とろとろ卵がゆ 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758443289

作品紹介・あらすじ

絶品料理と癒しの笑顔が評判の居酒屋「ぜんや」。
女将・お妙と馴染みの旦那衆で紅葉狩りを予定していた日の前日、湯島からの出火で「ぜんや」にも火の手が。
屋根が燃え、炎に包まれるのを目の当たりにしたお妙は、幼い頃の記憶をよみがえらせ、翌日から腑抜けたようになってしまう。
只次郎はお妙を励まそうと、お土産を探しに酉のまちで賑わう浅草へ繰り出した。そこから思いもかけない美味しい出会いがあって……。
しあわせ沁みる料理は、喜びであり、生きがいだ──心ときほぐされる人情時代小説第八巻。

感想・レビュー・書評

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  • 居酒屋ぜんや シリーズ 8

    神田花房町で、亡き夫が残した居酒屋「ぜんや」を切り盛りするお妙。
    小十人番士の旗本の次男坊・林只次郎とは、かれこれ、三年近い付き合いになる。

    駿河町の大店・三河屋との縁談が立ち消えて、不安定な立場でありながらも、只次郎は、以前よりも、腰が据わった様子。
    最近は、お妙に対する好意も、誤魔化そうとせず、開き直っている。

    贔屓の旦那衆と、紅葉狩りに行く予定の前日、湯島の無縁坂から出た家事により、神田花房町界隈は、丸焼けになる。

    命からがら逃げた、お妙と只次郎。
    お妙は「ぜんや」が焼ける炎を見て、両親が、火事で死んだ真相を、思い出した。

    呆けてしまうお妙を、力づける為、只次郎が「わらしべ長者」さながら、
    頭の芋→みかん→黄金餅→卵
    と、交換して、卵粥を作って、お妙に食べさせる。

    「ぜんや」を続ける事を、躊躇するお妙に、皆んなが、声援を送る。

    だんだん、佳境に入ってきた模様。
    お妙と、只次郎の仲はどうなるのか。

  • 「居酒屋ぜんや」シリーズ第8弾。
    読み終わってみると、今回のサブタイトルのお料理は、全く持って特別である。

    平凡な日常で始まるが、下っぱ火消の臥煙(がえん…という身分)のあんちゃんは先触れであったのか?
    とんでもないことが起きる。
    只次郎とのお互いの気持ちもまた一段とそれぞれが自覚するようになり、不幸な出来事ではあったが、ある意味邪魔する物が消えたかと思えたのだが…

    これまで、お妙は心のこもった料理でたくさんの人々の心や身体を救ってきた。
    見返りを期待したわけではないし、自分の料理が人を幸せにすることを喜びともしてきた。
    今度は、皆がお妙を支える番。
    住むところはバラバラになってしまったが、人々のつながりが優しい。
    お土産の藁しべ長者にもほほ笑んだのでした。
    そして、何もできないお嬢さんだったお志乃の成長が、ホントに嬉しく感じられる。

    しかし、また、お妙のとんでもない過去が明らかになった。
    毎回、元号と年がはっきりと記されるのは、やはり大きな出来事とかかわりがあるのか?と勘ぐってしまう。
    お妙はいつまで「ぜんや」という名の店を続けるのか…気になります。

  • 人生は山あり、谷あり。
    美味しいもので他の人の力になってきたお妙さんが、今回は只次郎に力づけられる。

    寄り添って生きる人々は、とても愛おしく、尊い。

    でも、なんて爆弾を最後に投下するんですか、坂井先生!

  • シリーズ第8弾。

    湯島からの出火で「ぜんや」も炎に包まれてしまいます。
    幼い頃の火事のトラウマを持つお妙は、ショックですっかり自失状態に・・。
    只次郎やお志乃が、何とかお妙に元気になってもらいたいと、寄り添い支えようとする姿が素敵です。
    そして、封印していた記憶がよみがえった事で、お妙の両親の死の真相の謎が浮かび上がります。
    またお妙に新たな悩みができてしまいましたが、徐々にたくましくなってきている只次郎と共に、乗り越えてほしいですね。

  • お妙と只次郎との関係が少しずつ近づいている。
    ぜんやの再会も気になるし、まだまだこのシリーズは面白い。

  • 謎の?絵師は勝川春朗...後の葛飾北斎!
    レギュラー入りしないかな.

    お妙と只次郎の恋が進むかに見える中,お妙の両親の死をめぐる新たなミステリーが...
    只次郎がちょっとたくましくなりました。

    そういえば,この卷はウグイスの話題がほとんどありませんでした.ルリオとハリオは,とりあえず元気そうですが.

  • 「ぜんや」シリーズの第8巻。前々作で大きな縦糸が一段落してしまったので、前作が人間関係の綾を紡いでいくような方向性になっていたので今作の方向性がどうなることかと思っていたが、まだまだ縦糸を紡ぐのですね。ちょっと驚き。しかし、全体のトーンは「ぜんや」っぽいので、しっかり人情物の醍醐味は味わえる。あと2冊で終わってしまうようであるが、そう展開していくのかとても楽しみ。

  • 今回のタイトル「とろとろ卵がゆ」は妙さんの料理ではなく、妙さんを思う只次郎さんの料理。
    居酒屋ぜんやが火焼失してしまい、また、妙さんの両親の死の真実も思い出してしまう。
    身も心ボロボロの妙さんになんとか立ち直ってほしいと周りは温かい。
    ぜんやの再開が楽しみ。

  • 旦那さんに続き…
    今度はご両親⁈
    毎回続きが気になります。

  • 2024.3.30 読了。
    「居酒屋ぜんや」シリーズ第8弾。
    なんとか心に決着をつけようとしていたお妙だったが、その矢先火事でぜんやも燃えてしまう。それにより両親を亡くした一件の詳細を思い出してしまう。

    料理上手のお妙に気持ちを隠さなくなった只次郎に戸惑ったりして関係性が少しづつ変わっていく。そんな平穏な日常の中火事が起こりお妙の記憶が戻り茫然自失になってしまう。近江屋の一件でお妙の両親がただ火事で亡くなったわけではなさそうだとは予期していたが今作ではまだ詳細は分からない。

    「火事と喧嘩は江戸の華」というように庶民の時代小説を読むと本当によく火事に見舞われる。それを義理と人情でなんとか焼け出された人々も生活再建する姿はたくましいが、お妙の憔悴しきった辺りは読んでいて辛かった。

    今作も季節感のある料理が出てきて、お妙を支える人々もあり全体的には暖かい作風だった。

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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