父親の虐待によってブリーカーの心にできていた厚い殻。
それはあまりに堅く、卵の中のヒヨコのくちばしだけでは割れていかない。
そう、喧嘩が強く乱暴者なのだが、ブリーカーはまだヒヨコ=少年なのだ。
それが主人公ジェイミーとのぶつかり合いによって少しずつ割れていく。少しずつ差し込む光。
ラストの大きな、本当に大きな出来事によってそれは痛みとともに砕かれ、ブリーカーは生まれかわる。というか生き返る。
そしてジェイミーもまた、少年から大人になる。
という、いかにも課題図書に選ばれそうな作品だ。
どこか現実的ではなかった死が、突然生と隣り合わせにあると気付かされる。
これは作者が実際に味わったものなのだろう。
この辺はとてもリアルに感じた。
また、ジェイミーの周りの友達、船の中で出会う人たちも、いかにもいそうな癖のあるタイプ。
ただ物語の登場人物としてはそれほど重要には描かれていない。
お国が違うからなのか、時代が違うからなのか、正直、人物の心情にはやはり違和感を感じた。