ、そうなっちゃうんだ…。

  • 愛する夫を喪った女と、夫が大嫌いになった女。
    おいしい料理教室を舞台にした、ふたりの"妻"の
    孤独と冒険の物語。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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