- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784769022657
作品紹介・あらすじ
おさない男の子が、家の農場や自然の中で動物たちに出会い、「どういうふうにあるくのか、やってみせてくれない」とたずねながら動物たちのまねをして進んでいきます。みずみずしく、子どもらしい興味と観察眼が光る作品です。
1966年コールデコットオナー賞を受賞作。
感想・レビュー・書評
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久々のマリー・ホール・エッツの絵本。まさきるりこ訳。
よくもまあ次々とこんなにすごい絵本ばかり書けるなと驚く。彼女の絵本にはいつも異界がしっかりと描かれていると思ってきたけれど、異界という言葉を「無意識」と呼び換えてもいい気がしてきた。
本作の主役は(主役も、かな?)幼い男の子「ぼく」。
彼は家の周りにいる、あるいは家で飼っている動物たちの動きをマネする遊びに興じている。
猫のビディーに、ことりに、おんどりのコッキィ、豚のパール、うさぎ、へび、めうしのルル、がちょうのゴンキィ、よしよりうまのフローラ、りす、やぎのスパンキィ、かえる、としよりがめ。
こうして登場し(マネされる)動物たちの順番に注目しながら読んだ。上に挙げた動物たちはじつは、名前があったりなかったりする。
名前のあるなしがこちらとあちらの境界になっていて、名前があったりなかったりのリズムの揺らぎに、(勝手に)スリルを感じながら読みすすめた。
ちなみにだから本書は、「ぼく」自身がいろいろな動物に変身しようとしながら、あちらとこちらをたゆたう物語でもある。
いったい、最後はどうなるのか、とドキドキしながらさらに読みすすめたら、まったく予測もつかない展開に。
とうもろこしばたけを抜けると池が見えてきて、そこでお父さんがボートを出そうとしている。
「おとうさん、まってぇ!」
と呼びかけるがお父さんには聞こえない。
このくだりで、ああ、またこの人も幽霊に違いないと気づく。顔がはっきりと描かれないのでよけいにそう感じられる。
が、心底、ぞぞぞ、としたのは次のくだり。
「そこで ぼくは かけだしました。こんどは ほかの
だれみたいでもなく、はしりました。ぼくは ぼくらしく はしりました」
この、ぼくらしく(太字になってる)、で「踏み越えたな」と思った。しかも、予期せぬ第3の方向へ。
ぼくらしく、というのは、我を忘れて、夢中で、ということだ。何者でもなくなるということだ。危なっかしくてならない。
お父さんは、ぼくを待ってくれている。
それから2人で「うみ」へとのりだす。とうもろこしばたけの向こうの、「いけのうみ」へ。
もしも河合隼雄さんが生きていたらどう解釈するだろうな、この物語。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『もりのなか』『また もりへ』などの名コンビ<マリー・ホール・エッツ>×<まさき るりこ>の幻の名作を訳者みずから訳文を見直し、復刊されたモノクロ版画絵本。 幼い男の子が、家の農場や自然の中で動物たちに出会い「どういうふうにして歩くのか、やってみせてくれない」と尋ねながら、次々と動物たちの真似をして進んでいくお話しです。『クリスマスまであと九日』とならぶ1966年のコールデコットオナー賞受賞作。
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繰り返しが安心できる。
それぞれの動物の特徴を掴んで、その真似をする男の子がかわいい。
真似流ことを生かして、一歩抜け出して、成長する感じが良い。 -
ちょうど、『もりのなか』と反対のものが描かれているようにも思いました。
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エッツ流の行きて帰りし物語。動物の歩き方を真似っこして動物になりきって遊んでいる男の子。豊かな世界に入り込む。でもやっぱりお父さんの存在が安心して現実に引き戻してくれた。子どもは安心できる場所があるから思いっきり空想を楽しめる。
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少年がいろんな動物たちのまねっこをする。最後は自分らしいやり方で。
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良い絵本♪
ぼくは色んな動物のように歩けるけれど、
お父さんがボートを出そうとしているのを見た瞬間、
ぼくはかけだしました。
ぼくらしく、ね。