鷺の墓 (ハルキ文庫 い 6-1 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758431767

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  • 瀬戸内のある小藩を舞台にくりひろげられる人間模様を描いた、連作短編時代小説

    《鷺の墓》
    保坂市之進は、藩主の腹違いの弟・松之助君の護衛を申しつかる。ある日、松之助君の生母は、市之進の実母だと聞かされ・・
    《空豆》
    栗栖又蔵は、妻を亡くし姪の芙岐と暮らしている。芙岐の実家では、芙岐に栗栖を継がせて、婿をとる様に言う。
    その芙岐が、無断で外出する事が増えて、不審に思っていた矢先、溺死体で見つかった。原因を究明した又蔵は、ある人物に会いに行く。
    《無花果、朝露に濡れて》
    紀和は、子持ちの古文書図書方・牛尾爽太郎の後妻に入り、子供も設けた。
    夫の失態で、減俸され、家計は困窮を極めた。夫を文官に戻す為、上役に付け届けが必要と義姉に言われ、質屋から出てきた所にお金を用立てる人物を紹介すると言う男と出会う。借金する事を決めた紀和の前に現れたのは、保坂市之進の叔父の保坂彦四郎だった。
    《秋の食客》
    祖江田藤吾は、ようやく勘定方下役という役についた。組屋敷にも移れて、冥利を味わっていた。その組屋敷の元住人は、横死した栗栖又蔵(空豆)の屋敷であった。
    ひょんな事からその屋敷に住み着いた、浪人・高尾源太郎。人を食ったような態度ではあるが、毎日、食材を買ってきては、台所で腕を奮ったり、手入れのされていない庭の雑草を刈ったり、畝を作ったりして、たちまち、藤吾の妻・瑠璃や下僕を味方にしたが、ある朝、五両ものお金を置いて、挨拶も無しに、出て行った。藤吾は、翌朝、副島琢磨が賊に襲われ、命を落としたと聞かされた。源太郎と副島の関係は?
    《逃げ水》
    保坂市之進に、縁談が舞い込む。だが、一人息子と共に、婚家を出された野枝に、母の面影を被せて、縁談を断り、野枝を妻にしたいと言い出す。

    冷や飯食いで、厄介者の、保坂家本家の三男・保坂彦四郎が、とても、良い味を出している。

    藩主に、自分の妻が見染められ、側室にと望まれ「上意」の名の下、命令に従い、後に切腹した、保坂市之進の父。
    命令に従わず、母子共々、離縁して、自分は、切腹して果てた、野枝の夫。

    どちらの選択が正しいのか。
    いずれにしても、愚君を持つ家臣は、悲しいものだ。

  • ある藩を舞台にした連作短編。市之丞いい奴。自分は一体何なんだったんだというやりきれなさがよくわかる。ラストがいい。幸せになれ。

  • 瀬戸内の架空の藩を舞台に、若い下級武士を描く連作短編です。
    設定が藤沢さんの海坂藩ものを思い起こさせます。話の流れもどこか似た感じです。そのためか、どうしても藤沢さんと比較してしまいます。多分、私が藤沢さんを読み過ぎてるせいでしょうね。
    そういう目で見ると、キツイ言い方になってしまいますが、藤沢さんの後継と言うより亜流ですかね。凛とした雰囲気はあるのですが、どこかありきたりという気もします。
    決して出来は悪くなく、十分に楽しめる作品でしたが。

  • 小さな藩の、武士の暮らし。面白かった。

著者プロフィール

1945年広島県生まれ。成城大学文芸学部卒業後、画廊経営、テレビプロデューサーを経て、執筆活動に入る。2003年「小日向源伍の終わらない夏」で第10回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞受賞。主なシリーズに「立場茶屋おりき」シリーズ、「照降町自身番書役日誌」シリーズなどがある。15年「立場茶屋おりき」シリーズで第四回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。

「2017年 『残りの秋 髪ゆい猫字屋繁盛記 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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