西條八十詩集 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.81
  • (26)
  • (22)
  • (34)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 227
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758430944

作品紹介・あらすじ

繊細な心象風景を描く象徴詩人として作品を発表すると同時に、多くの童謡・歌謡で幅広く親しまれている西条八十。本書は、『砂金』『見知らぬ愛人』『美しき喪失』『一握の玻璃』『石卵』の各詩集から、抒情詩・童謡・歌謡に至るまで、彼の広範にわたる詩作群を概観する百二十篇を厳選して収録した一冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ハルキ文庫の詩集、そろえたくなって困る。新潮文庫『宮沢賢治詩集』を持ってるけど、ハルキ文庫『宮沢賢治詩集』もきっと素敵じゃなかろうか。
    『砂金』『見知らぬ愛人』『美しき喪失』『一握の玻璃』『石卵』、その他抒情詩・童謡・歌謡より収録。ゴシックすぎると見られたのか、「トミノの地獄」は撰から漏れている。『砂金』の中でだけなら浮かないだろうけど、他の詩集の作品とは合わせにくいのかもしれない。

    仄暗い煌めきや澄んだ寂寥の沁みる作品がとても好ましい。暗闇の中の鬱金色か陽の下に白む花の色のような、もう一歩近づいて確かめたいのに何かが怖くて近寄れない、危うい魅力があるような気がしている。
    頻出と言っていいほどかはわからないながら、詩で薔薇、金糸雀、鸚鵡、孔雀、鶯、蝶、鸚哥、洋燈、あたりは西条八十のイメージが強い。
    洋のきらびやかさの魅力かと思えば、それはおそらく和の磨かれた歌いぶりあってのものなんだろうなと、複数の詩集から選ばれた作品を横断してみると納得される。それでもって明治~大正へのノスタルジーを支える詩人となった人なんじゃなかろうか。
    『砂金』以外では「秋の灯」「蝶」「一握の玻璃」「お菓子の家」が特に好き。
    ところで「かなりや」誕生秘話がこの本と『うたかたの国』とで異なるのはなぜだろう。

  • 日夏耿之介が「砂金」のこと書いてたから、読みたくなってとりあえず積読。カナリヤだけやないんやで。

  • イノセントな魔がありそうな美しい詩ばかり。とても好きな作風でした。
    幻想や怪奇のアンテナがある方は好きではないかなと思う詩集です。とくに、「梯子」「書物」などは幻想の趣強くてとても良かった。ワイルドや谷崎が好きな方はとても好きなのではと思います。なんとなく、デ・ラ・メアの『妖精詩集』と通うものがあるように思いました。

  • 「哀唱」「コンマとピリオド」「青い椅子」「泰山木」「軍歌」が特に好き。

  • 総じて鳥や虫、草花、女、老いなどのうちにさびしさを見いだしたり、そのさびしさに静かに寄り添ったりする、仄暗くも優しい詩が多いように感じた。暮らしや自然のちょっとした隙間からなにかしら象徴めいたものをたぐりよせ、ひとひらの詩情にまとめるその繊細な観察眼は、早熟な詩才を示しつつも実生活で苦労もした人ゆえか。

    知らない漢字が多く勉強になった。葩(はなびら)、金糸雀(かなりあ)、砂(いさご)、莠(はぐさ)、鑰(かぎ)、陂(つつみ)、蕺草(どくだみ)、素馨(そけい)、陞る(のぼる)、玻璃(がらす)、鶏(くだかけ)。

    【メモ】
    「我顔」手鏡にうつる老い顔のうちにかつて訪れたさまざまな土地の景色が懐かしく蘇り、わが顔を愛おしく眺める。
    「三七日」幼いわが子の死を静かに詠む。
    「余燼」燃えるさかる石炭よりも寂しい灰のほうに意識が向く。
    「美しき灰」死んだら美しい灰となって、風の中に舞いつつ生者のために美しい唄をうたおうと唄う。

  • 皆川博子の『ゆめこ縮緬』でいくつか八十の詩が引用されていて、そういえばちゃんと詩集を読んだことがなかったなと思い一番手軽なこちらを。

    詩集『砂金』『見知らぬ愛人』『美しき喪失』『一握の玻璃』『石卵』からの抜粋と、童謡、歌謡曲なども収録。

    童謡は有名な「かなりや」だけでなく「肩たたき」(母さんお肩をたたきましょ♪)や、♪てんてんてんまりてんてまり~なんてのも八十だったのかと意外だった。かなりやは、歌を忘れて捨てられる残酷な詩のように思い込んでいたけれど、最後まで読めばちゃんと、こうすれば歌を思い出しますよという救済法があり、いたって平和解決。

    歌謡曲は「青い山脈」とか「東京音頭」とか「愛染かつら」の主題歌とか、生まれる前の曲なのに知っている曲がいくつもあって、あれもこれも八十だったのかと。

    ただやっぱり初期の、やや難解な象徴詩が個人的には一番好みで、とくに『砂金』の収録作が想像力をかきたてられる。『砂金』はちゃんと1冊全部読むべきか。あとベタだけど「蝶」はやっぱり好きだなあ。

    やがて地獄へ下るとき、 そこに待つ父母や 友人に私は何を持つて行かう。
    たぶん私は懐から 蒼白め、破れた 蝶の死骸をとり出すだらう。さうして渡しながら言ふだらう。
    一生を子供のやうに、さみしく これを追つてゐました、と。

  • 童謡や歌謡『青い山脈』、詩『かなりや』で知られる西條八十の選り抜き詩集。
    言葉が強烈な『トミノの地獄』目的で買ったんだけど、まさか掲載されていないとは。
    詩自体は、やっぱりまだまだ理解が足りていないなぁと。哀歌はぼんやりわかるんだけど、他がなぁ…。

  • 市東亮子の「夢の夢」で引用された詩に惹かれて購入。

  • わが恋はひとつにして
    寂し。

    追記20100820mixi
    同様で有名な作者だが、象徴詩もよい。
    薔薇と蝶と黄金。
    文語詩ってなぜこんなに沁みるんだろうか。

  • 詩集ですが、その感想には言葉はいりません。
    こころに効きました。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1892年東京生まれ。早稲田大学卒。高踏的象徴詩をつくる一方、大正期の代表的童謡詩人でもあった。「東京行進曲」「東京音頭」「蘇州夜曲」などの作詞でも知られ、少女小説や評論でも活躍した。1970年没。

「2023年 『あらしの白ばと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西條八十の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ボードレール
有村 竜太朗
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×