どうして普通にできないの! - 「かくれ」発達障害女子の見えない不安と孤独 -

著者 :
  • 協同医書出版社
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本棚登録 : 79
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763940131

作品紹介・あらすじ

◆ 自分のどこが「変」なのかわからないまま、無人島にいるような孤独と不安、違和感を抱えている、「あの頃のまるで私」へ ◆
- 違和感を抱えながら普通になろうと必死に努力しては失敗を重ね、大人になってやっと「発達障害」という理由を得た一人の女性の手記 -

「どうして普通にできないの! 」。
これは、幼い時に著者が母親から言われた言葉です。そこから、「普通」を目指すことが彼女の目標になりました。
とは言え、いつ何をどうすれば普通なのかわかるはずもなく、わからないまま「もうこれ以上できないくらい」の努力を重ね、「普通」に振る舞おうとしては躓き、傷つき、途方に暮れ、自分を否定し続けてしまう……。
「変」だけれど本人が必死に周りに合わせよう、あるいは距離をとろうとすることで(だから周りにとっては大きな問題とならないために)、そのとても大きな生きづらさがとてもわかりにくい人がいます。
本書はそんな、大人になってから診断を受けるまで長らく発達障害の輪にも普通の人の輪にも入れなかった一人の女性の歩みです。

「普通」になりたくてなれなくて、違和感、孤独、不安を抱えながら、「気が遠くなるほど」行った「自分分析」に加え、自分とタイプの違うアスペルガー症候群の娘と定型発達の息子を育てるなかで自分なりに解釈した「特性」についても記しています。
同じように誰にも知られることなく自分を責めて苦しんでいる人に、あなただけじゃない、あなたのせいじゃないというメッセージを込めて書かれています。

感想・レビュー・書評

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  • 大人になってから、自分は発達障害だったのかとはたと気付いた筆者の子供のころから母になって子育てをしている現在までの回想録。

    筆者が書いていることは知能的にはかなり賢い人なのではと思うようによく分析し、自分のことを表現できているから、本当に発達障害なのかな。とも思ってしまう。

    実際に大人になって医者に通う筆者はなかなか発達障害である診断結果を出してもらえない。「社会性があり、社会を生き抜いているから」というのが理由であり、もっともらしそうでありながら、あんまりもっともではない理由で。

    ただ、やはりそこまであいまいな境界でしか認定できないものなのだなと、モヤモヤした。

    筆者が発達障害なのかどうかは、私は専門家ではないので判断はつかないが、少なくとも子供の頃から生き辛さを感じ、周りとうまくやっていくために細かい技を自分なりにあみだし、周りと付き合ってなんとか社会を切り抜けていく、その社会に対する接し方、打算のようなものが、赤裸々に、素直に書いてあるので、私小説のような面白さがある。

    人の意見にどうしても従ってしまう、洗脳されているような、断れなさ、こういう部分はある意味共感できる部分も多々あり、ただ限度が違うのだろうなと思う。

    筆者を狙う男たちの姿など、私は男なのでわからないことが書いてあるのも面白い。
    若い女の子が生きていく中で、誰でもが、どうでもいい男にアプローチされるウザったさ、苦労を感じると思うが、そういう男に対して蛇ににらまれたガマのように、固まって服従してしまう危うさというのは、読んでいてなんだかドキドキして、破滅していく美学のようなものを感じる。

    結婚相手もどんどん前に出ていくタイプに見えて、自信家。その代り妻である筆者を自分のコントロール配下においておきたいという嗜好も見えて、なるほど、カルトとか洗脳とかは、多かれ少なかれこういう部分があるのかもなと考えつつ。

    もう一つ、子育て、育児という部分で、親は絶対であり、無力な子供はすぐにでも洗脳、支配できてしまうということに気付き、良く子供のことを尊重して接しないとなと思いました。

    ある意味受動的で、思い込みが激しく、完璧主義というものが、実は仕事にはまると強く、活き活きと達成ができる部分もあるということ。これも面白かった。

    発達障害に対して理解が深まるというよりは、発達省がいかもしれない人たちが、人生辛いと思っていることを客観的に把握して、社会と折り合いをつけていくための一つの共感できる事例として役に立つとき、一番この本の真価が発揮されるんだろうなと思った。

  • 思春期までの自己分析が面白かったが。
    氷河期なのに就職、恋愛、結婚、出産と人生充実しているので、人間づきあいが下手な発達障害と名乗るのは大袈裟なのではという気がする。

    漫画やライトノベルなどのファンタジーを読み過ぎた人が、おかしな自分を演出しすぎているだけでは、と。本人は苦しいのだけど。

    あと、よくありがちな毒母、モラハラ夫。

  •  自分の感覚が世の中多くの人とは違うらしいと、半生を赤裸々に振り返る様子は、三島由紀夫の「仮面の告白」を思わせる。
     文学ではないが、本書は人と異なる「かくれ」発達障害女子の著者の不安や孤独を、普通の感覚を持つ人の側に立って分かるように表現している。
     その感覚を想像するための詳細な"注"が、本文に続けて随時加えられ、理解を助ける。
     人間は、異端や自分と異なる存在を受け入れない存在なのか。否、近年少しずつ進む、多様性への理解や受容の手助けとなる事が期待される一冊。

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