- Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758435451
感想・レビュー・書評
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全12編からなるエッセイ。
坂口安吾流物事の捉え方。
太宰の死について書いている「不良少年とキリスト」は、身近にいた人ならではの捉え方をしており読みごたえがある。
心に残る名言が沢山あった。
「通用の道徳は必ずしも美徳ではない。」
「人間には魂の孤独という悪魔の国が口を広げて待っている。」
孤独な人であったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【戦後の日本からに人間とは何かを見つけ出す】
処女、忠義という日本人が大好きな『美しさ(純粋さ)』。そんなものは人間的でないというのが著者の主張。
もし忠義なんてものがあったならば、戦時中に天皇を本当に崇高していたならば、米国に負けたとわかった時に自害したはずだ。しかし、軍の中枢の人は誰ひとりとしてそんなことしていない。それはつまり、天皇なんていうものはお飾りでしか無く、自分の権力を他人に見せつけ、自分を守るためだけのものなのである。
人間というものを戦後という社会背景から上手く捉え、考察していると思う。非常に面白く、関心させられる一冊。 -
「堕落論」「続堕落論」「青春論」「恋愛論」の4篇のエッセイを収める。
【堕落論・続堕落論について】
著者が「堕落せよ」と言うとき、それは「自由に人間らしく生きよ、突き進め」と言うに等しい。
社会のパラダイムが一夜のうちに様変わりした終戦直後の青年には、この甘言は興奮をもって歓迎されたことだろうと想像する。
が、いかにも隔世の感ありという感じで、自由一辺倒に突き進んできた末の世代に生まれた俺には「自由!人性!淪落!」などと言われてもあまり響くものがなかった。
もっとも、戦後日本人が著者の言う意味での「自由」を全うしたかと言えばそうではない(どちらかと言えば「自由」の意味をよくよく考えもせずにワガママに振る舞ってきただけだ)し、日本人の性格からしてそれができないであろうことは著者の予想していたところだった。
【青春論について】
宮本武蔵について語った部分が面白い。武蔵の魅力は命を懸けた試合をしていた時期にあり、試合をしなくなった時点で武蔵の負けと言い、ジジイになってから訳知り顔で書いた『五輪書』をこき下ろす。痛快。
【恋愛論について】
40過ぎの作家が書く恋愛論がこんなもんかよ、ってのが正直な感想。
独身者をさげすむつもりは毛頭無いんだけど、結婚をしたこともない人間が「永遠の愛なんて無い」などと言っても説得力はゼロである。
「自分が見たことないものは存在するはずがない」という詭弁と変わるところが無い。
著者の主張には同意しかねる部分も多かったが、読み物としての面白さはピカイチだった。 -
世の中はキレイごとばかりでは進歩しないし、人は幸せになれない。
楽ができることは楽をすればOK!
それを「堕落」というのであれば、みんな堕落しちゃえばいいよ。
自由の強要は、なんて苦痛なんだろう。
生みの苦しみに比べたら模倣のたいくつさなんて何でもない!
……ってことみたい。
すっごく共感! -
落ちる道を発見し、自分自身を見つけることが重要。人は必ず堕落するものであって、戦争はその堕落の単なる一様にすぎない。戦後の人達を励ましたのではないか。
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電子版で読了。
よく分かりませんでした。 -
とことん堕落せよ。綺麗に生きようとすること、無理して生きようとすること、そんなことに意味はない。自分の人生まずは、お金や周りに振り回されず自分の好きなように生きよ。ということなのだと思った。
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久々にクラシック。デカダン論と恋愛論がナルホド!戦後の変わり行くひとと文化と国の中で豊かさ、正義、善とは?人間とは?を問う坂口安吾。学生時代は意味分からなかったけどいま読見直して面白かった!
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安吾小説、特に白痴を読むならば必読。この熱いエッセイが1946年に書かれた意味。生きよ堕ちよと言った安吾があの美しい作品を書いたこと。
「偉大な破壊、その驚くべき愛情。偉大な運命、その驚くべき愛情。」 -
何かとっても面白かったです。明確な言い回しで切れ味がとてもいい文章でした。辛辣ではあるけれどそれだけでなく、自身の立ち位置がとても中立なのがよかった。どちらにも振れず真ん中でもの言うのって難しいし、そこが読んでいて好感が持てた。坂口安吾ってもっと昔の人のイメージでした…昭和の方だったんですね…お恥ずかしくも知りませんでした。他の作品も読んでみたくなりました。