ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅 上巻

  • 柏書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (645ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760115167

感想・レビュー・書評

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  • 膨大な一次資料によって構築された、圧巻の書。
    感情を排除した事実の羅列が、かえって生々しく、その重みと喪失を強く感じる。
    ホロコースト関連の物語や証言は数多あるが、その惨劇のベースとなったシステムについて、国別・時系列・フェーズごとに、広く深く網羅されている。上下巻を読むのは骨折れるが、内容は第一級のため、ユダヤやホロコーストに関心がある人は必読かと。(これを読んでからホロコーストの物語や証言を読むと、あの国のあの局面だと理解が深まるはず)

    ホロコーストという重い歴史的事実を軽んじたり否定したりする人は、本書と同等の資料を集めてから発言して欲しい。

  •  網羅的で著者の調査の徹底ぶりと感情と主観を排した史的事実の羅列には圧倒されるものがある。
     下巻も読了し、上巻と合わせ約1100ページを完全読了した。上巻は全ヨーロッパ規模でのホロコーストの過程を淡々と主観を配して描き読むのが大変だった。下巻も中間くらいまではそれが続くが「考察」編の章からヒルバーグの本領が発揮されこれまでの膨大な史的事実の羅列が統合されていく。とにかく圧倒的なスケールとディテールで、莫大な、邦訳が殆どない資料を原注として駆使しそれが日本人読者にはキツくのしかかるが結果として戦後の戦犯の問題も含め驚くべき細密さをも兼務させ、間違いなく超一級のホロコースト研究本となっている。
     とにかく、読むのに多大な労力を要するが、本書を読了して初めて、ナチ・ドイツが殆ど全ヨーロッパ規模で繰り広げた、ユダヤ人のみではない(シンティ、ロマ、同性愛者、障がい者、反体制派、スラヴ民族など)、人種主義に基づいた、人類史上最大の罪、人類史上最大の犯罪のアウトラインを掴むことができるだろう。ラウル・ヒルバーグ氏の底に秘めた学究の情熱の研究結果とそれを邦訳した日本語訳者、出版社に最大限の敬意を払いたくなる、そんな巨大で広壮な建築物のような書籍である。

  • ユダヤ人財産の収用が、絶滅寄稿によって緩慢だが徹底的なユダヤ人の粛清とともにはじまった。これはナチスの目で見れば、至極もっともな開始であった。ユダヤ人を支配する前に、彼らの支配を排除することがどうしても必要であった 。そのためあらゆる仕事からユダヤ人を排除していった。

    ゲットーという観念にとって決定的なものは、その居住者の完全なる隔離である。その境界を越えての人的接触は、極度に制限され、完全に切断され、唯一の機械的なコミュニケーションルートの中に取り残された。そのルートとは電話線、銀行業務のルート、手紙・小包の発信や受取のための郵便局などである。それゆえにゲットー居住者は肉体的に監禁された。ゲットーが存在するようになると、ドイツ側は行政的負担を軽減するために、ゲットーの機構と制度をただちに利用した。多くの人員を必要としてきた負担を、いまやユダヤ人社会に転嫁することができた。ゲットーは囚われ人の都市国家だった、そこでは地域的制限がドイツ当局に対する絶対的従属と結合していた。ゲットーの創出とともに、ポーランドのユダヤ人社会はもはや統合化された全体性をもっていなかった。それぞれのゲットーは単独化され、にわかに孤立化され、多くの内部問題をかかえ、基本的整形のために外部世界に依存しなければならなかった 。

  • ホロコーストを知る上での必読書。ホロコーストの「なぜ」ではなく「どのように」を詳述した本。
                                           ボランティアK

  • ホロコースト研究の金字塔

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