ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方

  • 北大路書房
3.70
  • (2)
  • (5)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 68
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762829598

作品紹介・あらすじ

一人ひとりの児童生徒がもつ違い(多様性:たとえば学習進度や興味関心の違い等)を大切にしながら,彼らの学びの可能性を信じてベストを尽くしたい!という教師の思いに,理論と実践の両面からしっかりと向き合う。個々のニーズに応じる質の高いカリキュラムや多様な学び方・教え方のデザイン等,具体的な提案が満載。

◆主な目次
第1章 一人ひとりをいかす教室とは?
第2章 一人ひとりをいかす授業を実践するための八つの原則
第3章 学校でのやり方と,そもそも誰のためにしているのかを再考する
第4章 一人ひとりをいかす教育を支援する学習環境
第5章 よいカリキュラムは一人ひとりをいかす授業の基本
第6章 一人ひとりをいかすクラスづくりをする教師たち
第7章 一人ひとりをいかす多様な教え方
第8章 一人ひとりをいかすもっと多様な教え方
第9章 一人ひとりをいかす授業を可能にするクラスづくり
第10章 一人ひとりをいかす教室づくりの促進者としてのリーダーたち

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『一人一人の生徒がもつ違いや多様性を大切にしながら,彼らの学びの可能性を信じて一人ひとりの成長のためにベストを尽くしたい』
    これは,熱心な教師なら誰でも抱く目標だと思います。しかし,現実はどうでしょうか。教育委員会からの求められるやり方や日々押し寄せる雑務によって,このような熱い思いはどこかへと追いやられがちです。

    この本の内容は,そんな熱い思いを引き出させてくれるものです。中には一人ひとりをいかすヒントが書かれていますが,ハウツー本ではなく教師としての在り方や哲学について述べられている印象です。

    私が一番気に入った所
    『安定感のある教師は一晩中思い悩まなければならない大切な問いや,今日よりも明日の方が良くなるためにじっくりと考えなければならないことが毎日のように生まれるのだという信念をもって,学校を後にします。安定感ある教師は,こうした,じっくりと考えて発見したことが,教師として魅力あるもので,個人として満足のいくものになると信じています。』

  • 一人ひとりをいかすためには、一人ひとりのことを知らなければならない。一人ひとりが自立した学習者になるための支援が必要である。

    「一日が始まる前に時間を確保して、どのように一人ひとりをいかす活動を始めたいのか、それをどう展開させたいのか、そしてどう終わりたいのかをイメージするのです。」

    一人ひとりを見ようと取り組んでいる。けれど、この一文に立ち止まる。まだまだ全体としての捉えが大きかった。学級が落ち着いてたら、安心してたんだろうなぁと振り返る。一人ひとりの行き先までは想像できていなかった。
    一人ひとりの現在地はどこなのか。どこに向かおうとしているのか。個としてのストーリーを一緒に紡いでいきたい。そのために、ある程度のスケール(規準)も準備しておこう。

    以下、一人ひとりをいかす教室にするために考え方として心がけたいこと。
    一人ひとりのニーズについてのあなたの価値観を明らかにする。小さく始める。ゆっくり確実に成長する。活動がどう展開するかを想像する。後戻りして、振り返る。生徒と最初に、そして頻繁に話をする。生徒を力づけ続ける。分析的であり続ける。

  • 個に指導と言われる中、日本で行われるのはあくまで集団の中での個別指導。
    そうではなく、一人一人がそれぞれの個に応じてバラバラに、または協同して学ぶことについて書かれた本。
    現在の学校の一斉画一は果たして効率の良い学びの形態なのだろうか。日本の文脈、クラスの文脈を踏まえて取り入れられることは無いだろうか。

  • 学びの個別化•協同化•プロジェクト化に取り組もうとしている方は必読です。

    ただ、この内容を全て網羅しようとするのは現在の公立小学校では厳しい現状もあると思う。
    まず大切なのは、一人ひとりをいかす教室をなぜつくろうとしているのか自分自身に問いかけてみることだ。
    その問いに対する答えは無数の視点から答えることができる。
    自分の言葉で納得して説明できることが、管理職や同僚に実践を説明するときにも役立つだろう。

  • ひとりひとりの子どもたちがそれぞれ意味ある学びに到達できるよう、教師が学習到達範囲の幅を広げ、子どもたちが自らの学習をプロデュースできるよう仕掛けていく。学びの個別化を進めると、カリキュラム・マネジメントの意義も見えてくる。
    一斉学習と個別学習は相反するものではない。一斉学習の中でも、様々な到達地点を設けていくことはできる。教職員の役目として重要なのは、子どもたちが個々の目標設定ができるまで促し、徹底的につきあうこと。ゴール地点を揃えないかわりに、それぞれのゴールまでの距離感を揃える。図書館学習はそれがしやすい。ゴールが違うことが共通認識であり、みんなが別のところへ一斉に駆け出していくのを目指すのが探究型学習だからだ。ただし、歩き方と走り方は教える。体力づくりと走行フォームを教えるのが教科教諭ないし司書教諭の役割、道々で方向を示したり応援の声かけをするのが学校司書の役割ではないか。少なくとも、前に進むための支援。
    ……となると、走れなくなったときに連れて帰るのは誰だろう。休ませ、栄養補給するのは誰だろう。それをクラスメイト同士でできるようにするのが究極の目標だろうか。

  • 夏の読書11冊目、在り方を考えられる1冊。在り方の話はこの本から出ていないけれど、振り返りいい機会になりました。
    http://aosenn.hatenablog.com/entry/2017/08/16/103225

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

キャロル・アン・トムリンソン(Carol Ann Tomlinson)
現在,ヴァージニア大学教育学部教授。多様な学習者のニーズに応えられる教え方を志向している米国内外の教育者たちをサポートし続けている。
就学前の幼児から高校生までを教えた21年間の経験がある。主に教えていた教科は,英語,ドイツ語,歴史。現在は学部,修士,博士課程の学生たちを対象に,カリキュラム開発と「一人ひとりをいかす教え方(Differentiated Instruction)」を教えている。一人ひとりをいかす教え方関連の本をすでに10冊以上書いており,12か国語に翻訳されている。

「2017年 『ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

C.A.トムリンソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×