- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758445719
作品紹介・あらすじ
家の声が聞こえるという力を持つ遠野守人は、月光荘二階をイベントスペースとしてオープンした後、管理人として慌ただしい日々を過ごしていた。
そんな折、月光荘オーナーの島田から「社会人としての門出を祝おう」と狭山市の古民家を改修した蕎麦懐石店「とんからり」に誘われる。
大学の恩師・木谷と三人で店を訪ねた守人を待っていたのは、自分が目指すべき道へとつながっていく、不思議な音との出会いだった。
大切な過去、つながる縁、そして未来。感動のシリーズ完結!
感想・レビュー・書評
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「菓子屋横丁月光荘」の6冊目。こちらもシリーズ完結のようね。
2つのお話の最初は、守人が木谷先生らとともに訪れた蕎麦懐石の店にまつわる、昔その地に栄えていた織物・広瀬斜子と、その店が改装して入る前の古民家が中心の話。
これまでもそういうところがあったシリーズだが、今回はとりわけ、そうしたかつてあったものがなくなっていくことに対する感傷と、たとえなくなっても引き継がれる思いがあることについて、強く描かれていたように思えた。
続く後ろの話では、田辺の祖父・敏治さんが衰えを見せる中、色々な思い出が詰まった家から離れざるを得なくなる敏治さん本人の葛藤と周囲の気持ちが中心に描かれる。
それは前の話を受けて、今まで生きていた人が亡くなっていくということにつながっていき、この話でもコロナ禍が陰を落とすが、それも相俟って、亡くなった人を想いながら今を生きるということや、あるいは自分がなくなった後に遺ることということについて考えさせられる。
敏治さんが持つ亡き妻への思い、田辺ら周囲が考える老いた身内をどうしてあげるのが良いかと悩む気持ち、それぞれの気持ちがよく分かる。
そして、しんみりするだけでなく、守人と豊島さんとの交情や、田辺と石野が古い家を改装してカフェにしようとする話を挿むことで、それでも生きていくことについて前向きな話になっていく。
この歳になると、ふとしたことで寿命が尽きる時に向かっていることを思わされ、怖くなったり切なくなったりすることがあるが、『だからこそ、いまじゅうぶん生きなければならない』という最後に書かれた言葉には、とても心に沁みるものがあった。
シリーズ初めの頃はモラトリアムで引き籠りの守人だったが、隠れた才能も開花しだし、好きな人もできたりで、よい終わり方でした。 -
遂に月光荘シリーズ完結です。
なんとなくこの先どうなるのか気になる事柄が多いまま完結となりましたが、その先は読者が自由に夢想してかまわないということなのでしょう。
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【収録作品】広瀬斜子/光る糸
シリーズ最終巻。
出てくる人たちがみな温かい。川越の街を歩いてみたくなる。 -
シリーズ完結編。
月光荘の管理人となった守人はイベントなどと忙しい日々を送っていた。
そんな中、月光荘のオーナーと恩師である木谷と一緒に蕎麦懐石のお店をやっている古民家を訪れる。
その店で出会った不思議な音が、不思議な縁を結んでいき、守人はある決意をすることになる。
同じく家の声が聞こえた喜代の死後、落ち込むこともあった守人だが、その喜代の家の声に背中を押され、強く生きることを決意する。
シリーズ序盤から、主人公の性格に芯がないことが気になったいたが、守人がやりたかったことは、このことだったんだ、と言うのが正直な感想。
少し拍子抜けのような、そんな感じ。
今作が終わったら、もう川越のみんなの様子が読めなくなるのは、少し寂しい気がする。
あとは「ふじさき記念館」が川越にオープンするのを、どう絡めていくのか。
そちらを楽しみにすることにしよう。 -
シリーズ第六弾にして完結編。
川越を舞台に、“家の声”が聞こえる遠野守人と彼を巡る人々との繋がりを描いた物語。
完結巻の今回は、連作中編二話の構成となっております。
月光荘オーナーの島田さんと大学の恩師・木谷先生と共に、狭山市の古民家を改修した蕎麦懐石店「とんからり」を訪れた守人は、そこで聴こえた機織りの音と“家の声”から得た構想を物語にすることに・・・。(第一話「広瀬斜子」)
そして、コロナ禍で月光荘でのイベントが中止になり、動画配信やオンラインに切り替えていく中、守人の書いた小説が優秀作に選ばれて・・・。(第二話「光る糸」)
月光荘の管理人だけでなく、小説家としての道を歩む決意をした守人。
毎回、何もかもがトントン拍子に進み過ぎる気がしないでもないですが(オンラインイベントもすぐ収益化できているし)、人と人との奇跡のような繋がりやご縁が広がっていく様子がこのシリーズの魅力なのですよね。
新しい時代に対応しつつ、古き良きものを大切にしたいという思いが作品から伝わってきて、例えば、守人の友人・田辺さんの祖父母の家を、古民家カフェにして残したいという石野さんたちの構想も素敵です。
そして、“家の声”が聞こえるだけでなく“会話”ができるようになった守人と家とのやりとりも心温まるものでほっこりしました。
特に終盤での月光荘の
“モリヒト、トモダチ。ドコニイテモ、イツモイッショ”
という言葉に、なんて“いいこ”なんだろう・・としみじみした私です。
そして、この巻で急に守人が豊島さんへ好意を抱いていましたが、個人的には“え?安西さんじゃなかったんだ?”と意外な感じでした。
とりま、皆それぞれの道を歩き始める感じで終わった当シリーズ。
また番外編でもよいので、今後の彼らの様子を描いて頂けたらありがたいなぁ・・と思いました。 -
ほしおさなえさんをきっかけに去年の9月に川越を訪れた。菓子屋横丁や蔵の町並み、氷川神社、、川越城本丸御殿などを巡った。たくさんの観光客で、とにかく暑かった。
今回は月光荘より田辺家がメイン。とんとんからーの蕎麦会席の古民家が切なかった。守人と豊島さんの今後が気になる。 -
ほしおさなえの菓子屋横丁月光荘のシリーズ6巻の完結編光の糸を読みました。
まだ4巻と5巻は読んでいないのですが、図書館に6巻が入ったので、4巻と5巻はあとで読むようになります。
まあ一話ごとに完結するのでそんなに違和感は無いですね。
広瀬斜子は川越ではなく狭山市の蕎麦屋さんが舞台です。
広瀬斜子は知らなかったのですが、
斜子織は「白ななこ」と呼ばれ、白生地のまま売られていました。 当時の斜子織の生産農家は入間川沿いに多くありました。生糸を精練して入間川から引いた用水で洗うと、真っ白で光沢がある糸ができたそうです。
その蕎麦屋さんの建物からの声が聞こえ物語が広がっていきます。
光の糸は完結編らしく、纏まっていました。
主人公の建物の声が聞こえる意味生き方が、まとめてあります。
ドラマになって欲しいですね。 -
「カラダガアルウチシカ、デキナイコト、タクサンアル。ダカラ、イキロ」
わたしたちも蚕も、暗いところからやってきて、少しのあいだあかるい場所にとどまって、また暗いところに帰る。あかるいところにいるときだけ、身体という形を持つの。でも、ただそれだけなのよ。
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代々繋いでいくこと、繋がっていくこと。
それは一方では、「しがらみ」のように感じて、しんどく感じるものだけれど、
この物語ではそれが「安心」や「根っこ」になっている。
ファンタジーのような世界で現実にはないかもしれないけれど、これが現実だったらいいな、と思った。 -
良かったなぁ
温かい気持ちになった -
読了
こんばんは。
そうなんですよ。ほしおさんのお話、このシリーズといい「紙屋ふじさき記念館」といい、終わってばかりで淋しいばか...
こんばんは。
そうなんですよ。ほしおさんのお話、このシリーズといい「紙屋ふじさき記念館」といい、終わってばかりで淋しいばかりです。
なもんで、今は「言葉の園のお菓子番」を追っかけ中。
こちら「光の糸」はとても良かったので、早く順番が来ると良いですね。